日付 2009年11月5日
参加者 バリケン、ハリネズミ、プルメリア、げた、カワセミ
テーマ おなかのすく本

読んだ本:

『特急おべんとう号 』
岡田よしたか/作・絵   福音館書店   2009.03

版元語録:三つのお話からなる創作童話で、全頁にカラーの絵がついています。日本の独特な食文化のひとつ、おべんとうを題材にした作品です。おかずさんたちの活躍に抱腹絶倒します。


『パンダのポンポン クリスマスあったかスープ 』
野中柊/作 長崎訓子/絵   理論社   2005.12

版元語録:クリスマス。今年こそサンタがきてくれるかな。ポンポンのレストランではパーティーがひらかれました。そして、そのあとステキなできごとが……。スーッと気持ちがよくなって、パーッと気分が明るくなるスーパーマーケットの店長、キリンのリンも活躍する、あったかい気持ちになるおいしい童話。


『トレッリおばあちゃんのスペシャルメニュー 』
シャロン・クリーチ/作 せなあいこ/訳   評論社   2009.08
GRANNY TORRELLI MAKES SOUP by Sharon Creech, 2003
版元語録:おばあちゃんが,おいしいパスタやスープを作りながら教えてくれる,とびっきりの"人生のレシピ"。ほっと心あったまる物語。


『特急おべんとう号』

岡田よしたか/作・絵
福音館書店
2009.03

バリケン:私は、自分でうまく書けないせいか幼年童話にはすごく甘いので、幼い子どもたちが笑ったり、幸せな気持ちになったりする本は、無条件で「いいな!」と思ってしまうんです。翻訳物だと、子どもにわからない言葉はあまり使わないようにするんだと思いますが、創作だと作者の勢いで結構むずかしい言葉も出てきますね。『特急おべんとう号』も『パンダのポンポン』も文章に勢いがあってすらすら読ませます。『特急おべんとう号』は、特に語り口が巧みだと思いました。ただ、メザシが汽車の中で寝ているところ、顔が妙にリアルなので(p102、103)、なんだか生々しい感じがしました。メザシって、お弁当に入れるのかな?

プルメリア:小学校1年生の図書の時間に、この本の読み聞かせをしました。遠目では絵が見えにくいと思ったんですが、読み聞かせをしたらすごく喜んで「きゃあきゃあ」いって、納豆が出てくる場面ではたいへんはしゃいでいました。読み聞かせ後、お笑いでも耳にしている関西弁がおもしろいと言っていました。会話が緑の字で書いてあるので、読み聞かせするときに読みやすかったです。子どもたちは、イワシは知っているけれど、メザシは知らなかったので説明を加えました。最近の子どもたちは、魚をあまり食べないんですね。「誰が1位になると思う?」と聞くと「納豆、納豆!」と言って、本当に1位になると喜んで拍手していました。金魚がでっかくなるところ、特に男の子が気に入って喜んでいました。絵はダイナミック、文は現代風でおもしろかったです。あまり推薦リストなどには出てこない本だけど、今回出会えてよかったと思いました。次がどうなるかわからないワクワク感がありました。

ハリネズミ:私は、文章はおもしろいけど、絵が気持ち悪くて、食べ物がおいしそうに見えませんでした。中途半端に漫画風な絵ですけど、これでいいんでしょうか? 文章にしても、p24に「観戦中だったのりせんべい、かしわもち、おはぎ……」とありますが、絵を見ると人間しか観戦していない。もっとちゃんとつくってほしいな、と思いました。

カワセミ:おもしろく読みました。このどぎつい絵には好き好きがあると思うけど、ギャハハッと笑ってどんどんページをめくれるおもしろさがあると思います。かまぼこが転倒してゆでたまごを直撃し、ゆでたまごがダウンなんて、おかしかったし、雨が降ってくるところは、まさかの展開で、雨のおかげで納豆がすべるように速く走ったなんておもしろいと思いました。

げた:もうちょっと大きな絵本のほうがいいのかなという気がしました。お弁当のおかずたちが走ったり旅行したりするというのも荒唐無稽なんだけど。絵も第一印象ではちょっとどぎついかなあと思いました。でも思ったより、おもしろく読めることは読めました。ただやっぱり食べ物が道路を走っているのに、なんとなく違和感がありますね。あまりそんなことを考えちゃいけないのかな、とも思いますけどね。絵そのものは、子どもたちの心をひきつけるのかなあ。だからこそ、大判の絵本にした方がいいと思います。

ハリネズミ:この絵は、おいしそうなんですかね?

