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お金さえあればいい?〜大人は知らない子どもは知りたい! 子どもと考える経済のはなし

『金さえあればいい?』表紙
『お金さえあればいい?〜大人は知らない子どもは知りたい! 子どもと考える経済のはなし』
浜矩子/著 高畠純/絵
クレヨンハウス
2017

『お金さえあればいい?』(NF)をおすすめします。

とてもわかりやすい文章とユーモアたっぷりのイラストで、お金や経済について学ぶ本。お金はなんのためにあるの? 経済とは本来どんなものなの? 今の日本経済に警鐘を鳴らす著者は、本当の経済は人と人が出会う場をつくるもので、そこからは幸せが生まれてこなくてはいけないという。利益ばかりを追い求めるような偽の経済活動を賢く見ぬいて、お金にふりまわされないで幸せになるためにはどうしたらいいか。それを本書は伝えている。

11歳から/経済 社会 お金 幸せ

 

All We Need Is Money?

ーA Tale of Economics to Think about with Young People

In easily understood language supported by humorous illustrations, this book teaches us about money and economics. What is the purpose of money? What is economics? The author, Noriko Hama, is a famous economist. She explains that true economics should be about creating spaces in which people can come together and that generate happiness. Unfortunately, economic activity today is increasingly focused on the pursuit of profit. She teaches how to discern such “false” economics and live a life that is not controlled by money and that will bring us happiness. (Sakuma)

  • Text: Hama, Noriko | Illus. Takabatake, Jun
  • Crayon House
  • 2017
  • 64 pages
  • 21×15
  • ISBN 9784861013195
  • Age 11 +

Money, Happiness, Economics

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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ヒットラーのむすめ(新装版)

ジャッキー・フレンチ『ヒットラーのむすめ』新装版 さくまゆみこ訳
『ヒットラーのむすめ(新装版)』
ジャッキー・フレンチ著 さくまゆみこ訳 北見葉胡挿絵
すずき出版
2018.03

オーストラリアのフィクション。ある雨の日スクールバスを待っているときに、アンナは「ヒットラーには娘がいて……」というお話を始めます。マークは、アンナの作り話だと思いながらも、だんだんその話に引き込まれ、「もし自分のお父さんがヒットラーみたいに悪い人だったら……」「みんなが正しいと思っていることなのに、自分は間違っていると思ったら……」などと、いろいろと考え始めます。物語としてとてもうまくできています。現代の子どもが、戦争について考えるきっかけになるのではないかと思います。
(装丁:鈴木みのりさん 編集:今西大さん)

*オーストラリア児童図書賞・最優秀賞
*産経児童出版文化賞JR賞(準大賞)

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<新装版へのあとがき>

この本の著者ジャッキー・フレンチは14歳のころ、ドイツ語の宿題を手伝ってくれた人から少年時代の話を聞きました。その人は、ナチス支配下のドイツで育ったのですが、家族も教師も周囲の人もみんなヒットラーの信奉者だったので、自分も一切疑いを持たず、障害を持った人やユダヤ人やロマ人や同性愛者、そしてヒットラーの方針に反対する人々は、根絶やしにしなくてはいけないと思い込んでいたそうです。そしてその人は強制収容所の守衛になったものの、戦争が終わると戦犯として非難され、密出国してオーストラリアに渡ってきたとのことでした。「周囲が正気を失っているとき、子どもや若者はどうやったら正しいことと間違っていることの区別がつけられる?」と、その人は語っていたと言います。

作者のフレンチは、長い間そのことは忘れていました。でもある日家族で「キャバレー」の舞台を見に行った時、息子さんが、ウェイター役が美声で歌う「明日は我がもの」に共感し、その後にそのウェイターや周囲の人々がナチスの制服を着ているのに気づいてショックを受け、「自分もあの時代に生きていたら、ナチスに加わっていたかもしれない」とつぶやいたのだそうです。息子さんは当時14歳。それで、フレンチは自分が14歳のときに聞いた話を思い出し、この本を書かなくてはと思ったのでした。

本書がすばらしいのは、子どもが自分と世界の出来事を関連させて考えたり想像したりしていくところだと思います。今、戦争を子どもに伝えるのは、そう簡単ではありません。体験者の多くがもうあの世へ行ってしまって直接的な出来事として聞く機会は少なくなりました。それに、暗い物語は敬遠され、軽いものがもてはやされる時代です。そんななか、子どもへの伝え方を工夫して書かれたこの物語が、今の日本でも多くの人々に読み継がれているところに、わたしは一筋の光が見えているような気がしています。

さくまゆみこ

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