ニューベリー賞を受賞した『シャイローがきた夏』の続編です。ビーグル犬のシャイローは、前編に書かれていた様々な出来事をのりこえて、マーティの家にやってきました。でも、シャイローの元の飼い主ジャドは、いろいろな嫌がらせをしてきます。ジャドはまた酔っぱらってはケンカをしたり、トラックを暴走させたりするので、村の人たちも眉をひそめるようになります。

本書では、ジャドがどうしてそんな性格になってしまったのかも明かされています。獣医さんの役目もしてくれるお医者さんのマーフィ先生、施設でいろいろな事件を起こすおばあちゃん、何があっても絶対に目を覚まさない下の妹のベッキー、などサブキャラも存在感を発揮しています。主人公の少年マーティが、なんとしてもシャイローを守ろうとする気持ちが本書でも痛いほど伝わってきます。

(編集:山浦真一さん 挿絵:岡本順さん)

 

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<訳者あとがき>

本書は、アメリカの女性作家フィリス・レイノルズ・ネイラーの作品SHILOH SEASONの翻訳です。

ビーグル犬のシャイローをめぐるネイラーの作品は、アメリカでは4冊出ており、これはその2番目にあたります。アメリカではどの巻もよく読まれ続けていて、2015年には4巻目のSHILOH CHRISTMASも新たに出版されました。また3 巻目までは映画やDVDにもなって人気を博しています。

作者のフィリス・レイノルズ・ネイラーは、1933年にアメリカのインディアナ州に生まれた作家で、小学校4年生の頃から物語を書いていたといいます。日本でも他にアリスのシリーズ(講談社/青い鳥文庫)や、ミステリーホテルのシリーズ(偕成社)などの翻訳が出ています。

シャイローのシリーズの1巻目『シャイローがきた夏』(原題SHILOH 1991)は、アメリカで最もすぐれた児童文学作品に与えられるニューベリー賞を受賞した作品で、2014年にあすなろ書房から翻訳が出て、幸い版を重ねています。この作品は、1993年に別の出版社から『さびしい犬』という題で翻訳出版されたことがあったのですが、その後絶版になって日本語では読めなくなっていました。私は、自分でもビーグル犬を飼っていることもあって、もう一度日本の子どもたちにも読んでほしいと思い新たに訳し直したのでした。

このシリーズでは、全体を通して、動物と人間との関係や、人間としての誠実な生き方や、事実とゴシップの違いや、虐待された子どもなどについて考えさせてくれますが、お説教臭いところはなく、時にユーモアも交えて物語そのものの力で引っ張っていきます。登場人物にもそれぞれ特徴があり、構成もみごとで、物語の伏線もきちんと張られています。よくできた物語として楽しんでいただければ幸いです。

2019年8月 さくまゆみこ