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『カタカタカタ』表紙

カタカタカタ〜おばあちゃんのたからもの

『カタカタカタ』(絵本)をおすすめします。

女の子のおばあちゃんは、昔ながらの足踏みミシンでいろいろなものを作ってくれる。でもある日、女の子の劇の衣装を縫っているときにミシンが故障して、修理屋でも直せない。それでも、おばあちゃんは夜遅くまでかかって、手縫いで衣装を間に合わせてくれた。「ほんとうに すごいのは カタカタカタじゃなくて、おばあちゃんだったのね。」という言葉がいいし、壊れたミシンが、テーブルにリフォームされる最後にも納得できる。ユニークな絵と文で、おばあちゃんと女の子のあたたかい交流を伝えている。

原作:台湾/3歳から/ミシン 祖母 リフォーム

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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ヘレン・スティーヴンズ『おばあちゃんからライオンをかくすには』さくまゆみこ訳

おばあちゃんからライオンをかくすには

イギリスの絵本。前作『ライオンをかくすには』では、迷い込んできたライオンを両親から隠そうと必死になったアイリスですが、今度は、両親の留守におばあちゃんがやってくるというので、さあ大変! なんとかしておばあちゃんからライオンを隠そうとします。

でも、大きな衣装箱を運び込んだおばあちゃんにも、何か秘密がありそうです。だって、おばあちゃんは「ねるまえのおやつ」を山のように用意するし、夜中におばあちゃんの寝室から変な物音が聞こえてくるのですから。

それにしても、ゆかいな家族です。アイリスは、このおばあちゃんの遺伝子をしっかり受け継いでいるのでしょう。怖いことは何も起こらない、あったかいストーリーとあったかい絵が魅力。くすくすっと笑えるユーモアもあります。
(装丁:伊藤紗欧里さん 編集:若月眞知子さん)

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ディウフ文 エヴァンズ絵『おしゃれがしたいビントゥ』さくまゆみこ訳

おしゃれがしたいビントゥ

アートンのアフリカの絵本シリーズの5作目。西アフリカの女性たちは、みんなおしゃれが大好き、着るものや装飾品だけでなく、ヘアスタイルにもこだわります。主人公の女の子ビントゥは、自分の髪をおしゃれな三つ編みにして、金色のコインやきれいな貝殻をつけたいのですが、おばあちゃんは「まだ早い」と言います。三つ編みをしなくても、すてきな女の子になれるかな? セネガルの村の暮らしが生き生きと描かれています。伝統的なアフリカ社会では、おばあちゃんの言葉に大きな重みがあったこともわかります。
アートンという会社がなくなってしまったので、図書館で見てください。
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+米倉ミチルさん)

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訳者あとがき

この絵本の舞台は、西アフリカの大西洋に面した国セネガルです。セネガルは、アフリカ大陸の中でも政情が安定している国の一つで、首都ダカールは、パリ・ダカール・ラリーのゴール地点としても有名です。

このあたりには、13世紀から15世紀にかけてマリ王国という国があり、サハラ砂漠を越えてくるラクダの隊商を使って地中海諸国と交易して発展していました。その後、ジョロフ王国などができましたが、1815年にフランスの植民地となり、1960年にフランスから独立しました。初代大統領は、詩人で文学者のレオポルド・セダール・サンゴールですが、サンゴールはまた、ノウサギを主人公にした昔話を子どものために出版しています。

セネガルはイスラム教の人たちが人口の9割以上を占めます。この絵本に出てくる赤ちゃんの名付けの儀式にも、イスラム教のお坊さんが出てきましたね。

またセネガルは、ジェンベなどの太鼓、木琴のようなバラフォン、ヒョウタンに皮を張った弦楽器のコラなどという楽器が国歌にも登場するほど音楽がさかんな国で、昔から音楽と歌を職業とするグリオ(吟遊詩人)が社会で大事な役目を果たしていましたし、ワールド・ミュージックの世界でも、ユッスー・ンドゥールやイスマエル・ローをはじめとするミュージシャンたちが活躍しています。

この絵本の主人公ビントゥは、お姉さんや大人の女の人と同じように、髪を長い三つ編みにしたくてたまりません。アフリカの女性にはおしゃれな人が多いので、ビントゥもおしゃれをしたいのです。この三つ編みは、日本でいうお下げとはちがって、髪の毛をほんの少しずつ手にとって、ぎゅうぎゅう引っ張りながら編んでいくのです。同じ三つ編みでも、無数につくるので、時間もかかります。実際にやってもらった人にきくと、3,4時間はゆうにかかるそうです。カラフルな付け毛を編み込んだり、編んだ髪をおもしろい形に束ねている人もいます。アフリカの多くの国では、美容院や床屋さんの店先に、ヘアスタイルの絵を描いたゆかいな看板が出ていて、それを見て歩くだけでも楽しいものです。

西アフリカの女性はまた、着るものにもこだわります。この絵本に登場する女の人たちも、大胆な柄のカラフルな衣装を着ていますね。スケイエおばあちゃんの青いドレスについているのは、タカラガイのもようです。昔は貨幣としても使われていたタカラガイは豊かさの象徴で、今でも装直品などによく使われています。

