『魔女の血をひく娘』
セリア・リーズ/作 亀井よし子/訳
理論社
2002.10
原題:WITCH CHILD by Celia Rees, 2000

<版元語録>おばあさんは魔女として連れていかれた。裸で歩かされ、水に沈められたあげく、首くくりにされた。次はわたしだ…。アメリカで発見された古びたキルトに、一枚一枚縫いこまれた謎の日記。そこには、十七世紀イギリスの魔女狩りを逃れ、新大陸に渡った娘の、驚くべき軌跡が綴られていた…。

きょん:最初読むのがつらかったけど、途中からすーっと話の中に入って、つられて最後まで読んでしまった。

アカシア:歴史の中の庶民を時系列で書いていった本ですね。くじらが出てくるところとか、ところどころ描写がおもしろい。でも、114〜115ページに「私にはその力がある。それを疑う人はいないかもしれない。わたしがこれまでに何を望んできたとしても、運命を逃れることは不可能なのだ。きょう起きたことは、それを証明するできごとだった」って書いてあるけど、この女の子にどの程度の魔力があるのかはっきりしなくて、もどかしかった。中途半端な設定だと思いました。歴史的には魔女として糾弾されてきた人がいて、もう片方にはキャラとしての魔女がいるわけですけど、その両者の間のギャップを考えるにはいい本かも。

ペガサス:私はね、おもしろくないわけじゃないんだけど、おもしろかったわけでもない。

きょん:そうそう!

ペガサス:歴史として大人として興味があるから、おもしろくないわけじゃない。最初のうちひきつけられておもしろいんですよ。本当にこの子は魔女なの?と思いながら読むから。いちばん知りたいのは、この子の出生の秘密なのに、最初のうちで、もうお母さんとは会えないこともわかっちゃったりして、謎解きが中途半端になってしまうのが物足りない。これって、本当に出てきた日記なんでしょ。

カーコ:ええっ、フィクションでしょ。

:371ページのあとがき見て。「この日記が発見されて以来、メアリー・ニューベリーをはじめ、ここに登場する人々の足跡をたどる作業がつづけられています」って書いてあるじゃない。情報があったら教えてくれって、メールアドレスも書いてあるわよ。フィクションだとしたら、ええっ! 私、だまされたわよ。

カーコ:物語に枠があるのよね。本当っぽく見せるための。

:なんだよー。

アカシア:紙切れの1枚くらいは本当に見つかったことがあるかもしれないけど、物語自体はフィクションでしょ。メールアドレスも、巧みな宣伝よね。

:(がっくりしながら)日記と史実をもとに書かれていると思って読んだのにな。

ペガサス:これって、もう続編が出てるのよ。それ読むと、もうちょっとわかるかもね。

:(まだがっくり。立ち直れないでいる…)

ペガサス:私は、本当の話だから、多少はおもしろくなくてもしょうがないと思ったのよね。

:(……脱力)

カーコ:そういうふうに読ませようと思って書かれてるんだからいいじゃない。

アカシア:中学生や高校生だったら、真に受けて読むと思うな。羊さんは読者として正しい読み方をしてるのよ。

カーコ:昔、喫茶店で隣に座った高校生が『キッチン』(吉本ばなな/作 角川文庫)の話をしていて、「これって実話かなー」って言ってたの。そういうふうに読ませているのよね。

:(まだ立ち直れず)創作なの……? ショック。

もぷしー:私、途中までしか読んでないんだけど、その辺気になってきちゃった。

カーコ:私はけっこうおもしろく読みました。ところどころきれいな描写があって楽しめたし、最後、この女の子がどうなるんだろうっていう興味も続いたし。最初99章もあるのを見て何なんだろうと思ったのだけれど、日記という設定だからなんですね。構成が凝ってますよね。今は異文化を理解しようって流れが主流だけれど、西洋の歴史の中で異なるものを排除していた時代は長いんですよね。異なるものを忌み嫌う世界のこわさが伝わってくる話でした。確かに、この女の子が本当に魔女だったかどうかは、はっきりしませんよね。殺されたおばあさんが本当に魔女だったかどうかもわからなかったし、この子がどこまで不思議な力を持っているかもわからないままだった。森に入ってから、この子は何もしていないのに、邪悪な気があるとか言われるけれど、マーサも魔女なのかと思ったら、そうでもないみたいで、最後にマーサは当たり前の人になるし。ジョーナは、宗教に対して科学の象徴で魔法ではないし。

アカシア:もし未来が見えるんだたら、ジャック以外の人の未来も見えるはずよね。シーアーとか言われている人って。

カーコ:そうそう、目で見てのろいをかけたってとがめられるシーンでも、実際はそんな力は使ってないんですよね。

きょん:昔は、何か不都合なことがあると「おまえのせいだ」と言われて魔女扱いされ、迫害された人たちがいましたよね。この少女も、それと同じように魔女扱いされていたのだから、プロット的には本当に魔法を使う必要はないのでは?

紙魚:私は、最初のほうでこれはフィクションなんだろうなと思ってしまって、それもあってか、あんまりおもしろくは読めなかった。キャラクターとしての魔女じゃなくて、糾弾される対象の魔女の話って、もっとどきどきする物語だと思うんですよ。中学生のころ『魔女狩り』(森島恒雄/著 岩波新書)を読んだとき、すごく恐ろしくって、しかも、魔女という存在をつくる社会のシステムについてもぐっと考えさせられたんですね。それにくらべると、この物語、装丁ほどは恐ろしくない!

アカシア:ふつう、魔女としての嫌疑がかけられる要素があるはずなんだけど、この子が不思議な力を発するのは1回。だから、本当に魔力があるから魔女とされたのか、そうじゃないのにあらぬ嫌疑をかけられたのか、中途半端な描き方ですよね。

:でも、これだけフィクションかノンフィクションか、魔女なのか魔女じゃないかで、これだけ話がもりあがるんだから、みんなで読んでみて、よかったですよね。

(2003年01月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)