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モーリス・センダック『バンブルアーディ』さくまゆみこ訳

バンブルアーディ

アメリカの絵本。センダック最後の絵本です。主人公は子ブタちゃんのバンブルアーディ。生まれてからこのかた一度も誕生日のお祝いをしてもらったことがありません。でもそのうち、パパもママもあの世へ行ってしまい(「とうとう ブタにくに されちゃった」)、アデリーンおばさんに引き取られます。そして9歳のバンブルアーディは、初めてアデリーンおばさん誕生日のお祝いをしてもらうことになります。

でも、うれしくてたまらないバンブルアーディは、おばさんが仕事に出たすきに、友だちをたくさん呼んでどんちゃん騒ぎ(この大騒ぎが盛り上がる場面は、『かいじゅうたちのいるところ』と同じように3見開きを文章なしに絵だけで見せています)。そこへおばさんが戻ってきて・・・。おばさんが 怒り狂う(「きえろ、うせろ、たちされ、でていけー!」)場面も迫力あります。最後は、すてきなアデリーンおばさんが、「もうぜったい10さいにならないから」と謝るバンブルアーディを、また受け入れてくれます。私はこのところ児童文学や絵本にみる新しい家族像について考えているのですが、これも「子どものないおばさんの養子になった男の子」を描いている絵本と見ることもできそうです。おばさんがバンブルアーディの試し行動でカッとなった後で関係を再構築していく過程と見ても、おもしろいかもしれません。

80歳を過ぎたセンダックがつくったとは思えないようなエネルギーが感じられる絵本です。

書き文字は、わざと子どもが書いたみたいな文字にしてくださっているようです。私はもっときれいな文字の方がしっくりくるのではないかと思ったのですが、センダック関係者のほうは、これがいいと気に入ってくれたとのこと。
(装丁:城所潤さん 編集・広松健児さん)

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<紹介記事>

・「産経新聞」2016年5月24日

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ジェイムズ・マーシャル文 モーリス・センダック絵『おいしそうなバレエ』さくまゆみこ訳

おいしそうなバレエ

さえないオオカミがブタの街に迷いこみました。見ると劇場があって、看板には、おいしそうなころころ太ったブタが! しめしめ、とオオカミは劇場に入っていきますが、見ているうちにバレエの素晴らしさにすっかり魅せられてしまいます。親友だったマーシャル亡きあと、残された原稿にセンダックが絵を描きました。とにかく笑えるし、二人の友情にもホロリとさせられます。
(装丁&描き文字:森枝雄司さん 編集:米田佳代子さん)

*SLA「よい絵本」選定


E.B.ホワイト『シャーロットのおくりもの』さくまゆみこ訳

シャーロットのおくりもの

アメリカのフィクション。1952年にアメリカで出版されて以来、ずっと読み継がれてきた動物ファンタジーの古典です。以前別の出版社から出ていた翻訳(鈴木哲子さん訳で、法政大学出版局刊)は、今の子どもには少し読みにくくて残念だと思っていました。今回まったく新たに訳し直す機会をあたえられ、今の子どもにも充分読んでもらえるようになったのではないかと思います。
(装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、草野浩子さん)

*ニューベリー賞オナー(この年の本賞はアン・ノーラン・クラークの『アンデスの秘密』が受賞)
*ホーンブック・ファンファーレ