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『魔導師の娘』表紙

魔導師の娘

イギリスのファンタジー。「クロニクル千古の闇」シリーズは完結したかと思っていたら、10年以上たって続巻が出ました。この7巻目では、表紙の絵は酒井駒子さんですが、中のイラストは原書の絵をそのまま使っています。また6巻目までとは体裁も少し変わりました。

今から6000年くらい前の、まだすべてを人の手で作り出さなければ暮らしていけなかった時代。ひとりでこっそり出ていったレンを追ってトラクは極北へと向かいます。いつの間にか、先を行くレンのそばにはナイギンいう若者が。レンはなぜ出ていったのか? ナイギンとは何者なのか? 愛するレンとトラクを引き裂いたのは誰なのか? 謎が次から次へと生まれ、それがどう解きほぐされていくのか、ハラハラします。ウルフの活躍にも胸がおどります。

舞台となる地に著者が足を運び、綿密に文献も調査して書いているので、大自然の描写や、その中で生き延びていく当時の人々の暮らしや考え方など、物語世界がリアルで入り込めます。(冬に読むと寒くなりますので、ストーブのそばか、こたつに入って読むことをお勧めします)

(編集:岡本稚歩美さん 装丁:水野哲也さん)

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『〈死に森〉の白いオオカミ』表紙

〈死に森〉の白いオオカミ

『〈死に森〉の白いオオカミ』(読み物)をおすすめします。

村には、川向こうの森を丸裸にしてはいけない、という言い伝えがあったのに、人口が増えて農地が足りなくなると、男たちは向こう岸にわたり森を焼き払ってしまう。そこは〈死に森〉と呼ばれるようになり、村人たちを襲うオオカミが次々に現れる。リーダーの巨大な白いオオカミは森を守っていた魔物なのか? 子どものエゴルカが一部始終を見届け、村を救う。ロシアの伝承を下敷きにし、不思議な人びとも登場する、土の香りがする物語。自然と人間の関係を描いた象徴的な寓話としても読める。

原作:ロシア/11歳から/オオカミ、伝説、自然

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『オオカミの旅』表紙

オオカミの旅

『オオカミの旅』(読み物)をおすすめします。

親に守られ、兄弟と競い合いながら子ども時代を過ごしたオオカミのスウィフトは、別の群れに家族を殺されてひとりになってしまう。生存をかけてさまよう間に何度も危険な目にあうが、やがてとうとう自分の居場所を見いだして家族が持てるまでに成長する。ノンフィクションではないが、オオカミの生態をうかがい知ることができるし、巻末には物語のモデルになったオオカミの紹介や、シンリンオオカミの特徴についての説明もある。波乱に満ちたサバイバル物語としても、おもしろく読むことができる。

原作:アメリカ/11歳から/オオカミ、旅、 サバイバル

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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もうおふろにはいるじかん?

おふろに入るのは,ちょっと苦手かな? でもオオカミの子が眠りにつくまでのお父さんとの楽しいやりとりを見れば,もう大丈夫! (日本児童図書出版協会)

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3びきのかわいいオオカミ

お話はちょうど『3びきのこぶた』の逆で,無邪気なオオカミが悪い大ブタにいじめられます。昔話をしのぐ,現代的な動物寓話。 (日本児童図書出版協会)

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キャサリン・ランデル『オオカミを森へ』

オオカミを森へ

『オオカミを森へ』をおすすめします。

舞台は20世紀初頭のロシア。貴族のペットだったオオカミを野生にもどす仕事をしていたマリーナは、暴君の将軍に従わず、逮捕監禁されてしまう。マリーナの娘のフェオは、兵士イリヤや革命家のアレクセイ、そして子どもたちやオオカミたちと共に、母を取り戻しに都へと向かう。くっきりしたイメージを追いながら楽しめる冒険物語。

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年10月28日掲載)


