『ウィッシュリスト』
オーエン・コルファー/著 種田紫/訳
理論社
2004
原題:THE WISH LIST by Eoin Colfer,2000

版元語録:死んだ少女の魂がまた現世にもどって老人の四つの願いをかなえることになった。成功すれば天国に行けるが,ダメなら地獄いき…。

ハマグリ:あまりおもしろくなかったので、途中から斜め読みになってしまった。携帯電話を使ったりする現代的な世界と、天使と悪魔という昔ながらの世界の対比のおもしろさを出そうとしてるのかしら。コメディータッチで軽く読めそうなのに、あまり入っていけなかった。他の2冊のようなおばあさんと孫娘の話はよくあるのに、おじいさんと女の子の取り合わせは珍しいわね。最近は見た目はおもしろそうに作っているけれど、読むとそうでもないのが多いのよね。

アカシア:こういうドタバタ的なものを、日本語でも笑えるように訳すのは難しいですね。3分の2ぐらいまで読んだんですけど、おもしろくなくて途中でやめました。編集が荒っぽいですね。もっと工夫すれば、日本の子どもでも笑えるようにできるのでは? 翻訳の記述の矛盾もあちこちで気になったし、34ページは「おまえ」なのに、次のページは「きみ」。その辺も読みにくい原因かもしれません。43ページは聖ペトロですよね。英語ならおもしろいのだろうけれど、普通に訳したのではおもしろくない。

アサギ:そういう工夫がないからおもしろくないの? それともストーリーが?

アカシア:おじいさんの人生が透けて見えないといけないのに、見えてこないから、物語としてもおもしろいとは言えないかも。でも、キリスト教圏の人は細部でおもしろいと思うかもしれませんね。

雨蛙:帯の「めちゃくちゃ笑えて」で楽しいのかと思って読み始めた。今の子は、これでもクスクス笑いながら読み進めてしまうかもしれませんね。この内容にしては、ボリュームがありすぎますね。メグという子は、年からいっても深めてほしかった。作者がどのくらいの内容で何を目指しているかが見えてこなかった。

すあま:同じ著者の『アルテミス・ファウル』(角川書店)は、妖精がコンピューターを操っていましたが、今回のは、それを天国と地獄におきかえたんですね。これを読んで、森絵都の『カラフル』(理論社)を思い出しましたが、こちらは盗みに入ったおじいさんのところでボランティアをする、という設定で比較的おもしろく読めました。死んじゃった女の子と、死にそうな老人とののロードムービーみたいな物語で、テレビの連続ドラマにしたらおもしろいかな。でも、帯にあるような「めちゃくちゃ笑えてハートウォーミングな話」ではないですよね。最後どうなるんだろうかとひっぱられて読まされる話。

アサギ:日本人には、聖書にかかわる基本的な知識がないから、こういうの訳すの難しいのよね。それから、もともと笑わせるのって難しいのよね。人間の脳って、サバイバルを目的にしているので、もともとネガティブなことに対してのみ敏感にできているんですって。暗闇を歩いているときライオンに襲われたりしたらどうしようと心配するふうにできているんですって。だから愉快なことには鈍感なんですって。だから、やっぱり笑わせるのって至難の業なのよね。

ケロ:確かにスピード感があって、おもしろかったんだけど、キリスト教関連のギャグや、アメリカの人気番組に関するギャグなど、細かいところがよくわからないので、ふうん、とさびしい思いをしました。きっと、こういうことなんだろうな、と想像しながら読むしかなくて。翻訳もので現代の設定だと、ほかの本でもそういう部分があるんですが、この本には特に一抹の寂しさを感じました。あと、犬と人間がまじっちゃったり、実体のないコンピューターのキャラ、なんていうのは、日本ではあまり見ないものですね。イメージの新しさを感じました。

むう:『アルテミス・ファウル』を読んだときは、そんな大ヒットするような本かなあと思ったので、それに比べてこれはどうかなと思いながら読みました。結論としてはやはり今ひとつ。言ってみれば、ぺらぺらの色つきセロファンで飾り立てているような安っぽいところがありますね。スピード感があって、子どもを引きつけるだろうなって思うし、ドタバタしたところとハイテクが売りなのもわかりますが、それ以上のものは感じられない。この人のアイデアには、けっこうやるなあ!というものもいろいろあって、たとえば途中で、悪を働こうとしている者たちが、ふたりの人間のあいだに愛という100%の善が生まれたとたんに、その余波で吹っ飛ばされるという顛末や、死期が近い人には幽霊が見えるけれども、そうでない人には見えないといった設定など、なるほどと思わせるのだけれど、それらが全体としてひとつにまとまってどうというところまではいっていない。勢いが命のような面のある作品だから、訳文で意味のわからないところが出てきてスピードが止まるのは苦しいですね。

紙魚:あんまりおもしろい本ではなかったけれど、この軽めの装丁がいいですね。ひとりよがりな世界を作るのではなく、読者を喜ばせようとしている作者の姿勢はよく伝わってきますが。帯の文章は、ちょっと内容と違うかなと思いました。

(「子どもの本で言いたい放題」2004年7月の記録)