バリケン:実をいうと、いろんな食べ物がごちゃごちゃしているので、生ゴミのような感じがしないでも……。

げた:やっぱり食べ物は器にはいってないとね。

カワセミ:でも、ふつうは器にはいってる食べ物が、はいずりまわっているところがおかしいんじゃないの?

ハリネズミ:私は、中途半端にリアルな感じがしました。リアルじゃないところとリアルなところがごちゃまぜになっているので、頭の中で収集がつかなくなる。

カワセミ:あんまり深く考える本じゃないのよ。

ハリネズミ:文章の調子はおもしろいと思ったんだけどね。

カワセミ:普段読み物を読まない子が、これならアハハと笑って読めて、次に何かほかの本を読んでみようと思う、呼び水的な本じゃないのかな。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年11月の記録)


『パンダのポンポン クリスマスあったかスープ』

野中柊/作 長崎訓子/絵
理論社
2005.12

プルメリア:幼年童話っぽい作品で、ほのぼのしていておもしろいと思いました。コアラの元気な雰囲気が出ているし、キリンの特徴も出ているし、動物1匹1匹の役目があるのかな。p148で、「真っ白な雪」「がちらり、ちらり。」というのは改行が間違っていると思います。子どもは、「がちらり」と読んでしまうので、配慮してほしいな。トナカイのサンタはあまりかわいくなかったです。

ハリネズミ:私はおもしろいと思えませんでした。C・S・ルイスが児童文学論で、子どもの本だからといって食べ物を出せばいいということではない、と言ってますけど、これはその例じゃないのかな。かわいい動物と食べ物が出てくればいいってもんじゃないでしょう。内容も、消費マインドにのっとって書かれているような気がして、新鮮味もないし、私は入っていけませんでした。

カワセミ:私もシリーズの1冊目が出たとき、低学年向きのとてもおもしろそうな本が出たと思って期待して読んだんですけど、裏切られたんです。この3冊目も同じでした。絵は楽しいんですけどね。p107の「あれあれ? どこへ行くのかな?」のような文を入れるのって、幼年童話だからと思って入れるのかもしれないけれど、小さい子は主人公になりきって読むので、誰が言っているのかわからないような言葉はかえって混乱を招くと思います。それにこの本は、1冊に3つのエピソードが入っていますが、幼年童話にしては文章が多いし総ルビとはいえ漢字も多い。それに「笑みがひろがりました」とか「念じていました」とか、子どもの言葉ではないですよね。だからといって3、4年生向きだと話が幼稚すぎる。本のつくり方がどっちつかずだと思います。それから、肝心のポンポンのキャラクターがはっきりしてないし、おもしろくなかったですね。キツネのツネ吉なんてネーミングもどこにでもあるし。

げた:この本は、子どもたちには人気があるようです。ですからこの本の良さは何なんだろうな、と考えたんです。そんなに筋に起伏があるものではないので、筋を楽しむということじゃないんですよね。それよりもとにかく、順番にいろいろな動物が集まってきて、パーティーが始まって、楽しく過ごすんですよね。たくさんの友だちが集まってあたたかい場所がつくられ、友達っていいなあというやさしい気持ちになれる、そんなところがいいのかな。出てくる動物の名前はちょっとだじゃれっぽいけれど、すごくぴったりだと思いました。

ハリネズミ:名前の付け方は、カワセミさんがおもしろくないと言ってたけど?

カワセミ:ほかはおもしろいけど、ツネ吉だけが陳腐だと思ったの。

げた:コブラのラブコとか、おもしろいですね。

プルメリア:それって、言葉の並べ替えでしょ?

ハリネズミ:スーパーでいっぱい物があるといって大喜びしてますけど、ずいぶんとモノ志向ですよね。作者は子どものころそういう感動をもったのかもしれないけれど、今の子は感動しないんじゃないかな。

バリケン:なぜ子どもがこういう本をこんなにも喜ぶのか、それから、喜ぶからという理由だけで書いていいのか……うーん、さっき私が言ったことと矛盾するかもしれないけれど、幼年ものの永遠の課題よね。p88で、「ララコがたいせつにしている花たちが、このパーティーをいっそうはなやかなものにするのだと思うと、うれしくてなりません。」というのは、小さい子にはわかりにくい文章ですね

ハリネズミ:ポンポンのキャラクターづけがはっきりしていないという意見があったけど?

