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パッチワーク

『パッチワーク』表紙
『パッチワーク』
マット・デ・ラ・ペーニャ/文 コリーナ・ルーケン/絵 さくまゆみこ/訳
岩波書店
2023.09

アメリカの絵本。編集部で考えてくれたオビの言葉は、「すべての子どもたちへのあたたかなエール」。

小さいときに、「男だから青が似合うよね」「ダンスをするためにうまれてきたんだね」「ボール競技が得意だね」「いつも上の空じゃないか」「やさしすぎるんじゃないの」なんて言われ続けたとしても、それにとらわれなくてもいいのです。この絵本は、「みんなと同じでなくてもいいんだよ。今のまんまが続くと思わなくてもいいんだよ」と、詩的な言葉とすてきな絵で語りかけています。

きみがもっている音は、ひとつじゃない。
きみは、いろいろな音をだせる。
きみは、シンフォニーなのだ。
きみが行った場所、出会った人たち、
感じてきたこと、
それがみんな、きみの音や色になる。
きみは、ブルーでピンクで、さびしくて、うれしい。
時とともに集まったさまざまなものが
ぬいあわさって、
きみというパッチワークができていく。

と、デ・ラ・ペーニャは言い、最後は

わたしたちは、みんな美しいのだから。

という言葉で終わります。

(編集:松原あやかさん 装丁:高橋デザイン事務所)

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りんごだんだん

『りんごだんだん』表紙
『りんごだんだん』
小川忠博/写真・文
あすなろ書房
2020

『りんごだんだん』(NF写真絵本)をおすすめします。

最初は、ぴかぴかでつやつやの赤いリンゴの写真に、「りんご つるつる」という言葉がついている。その同じリンゴが、少しずつ変わっていき、しわしわになり、ぱんぱんになり、しなしなになり、ぐんにゃりとなり、やがて哀れな姿に。作者が1年近くの間リンゴを観察して記録した写真絵本。それぞれの写真には、ごく短い言葉がついているだけだが、生きているものは時間とともに否応なく変化していくこと、そして、それを糧にしてまた次の命が育っていくことなどが、リアルな写真から伝わってくる。

3歳から/リンゴ 腐敗 変化 命

 

Apple, Bit by Bit

A photo of a bright red apple appears with the text “Smooth Apple.” The same apple changes little by little over time, becoming wrinkly, swollen, soft, limp, and then bug-eaten. But is that the end? The author observed and photographed the same apple for about a year to create this picture book. Each photo has only brief words with no explanations, but the idea that all living things change, ultimately becoming nourishment for future life, comes across in the realistic photos. (Sakuma)

  • text/photos: Ogawa, Tadahiro
  • Asunaro Shobo
  • 2020
  • 36 pages
  • 20×21
  • ISBN 9784751529614
  • Age 3 +

Apple, Decay, Change, Life

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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かわっちゃうの?

アンソニー・ブラウン『かわっちゃうの?』さくまゆみこ訳
『かわっちゃうの?』
アンソニー・ブラウン作 さくまゆみこ訳
評論社
2005.03

イギリスの絵本。「これからは、いろんなことがかわるんだよ」とお父さんがジョーゼフに言い置いて出かけていきます。一体、何が変わるの? どんなふうに変わるの? 自分の下に赤ちゃんが生まれることになった男の子の不安をこれほど見事に描いた絵本はないと、私は思っています。ページを追うごとに何かが変わっていきますが、何が変わっていくのかを発見する楽しみもあります。アンソニー・ブラウンの作品にしては、人間もリアルに描けています。ゴリラの絵はもちろん秀逸です。
私はこの表紙ではなく、もっと魅力的なペーパーバックの表紙を日本語版では使ってほしいとお願いしたのですが、なぜかハードカバーの原書の表紙がそのまま使われてしまっていました。
(編集:吉村弘幸さん)