『ラクリッツ探偵団〜イエロー・ドラゴンのなぞ』
ユリアン・プレス/作・絵 荒川みひ/訳
講談社
2006.01
原題:DIE LAKRITZBANDE1:Aktion Gelber Drache by Julian Press 2000(ドイツ)

オビ語録:60の絵の中に決定的なしょうこがかくれている!/きみは8つのじけんを解決できるか!?

トチ:「タンタン」を思わせるクラシックな、ほのぼのと品のいい絵。特に表紙がすてき。内容は絵解きですが、大人の私は細かい絵をじっくり見ていく根気がなく、『あたまをひねろう』と別の意味で難しかった。ただ、子どもたちにはおもしろいでしょうね。それと、時間がたっぷりあるお年寄りにも向いているかもしれない。ただ残念だったのは、絵がメインで、ストーリーそのものはあんまりおもしろくなかったこと。本作りの意図がそこにはなかったんでしょうけど。

たんぽぽ:心に残るというより、「ミッケ」のような遊びの感覚で、子どもは親しみやすいと思う。

うさこ:こういう手法はありだな、と思いました。同じパターンだけれど、繰り返しのリズムがある。内容的にはワンパターン。でも、10歳くらいの子は、そのパターンが好きなんだろうな。あまり物語を読まない子は、こういうものから入っていくのでは、と思いました。絵の中で、わかりにくいところがありました。79ページの注射器がわからなかった。表紙の女の子の絵も、手と足が同じ方が出ていて、変。絵解きのお話なので、絵にもっと気をつかってほしいなと思いました。

紙魚:注射器は、たしかにわかりにくいですね。絵は、線が簡潔で、なかなかいいんですが。原書では、答えは文章を読まないとわからないようになっているのですが、せっかく探しても「本当にこれでいいのかな?」と迷う人がいそうなので、答えの部分の絵を切り抜いて、ひと目でわかるようにしてあります。

うさこ:問題があって、ページを開いて「正解はズバリ」という言い方で、原書も統一されているのですか?

紙魚:原書は、問題の文章、答えの文章というようにはっきり分かれていないんです。文章でそのままずらずらと書かれているだけ。でも、例えば読者を「青い鳥文庫」の読者くらいと想定すると、きちんと分かれていないとわかりづらいかなと思って、そのような構成にしました。「ズバリ」というのも、ここからが答えですと、はっきりと明示するためです。

うさこ:全部の答えをつなげていくと、読み終わった後、全体でもなにか種明かしのような、答えがあるのかなと思って書き出していったけど、なかった。私の考えすぎですね。

紙魚:あー、そうだったらまたおもしろいんですよね。もともと、文章から謎を解くのではなくて、絵から答えをさがすというスタイルなので、一つのストーリーとしてつながりを持たせるのは難しいのかもしれません。でも、次に期待したい! とはいえ、ゆるやかにつながっているので、あまり出来がよくないからといって、問題を1問はずすということもできません。そのあたりは、やるせないですね。

ケロ:もっと謎解きかと思ったけど、絵さがしなんですよね、全体的に。その中で、ちょっと気になったのは、絵の中の活字。原書はどうだったのかな。p17で鍵穴から部屋の中をのぞくとき、日本語の活字がまず目にぱっと入ってくるので、すぐに答えがわかってしまう。絵の中に活字があると、そこから目に入ってしまうので、登場人物がすぐにわからないのはおかしいという感じになってしまっている。

紙魚:原書は、描き文字で絵の中にとけ込んでしまっていて、むしろ文字だかなんだかわからない感じ。どのくらいの難易度にしようか、ずいぶん迷いましたが、これだけの文章量と問題数があって、解けない問題が続くより、すぐに答えがわかる問題が続く方がいいかなあと思って、活字にしました。

むう:私も、絵の中の活字って最初に目に飛びこんでくるから、簡単すぎるよなあと思いました。それと、お話として厚みがないのが残念。ほとんどくり返しみたいになって飽きてきちゃいました。後ろにわざわざ登場人物紹介があるんだけど、なるほど、そういう子なんだなあ、と思わせるところまで書けていないから、その点も不満でした。

げた:絵解きのレベルにくらべ、文章が多いような気がします。読書対象年齢がはっきりしないと思いました。ストーリーは盛り上がりがなく平板な感じで、図書館での複本購入はちょっと難しいかな……

ウグイス:持ったときの本の大きさ、手ごろな厚み、カジュアルな感じにまず好感をもちました。ふつうのお話の本じゃなく、おもしろそうだなという雰囲気を作っているのはいいですね。探偵ものの児童書はいろいろあり、謎解き自体は凝っていなくてもキャラクターやストーリーがおもしろいというものが多いですね。これは、ストーリーに入り込んでいくほど、深い内容ではないのね。しっかり文章を読んだ上で謎を解くというより、さっと読んで絵の中を探す、という形。子どもに次々ページをめくらせるという意味ではクイズ本的な作りにしたのは、成功していますね。

アサギ:薄くて軽く、読みやすい所は良かったと思います。ただ、絵解きなのに、ちょっと易しすぎるという印象がありましたね。私みたいに謎解きが下手な人間でもすぐわかっちゃったから。話も単調で、途中で飽きてきてしまった。でも、対象年齢が低いなら、これでいいかもしれないので、実際にどういう子が読むのか、知りたいですね。

カーコ:この手の本としての本作りに徹しているのがよかったです。表紙の虫めがねとか、レイアウトとか、子どもが最大限楽しめるように作ってありますよね。文章も全体に読みやすいし、きちんとしていると思いました。「ラクリッツ」と言うと、日本の子にはただの固有名詞に聞こえてしまうけれど、ドイツでは独特の味が連想されて、おもしろみがあるんでしょうね。そんなにおいしいものだとは思えないけれど、ドイツの子は好きなのかしら? 本のタイトルにするくらいに。

すあま:最初見たとき、ハンス・ユルゲン・プレスの『くろて団は名探偵』(佑学社)という今は絶版になっている本の第2弾かと思ったら、息子さんの作品でした。絵や雰囲気が似ていますね。お父さんの作品も同じような絵解き推理物語ですが、おもしろさではお父さんの方が勝っているように思います。

(「子どもの本で言いたい放題」2006年5月の記録)