バリケン:だいたいパンダ自体、他の動物ほどキャラクターがはっきりしていないんじゃない?

げた:みんなを楽しませる役というところでしょうね。

バリケン:MCみたいな役割ね。

げた:でも幼年童話とはいえないですね。中学年向きですね。

プルメリア:最初の2ページは絵があって字が少なくて読みやすいと思いましたが、そのあとは急に字が多くて低学年には無理。最近の子は、本が厚いと手に取らない傾向があります。読まないんです。字を大きくして、字と字との間隔があいていれば読めると思いますが。

ハリネズミ:中学年が読むには内容が幼稚すぎるという意見も出たわね。1話ずつ1冊にして、1、2年生が読みやすいつくりにしたほうがよかったのかもね。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年11月の記録)


『トレッリおばあちゃんのスペシャルメニュー』

シャロン・クリーチ/作 せなあいこ/訳
評論社
2009.08

バリケン:私は、おもしろくなかったです。文章がぶつぶつ切れていて読みにくいし、「きっと善意の人が大勢出てくる、いいお話なんだろうな」感が強くて。わたしが、ひねくれているんでしょうか? 他の作品を読んでも、私はシャロン・クリーチとは相性がよくないのです。トレッリおばあちゃんの話の中でイタリアの少年の犬がひかれちゃうのが妙に印象が強くて、何も殺さなくてもいいんじゃないかな、と思ったりして。

プルメリア:この作家はとても好きなんですが、最初は何なのこの作品は、と思いながら読みました。最後に赤ちゃんが出てくるところまで呼んで、すごくいい作品だなと思いとほっとしました。今、子どもたちの間では告白ブームがあるんです。思春期の子どもたちは、好きとか嫌いとか相手に自分の気持ちを伝える傾向があります。思春期の心情を描いた作品なので、ぜひ子どもたちに手にとってほしいな。

ハリネズミ:今回の3冊の中では、私がおもしろいと思ったのは、これだけです。親友との関係が恋に変わりそうな年代の子どもの心情をすごくうまく書いている。クリーチの作品のなかでも、これは『あの犬がすき』と同じ系列で、わざとこういう書き方をしているんでしょうね。説明をするのではなく、場面場面を切り取っていって、そこからいろいろなことがわかってくるような描き方。ベイリーとロージーの気持ちのすれちがいもうまく書かれているし、おばあちゃんが要所要所で豊かな人生経験から来るいいアドバイスをしてくれる。トイレに行ってから、間をおいてまたひとこと言ってくれたり、食べ物を作りながら言ってくれたり、子どもが次の段階に進んで行けるように言っているのが、ほんとうにうまく書かれています

カワセミ:この独特のモノローグの文体のせいで、ロージーが心に思うことが直接的に伝わってきました。いちばんいいなと思ったのは、ベイリーの目が見えないことが最初は読者にわからなくて、途中でわかるんだけど、目が見えないからどうということではなく、どんな子で、自分がどんなに好きかということが中心になっているところ。それから、おばあちゃんが、料理をしながら自分の小さい頃の話をしてくれて、ロージーがそれに自分を重ね合わせていろいろと考えていくところ。子どもって、お母さんはどうだったのとか、おばあちゃんはどうだったの、とか興味をもつから、気持がよくわかった。おばあちゃんは、イタリア語まじりの英語を話し、それがまたいい味を出しているんだけど、翻訳ではそこはあまり伝わりませんね。仕方ないけれど残念。

ハリネズミ:ベイリーが目が見えないというのは、ロージーの顔をさわってみるとか、ミートボールを作るときの描写とか、細かい場面場面で読者が察することができるよう、とてもうまく書いてあると思います。

げた:文章が短くて、ポツポツ感はあるけど、私は読みやすかったですね。それに文章のまとまりごとに行間を空けているんだけど、空いてる部分で読者がイメージを作ることができるように思いました。考えさせる間合いというかね。十代の女の子が氷の女王になったり、オオカミになったりして、ゆれる少女の気持ちの変化がよく伝わってきました。おばあちゃんとパルドの関係とロージーとベイリーの関係はできすぎといえばできすぎだけれど、おばあちゃんから語られるお話にはひきつけられるものがありましたね。子どもたちは共感を持って読むんじゃないかと思いますよ。

(「子どもの本で言いたい放題」2009年11月の記録)