さくまゆみこ

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ローズマリー・ウェルズ『マックスとたんじょうびケーキ』さくまゆみこ訳

マックスとたんじょうびケーキ

アメリカの絵本。うさぎの姉弟ルビーとマックスが活躍します。おばあちゃんのお誕生日にあげるケーキをつくっているルビーは、弟が邪魔ばかりするのでキッチンから閉め出してしまいます。でも弟のマックスは、とってもすてきなケーキを自分でもつくるのです。二つのケーキをもらったおばあちゃんの反応がすばらしい!
(装丁・描き文字:森枝雄司さん 編集:鈴木真紀さん)


ジャクリーン・ウッドソン『かあさんをまつふゆ』表紙(さくまゆみこ訳)

かあさんをまつふゆ

アメリカの絵本。戦争中お金をかせぐため、大好きな母さんはシカゴに出稼ぎにいってしまう。少女エイダ=ルースはおばあちゃんとお留守番。雪が降った日、小さな黒い子ネコが迷い込んでくる。おばあちゃんは飼ってはいけないと行ったけれど、エイダ=ルースはそっと中にいれてあげる。母さんからの手紙を待っていても、郵便屋さんはいつも通り過ぎ、手紙もお金も届かない・・・。母親の帰りを待つ少女の思いを詩情あふれる言葉と絵で描いた絵本です。
(装丁:則武 弥さん 編集:相馬徹さん)

*コルデコット賞銀賞受賞


おばあちゃんとバスにのって

『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします

この絵本のおばあちゃんは、お金や効率よりも人とのふれあいを大切にしています。行き先は、困っている人にごはんを出す食堂。ぼくも手伝って奪った食事をみんなが笑顔で食べてくれると、心もあったかに。

(朝日新聞「子どもの本棚」2016年11月26日掲載 *テーマ「ぬくもり」)


『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします。

どんなときにも人生を楽しめるって、いいよね。でも、それにはちょっとしたコツが必要。

この絵本のおばあちゃんは、人生を楽しむ達人。髪は白いけど、黒い服に赤い傘、緑色のネックレスにピアスのおしゃれさん。孫息子のジェイが「なんでバスを待たなきゃいけないの?」と不満げにたずねても、「だって、バスの方が楽しいんじゃない?」なんて答えてすましている。

おばあちゃんとジェイが乗ったバスには、チョウを入れたビンを抱えたおばさんも、スキンヘッドにタトゥーのこわもて男も、ギターをつま弾く帽子の男も乗っている。盲導犬を連れた人も乗ってくる。おばあちゃんはみんなにあいさつし、鼻歌をうたう。にこにこ顔がまわりにも広がり、帽子の男の演奏と歌にみんなが聞きほれる。

バスが終点で停まると、そこはジェイが「汚くていやだなあ」と感じるような街だ。道はがたがたで、家のドアは壊れ、あちこちに落書きもしてある。でも、おばあちゃんは「ここでもちゃんと美しいものは見つけられるのよ」と言って、空にかかった虹に、いち早く目をとめる。

二人が向かったのは、ボランティア食堂。英語だとスープキッチン。無料で、あるいはとても安い料金で食事ができるところだ。日本で言うと、おとなも来られる子ども食堂みたいな感じかな。おばあちゃんはエプロンをかけて、次々とやってくる人たちに食べ物をよそっていく。ジェイも手伝う。そこは、人と人が触れあうことのできる場だ。ひとり暮らしの人も、友だちに会える。こういうところなら、お腹だけじゃなくて心も満たされるはず。食堂に来るのは恵まれない人たちだけど、貧しいとかかわいそうという視点はまったくなくて、だれもが楽しそうだ。原書は、アメリカでニューベリー賞とコルデコット賞銀賞を受賞した。

(「トーハン週報」Monthly YA 2016年12月12日号掲載)

 


『おばあちゃんとバスにのって』をおすすめします。

雨の日曜日、ジェイはおばあちゃんと一緒にバスに乗ってお出かけ。おしゃれなおばあちゃんは、人生の楽しみ方がちゃんとわかっていて、乗ってくる人たちにあいさつし鼻歌をうたう。すると、にこにこ顔がまわりにも広がっていく。終点で降りてふたりが向かったのは、ボランティア食堂。ふたりは、ここにやってくる恵まれない人たちに食事をよそい、さまざまな人との触れあいを楽しむ。生きていくうえで何が本当に大事かがわかってくるような絵本。ニューベリー賞、コールデコット賞オナー。

原作:アメリカ/3歳から/おばあちゃん バス 多様性

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)


ひとりで おとまり した よるに

イギリスの絵本。はじめておばあちゃんの家にひとりで泊まりにいったエイミーは、夜になると心細くなります。すると、自分の家から持ってきたマットや木馬やおもちゃの船が、エイミーを夜の飛行へと連れ出してくれるのです。エヴリデイ・マジックの、オーソドックスな、そして安心できる絵本です。

ところでピアスとクレイグは血のつながらない親戚です。ピアスの娘サリーの夫が、クレイグの息子なのです。私は、このコンビの絵物語『消えた犬と野原の魔法』も訳しています。
(装丁:森枝雄司さん 編集:上村令さん)