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おはよう

『おはよう』 (くまのテディ)

レスリー・フランシス & ニコラ・スリー文 ローラ・クーパー絵 さくまゆみこ訳
日本キリスト教団出版局
2011.02

装丁家・桂川さんの息子さんであり「歩く会」の仲間でもあるリョウ君が、子どものときに好きだった絵本です。くまのぬいぐるみテディのなにげない一日が、クラシックな絵とともに語られていきます。青短のクリスチャンの先生が、だれよりも早く「広告見ましたよ!」と言ってくださいました。(装丁:桂川 潤さん 編集:土肥研一さん)


おしゃれがしたいビントゥ

ディウフ文 エヴァンズ絵『おしゃれがしたいビントゥ』さくまゆみこ訳
『おしゃれがしたいビントゥ』
シルヴィアン・A・ディウフ文 シェーン・W・エヴァンス絵 さくまゆみこ訳
アートン
2007.02

アートンのアフリカの絵本シリーズの5作目。西アフリカの女性たちは、みんなおしゃれが大好き、着るものや装飾品だけでなく、ヘアスタイルにもこだわります。主人公の女の子ビントゥは、自分の髪をおしゃれな三つ編みにして、金色のコインやきれいな貝殻をつけたいのですが、おばあちゃんは「まだ早い」と言います。三つ編みをしなくても、すてきな女の子になれるかな? セネガルの村の暮らしが生き生きと描かれています。伝統的なアフリカ社会では、おばあちゃんの言葉に大きな重みがあったこともわかります。
アートンという会社がなくなってしまったので、図書館で見てください。
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+米倉ミチルさん)

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訳者あとがき

この絵本の舞台は、西アフリカの大西洋に面した国セネガルです。セネガルは、アフリカ大陸の中でも政情が安定している国の一つで、首都ダカールは、パリ・ダカール・ラリーのゴール地点としても有名です。

このあたりには、13世紀から15世紀にかけてマリ王国という国があり、サハラ砂漠を越えてくるラクダの隊商を使って地中海諸国と交易して発展していました。その後、ジョロフ王国などができましたが、1815年にフランスの植民地となり、1960年にフランスから独立しました。初代大統領は、詩人で文学者のレオポルド・セダール・サンゴールですが、サンゴールはまた、ノウサギを主人公にした昔話を子どものために出版しています。

セネガルはイスラム教の人たちが人口の9割以上を占めます。この絵本に出てくる赤ちゃんの名付けの儀式にも、イスラム教のお坊さんが出てきましたね。

またセネガルは、ジェンベなどの太鼓、木琴のようなバラフォン、ヒョウタンに皮を張った弦楽器のコラなどという楽器が国歌にも登場するほど音楽がさかんな国で、昔から音楽と歌を職業とするグリオ(吟遊詩人)が社会で大事な役目を果たしていましたし、ワールド・ミュージックの世界でも、ユッスー・ンドゥールやイスマエル・ローをはじめとするミュージシャンたちが活躍しています。

この絵本の主人公ビントゥは、お姉さんや大人の女の人と同じように、髪を長い三つ編みにしたくてたまりません。アフリカの女性にはおしゃれな人が多いので、ビントゥもおしゃれをしたいのです。この三つ編みは、日本でいうお下げとはちがって、髪の毛をほんの少しずつ手にとって、ぎゅうぎゅう引っ張りながら編んでいくのです。同じ三つ編みでも、無数につくるので、時間もかかります。実際にやってもらった人にきくと、3,4時間はゆうにかかるそうです。カラフルな付け毛を編み込んだり、編んだ髪をおもしろい形に束ねている人もいます。アフリカの多くの国では、美容院や床屋さんの店先に、ヘアスタイルの絵を描いたゆかいな看板が出ていて、それを見て歩くだけでも楽しいものです。

