『アヴァロン〜 恋の〈伝説学園〉へようこそ!』
メグ・キャボット/作 代田亜香子/訳
理論社
2007.02
原題:AVALON HIGH by Meg Cabot, 2006

版元語録:その人は谷にいた。そして、こっちを見てほほえんだ。この笑顔には、なぜだか記憶がある。まったくの初対面のはずなのに、どうしてあたし、このほほえみを知っているの? ひとめぼれ? それとも前世の恋人?? 転校した学校で巻き起こる世にも不思議なラブストーリー。

みっけ:この3冊の中では、一番苦手だった気がします。なんかもう、いかにも女の子があこがれそうなアメリカの富裕層の生活そのものという感じで、高校生がヨットを持っていたりする話の展開に、げんなりしてしまいました。それと、アーサー王の生まれ変わりがどうとかこうとかと、アメリカ人は因縁めいた話や新興宗教めいたことが好きなんだなあと思い、それもあって「またか……」という気分になりました。別に、読みにくかったわけではないんですが、全体としては、あまりおもしろいと思えませんでした。すみません。

ルパン:私、3冊のなかで、これ一番好きだったなあ。この男の子のベタさがたまらない。絶対いないような、こういうリアリティのないキャラ、好きなんですよ。アーサー王のことあまり知らなかったんですけど、おもしろかったです。『アーサー王と円卓の騎士』(シドニー・ラニア編 石井正之助訳 福音館書店)は最後まで読めたことがなかったんですけど、うちの本棚にあるから今度こそ読みます。それを最後まで読めていたら、この本もっとおもしろかったのかな。日本で言うと「義経の生まれ変わり」みたいな設定なのかもしれませんね。それにしても、結構ゴシップ記事的要素満載。後妻が本当のおかあさんだったとか。児童文学でここまでやっちゃっていいのかな、って思うくらい。その前の夫を危ないところに行かせちゃうなんていうのは、旧約聖書のダビデとウリヤを連想しましたが、欧米のほうではアーサー王のほうが浸透しているのかな。ともかく一気に読みました。つっこみどころ、色々あったかもしれないけど、楽しかったから全部忘れちゃいました。

レジーナ:ひとりよがりにならずに読者をひきつけるユーモアというのは難しいものですが、キャボットはユーモアにすぐれていて、絶妙な味わいがありますね。たとえば「パーティーでワカモレサラダの横は背の高い女の子の定位置」や「(主人公のようなスポーティーな女の子たちが)(学園のアイドルである)チアリーダーの同級生の前を水着で歩くなんてありえナイ」など……。「キモチワルい」などカタカナを多用した表記が、少し不自然でした。高校生の会話だからそうしたのかもしれませんが、かえって現代的でなくなっているように感じました。

シア:今回選書係で入れさせていただいたんですが、2007年でちょっと前の作品になりまして、1巻で完結の本です。学校でも人気があります。アーサー王が題材ということで読んでみたのが、私とこの本との出会いですね。話はわかりやすいので先の展開などは読めてしまうんですが、とにかくテンポがよくて、女の子が好きそうな本です。キャピキャピしているので、『カッシアの物語』とは対照的ですね。なごむなー、という感じでした。絶対いないんですけど、転校先にこんな人たちがいたら明るい世界ですよね。いいなーと思いますね。挿絵はがんばってほしかったな。とくに、中がいまいちですよね。海外アニメっぽい絵ですよね。口語訳の言葉使いはちょっと古臭いところはありますが、『八月の暑さの中で』(金原瑞人/編訳 岩波書店)ほど古臭くはないかな。今でも聞かない訳ではないので。

プルメリア:副題の『恋の伝説学園へようこそ』はどうかな、ちょっと違うかなって思いました。主人公の家がプール付きの家に住むお金持ち。男の子が主人公の家に遊びにいくのが自然体で、ガールフレンドもいるのに、フレンドリーな性格なのかな。

ハリネズミ:なにしろアーサー王なんだから、何でもありなんじゃないの?

プルメリア:どんな時にも自然体で入っていけるウィルの性格がいいな。ウィルがアーサー王伝説のエレインじゃなくって、湖の姫なのには驚き、ホッとしました。この作家の想像性はおもしろいなって思いました。ウィルがいい方向にすすんでいくのが、漫画的でもあり、読み手を読ませるのもよかったです。題名がちょっときびしかったです。

シア:生徒が「アーサー王って何?」って聞いてきたりするので、円卓の騎士の話をしたり、関連図書を貸してあげたりしていますね。

ハリネズミ:アーサー王やその周辺の人物たちは、イギリスの子どもたちにはおなじみだけど、日本の子どもにはわからないですよね。それに、あまりにもリアルじゃないから、どう読んだらいいのか、日本の子はとまどうんじゃないかな。私はあんまりおもしろくなかったな。本が好きな子にとっては、ほかのアーサー王ものを読んでみる入り口になるかもしれませんね。でも、この作品自体はマンガですよね。物語の中のリアリティもぶつぶつ切れてるし。かといって、エンタメだとすると、日本の子には背景がわからない。中途半端なんじゃないかな。

シア:妙なライトノベルよりいいかなって。たとえばクトゥルフ神話とかマニアックなものに詳しいのに、逆に当たり前の神話を知らないような子が多くて、変なところが抜けているっていうか。お母さんたちに読んでもらっていないのかなって。

ハリネズミ:お母さんたちも古典的なファンタジーはもはや読んでないんじゃないですか? でも、こんなリアリティのないものを読んで恋を夢見たりすると、とんでもないことになりそうですね。

シア:『レッドデータガール』とか文庫で出ているものは、文庫で図書館に入れてくれって生徒に言われますね。やはり、荷物が多いので小さいほうが持ち歩きやすいようです。

(「子どもの本で言いたい放題」2013年1月の記録)