舞台は20世紀初頭のロシア。貴族たちが飼えなくなったオオカミを野生に戻す「オオカミ預かり人」の仕事をしていたマリーナは、将軍に言いがかりをつけられて逮捕され、サンクトベテルブルクに連れ去られてしまう。人間よりオオカミを友だちとして育った、マリーナの娘フェオは、将軍の支配に疑問を持ったイリヤや、革命家のアレクセイ、そして大勢の子どもたちやオオカミと一緒に、母を取り戻しに都へと向かう。人物造形がくっきりしていて、ストーリーもおもしろい冒険物語。

原作:イギリス/10歳から/オオカミ ロシア 革命 子どもの戦い

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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ジェイムズ・マーシャル文 モーリス・センダック絵『おいしそうなバレエ』さくまゆみこ訳

おいしそうなバレエ

さえないオオカミがブタの街に迷いこみました。見ると劇場があって、看板には、おいしそうなころころ太ったブタが! しめしめ、とオオカミは劇場に入っていきますが、見ているうちにバレエの素晴らしさにすっかり魅せられてしまいます。親友だったマーシャル亡きあと、残された原稿にセンダックが絵を描きました。とにかく笑えるし、二人の友情にもホロリとさせられます。
(装丁&描き文字:森枝雄司さん 編集:米田佳代子さん)

*SLA「よい絵本」選定


ミシェル・ペイヴァー『復讐の誓い』さくまゆみこ訳 

復讐の誓い

イギリスのファンタジー。舞台は6000年前の北部ヨーロッパ。は、復讐がテーマです。大切な友人の命を奪ったのが〈魂食らい〉だという事実をつきとめたトラクは、復讐を誓って旅立ちます。そして復讐と、友情(愛)との間で揺れ動き・・・トラクも、レンも、ウルフも成長し(当然のことながら、オオカミのウルフの成長がいちばん早いのですが)、新たな事実が次々に明かされていきます。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川 潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『追放されしもの』さくまゆみこ訳

追放されしもの

イギリスのファンタジー。トラクは〈魂食らい〉に付けられたしるしのせいで、氏族たちから誤解されて追放の身に。寄り添ってくれるのは最初はオオカミのウルフだけ。やがてレンとベイルも駆けつけてきます。トラクは14歳、レンは13歳。そろそろ性別も意識するようになり、恋も芽生えそうです。これまでの謎のいくつかが明らかとなり、物語はますますおもしろくなってきています。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『魂食らい』さくまゆみこ訳

魂食らい

イギリスのファンタジー。季節は冬。雪と氷の世界が広がります。この巻では、ウルフが魂食らいにさらわれてしまいます。自分の危険もかえりみず、とにかくウルフを捜して救い出そうとするトラクと、それを向こう見ずだと思いながらも助けてしまうレン。またまた手に汗握るストーリー展開です。6000年前という時代や人物の心理がきちんと書けているので、子どもばかりでなく大人も物語世界に入り込めます。酒井さん描く裏表紙のシロクマは必見!
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『生霊わたり』さくまゆみこ訳

生霊わたり

イギリスのファンタジー。トラクが暮らす森を得体の知れない病が襲い、トラクはその治療法を捜しに旅立ちます。しかし海辺に出たトラクはアザラシ族の少年たちに捕らえられ、島に連行されてしまいます。魂食らいの意外な正体が暴かれていくこの巻は、海が舞台。レンとウルフも再び活躍します。1巻よりさらにおもしろさを増しています。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『決戦のとき』さくまゆみこ訳

決戦のとき

イギリスのフィクション。とうとうこのシリーズも最終刊になりました。最後まで残っていた最強の「魂食らい」イオストラとの対決はどうなるのか? トラクとレンの恋は? ウルフの子どもたちは? 相変わらず読者をはらはらどきどきさせながら、いろいろなことを考えさせてくれます。読ませる力がある本ですね、やっぱり。この終わり方、私は好きです。
(絵:酒井駒子さん 装丁:桂川 潤さん 編集:岡本稚歩美さん)

*ガーディアン賞受賞