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『真夜中のちいさなようせい』表紙

真夜中のちいさなようせい

『真夜中のちいさなようせい』をおすすめします。

韓国の画家による初めての絵本。作者は、病弱で寝ていることが多かった幼少時代に、ゆめうつつに妖精を見たことがあるという。そんな体験を基に 2 年という年月をかけて生まれた作品。
熱を出して寝ている男の子は、お母さんが看病に疲れてうたた寝をしている間に妖精に会う。目をさまして、その妖精がくれた指輪を見たお母さんも、忘れていた記憶を思い出し、少女に戻って息子や妖精たちと遊ぶ。勢いの良さで勝負するような絵本やマンガ風の絵本がもてはやされる時代にあって、伝統的な手法でていねいに細かく描かれたこのような絵本は貴重だし、ぬくもりも伝わって想像力がひろがる。文章には登場しない猫があちこちに顔を出しているのも楽しい。

(産経児童出版文化賞/翻訳作品賞選評 産経新聞2022年05月05日掲載)

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ジャクリーン・ウッドソン『かあさんをまつふゆ』表紙(さくまゆみこ訳)

かあさんをまつふゆ

アメリカの絵本。戦争中お金をかせぐため、大好きな母さんはシカゴに出稼ぎにいってしまう。少女エイダ=ルースはおばあちゃんとお留守番。雪が降った日、小さな黒い子ネコが迷い込んでくる。おばあちゃんは飼ってはいけないと行ったけれど、エイダ=ルースはそっと中にいれてあげる。母さんからの手紙を待っていても、郵便屋さんはいつも通り過ぎ、手紙もお金も届かない・・・。母親の帰りを待つ少女の思いを詩情あふれる言葉と絵で描いた絵本です。
(装丁:則武 弥さん 編集:相馬徹さん)

*コルデコット賞銀賞受賞


あかちゃんぐまはなにみたの?

アメリカの絵本。巣穴の奥深くで目をさました赤ちゃんグマが、さまざまな色の世界と出会っていきます。おひさまの黄色、オークの葉っぱの緑、カケスの青、マスの茶色、イチゴの赤、チョウチョウのオレンジ色……でも、やがて風と雨がやってきて、赤ちゃんグマはお母さんについて巣穴にもどります。そしてまたすてきな色と出会うのです。はじめて日本で翻訳が出たこの作者は、森と動物に囲まれて育った女性です。
(編集:須藤建さん)