御茶:おもしろいですし、愛情や友情もしっかり描かれていていいと思いました。すごくさわやかです。絵もいいです。主人公の心のツッコミがツボにハマりました。「るなるな」が最後にピンチになっていた所は、最後を盛り上げるために作為的な感じがして、もう少しひねりがほしかったなと思いました。

トム:一番はじめ表紙を見て「劇画風物語かな?」という印象。色々なキャラクターを演じるように、若者たちが次々登場しますけれど、お互いに気を使いあう関係が痛々しい気がして……。他の2冊で描かれる友だち関係とはずいぶん違う。時代も国も違うけれど……やはり今の日本の若い人の物語なのかな。飛行というテーマで進んでゆきますが、最後はちょっと無理があるかも。

ルパン:「道具や乗り物を使わない」というのがクラブの規約なんですが、最後は熱気球を使って飛びますよね。気球は道具じゃないのかなあ、と思っちゃいました。風船おじさんの話が出てくるのですが、その行動の愚かさ、切なさは語られてなくて残念。でも、作家はもしかしたら風船おじさんをヒントにこのお話を書いたかもしれないと思いました。登場人物のなかでは、イライザが一番よくかけていたし、いいですね。お母さんも良かったです。『ロケットボーイズ』がおもしろすぎたせいか、ちょっとうーんと思いましたが……。あと、どうして題名だけ漢字を使っているのかなと思いました。文中はぜんぶ片仮名で『飛行クラブ』だったので。

プルメリア:本を手にしてもあまり進まなかったです。現実的に書かれている内容なのですが、非現実的な感じで、ちょっと読みにくい本だった。飛ぶという設定はわかりますが……。登場人物それぞれの性格がわかりやすく書かれているように見えますが、気球が飛ぶところは、なんだか現実から離れた感じがしました。

サンザシ:文庫本で読みました。お互いの関係を探り合う中学生の関係とか、いろんな立場の子どもの思いなどが出て来て、悪くないと思いました。熱気球はなかなか魅力的なアイテムなので、もっと詳しく書いてくれると地に足のついた作品になったと思います。日本の作家は人間同士のやりとりとか微妙な心模様を書くのはうまいし、身のまわりの隅々にまで目が行くと思うけど、それから先にまでは広がらない。他の2作品とは視点が違うなと思いました。

げた:科学好きの子どもっていう題材の本が、日本の本ではなかなかみつけられなかったんですよ。ちょっと、テーマからはずれちゃったって感じですね。科学的な探究の末に空を飛ぶ、なんてことにはなっていないですもんね。でも、空を飛ぶという目的の部活を通して、中学生がお互いの人間性をみつめて、仲間のもうひとつ別の人間性をみつけ、成長していく様子はおもしろく読めました。最初に登場人物のおもしろい名前の紹介をつかみにして、読み進みやすい感じだと思いますよ。最後の部分は荒唐無稽で、あり得ない話になっているけれど、映画にしたらよさそうですよね。青春小説として楽しく読めました。

モフモフ:おもしろく読みました。ちょっと本を読んでみようかという若い読者にはちょうどよいのではないでしょうか。最初の飛行倶楽部の宣言(理想の飛行は、ピーターパン!?)を見てどうなるんだろうと思ったけれど、現実にできそうな熱気球に落ち着いて、なるほどと思いました。連載をまとめた本ですが、最初から熱気球と決めていたのか気になります。

メリーさん:加納朋子さんの作品は大好きでけっこう読んでいます。日常の謎を解く、コージーミステリーがとてもおもしろい。そんな中で、今回はちょっとこれまでと路線が違うなと思いました。子どもたちの青春群像という感じ。主人公は「ちびまる子ちゃん」のような性格で、世の中をちょっと斜めから見ている感じがするけれど、やはり心は素直。部長が、自分は姉の面倒をみるために生まれてきたということに対して、泣きながらそれは違うと言うシーンは、とてもよかったです。結末はリアルではないけれど、部活ならではの一体感があって、やった!という達成感を感じました。全体的にさらっと読めておもしろかったです。

(「子どもの本で言いたい放題」2011年11月の記録)