西アフリカの女性はまた、着るものにもこだわります。この絵本に登場する女の人たちも、大胆な柄のカラフルな衣装を着ていますね。スケイエおばあちゃんの青いドレスについているのは、タカラガイのもようです。昔は貨幣としても使われていたタカラガイは豊かさの象徴で、今でも装直品などによく使われています。

さくまゆみこ

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ぼくはまほうつかい

マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真『ぼくはまほうつかい』さくまゆみこ訳
『ぼくはまほうつかい』
マヤ・アンジェロウ文 マーガレット・コートニー=クラーク写真 さくまゆみこ訳
アートン
2006.09

写真絵本。主人公はガーナのアシャンティ地方(アナンシの話で有名なところですよ)にくらす少年コフィ。コフィが日々の暮らしや機織りの仕事や市場のようすなどを案内してくれます。アンジェロウはアフリカ系アメリカ人で有名な詩人で、ガーナで暮らしていたことがあります。アートンのアフリカの絵本第3弾。
文章を書いたマヤ・アンジェロウはアフリカ系アメリカ人の著名な詩人で、ガーナに住んでいたことがあります。写真を撮ったコートニー=クラークはナミビアに生まれたフォトジャーナリストで、「ンデベレ基金」を創設して、南アフリカの女性や子どものアートを支援する活動も行っています。この絵本をつくるにあたっては、ガーナ各地を取材したそうです。
アートンが今はないので、図書館で見てください。
(装丁:長友啓典さん+久万美那子さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+堀さやかさん)

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<訳者あとがき>

この絵本の舞台になっているガーナは、金やカカオ(チョコレートやココアの原料)の輸出国として世界的に有名です。日本では、野口英世が黄熱病の研究をした国としても知られています。

ガーナの首都は、南部の大西洋に面したところにあるアクラ。第二の都市はアシャンティ地方にあるクマシ。コフィ君がくらすボンウィレ村は、このクマシから北東に20キロばかり行ったところにあります。ボンウィレは、この絵本にもあるように、ケンテという布の産地としてとても有名な村です。

ケンテは、複雑なデザインをもつ色あざやかな手織りの布で、追われる模様にはどれも意味があると言われています。細く織った布を縫ってつなぎ、大きな布にしていくのですが、手間のかかる豪華な布なので、ガーナの人は、普通は儀式や特別なときに身にまといます。この絵本では、コフィ君が旅に出る時も、海に行く時も誇らしげに胸を張ってケンテを身にまとっていますが、実際は普段着や旅行着ではなく、晴れ着です。また日本だと機織りは伝統的には女性の仕事を思われていますが、ガーナでは男性の織り手のほうがずっと多いようです。

次に「金の腰掛け」の伝説についてご紹介しておきましょう。17世紀にお生・トゥトゥという王様がアシャンティ一帯の小王国をまとめて統一し、ここに大きな王国をつくりました。このとき、空に黄金の腰掛けがどこからともなくあらわれ、オセイ・トゥトゥ王の膝の上に降りてきたという伝説があります。この金の腰掛けはアシャンティ王国のシンボルとなり、新たに即位しようとする王様は、今でも非公開の即位の儀式のときにはその上にすわるそうです。現在のガーナは共和国で王様が治めているわけではありませんが、王様は昔ながらの儀式などをとりおこなっています。

この絵本の表紙で、コフィ君が頭の上にのせているのは、金ならぬ木製の腰掛けです。アシャンティの人たちは、こういう腰掛けにすわってご飯を食べたり、お洗濯をしたり、おしゃべりをしたりするのです。

アフリカの昔話の世界では、「クモのアナンシ」が有名ですが、知恵のまわるいたずら者アナンシも、ガーナのアシャンティ生まれだということをつけ加えておきたいと思います。

最後になりましたが、この絵本を翻訳するにあたっては駐日ガーナ大使のバフォ・アジェバゥワ閣下に貴重なアドバイスをいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

さくまゆみこ


アフリカの大きな木 バオバブ

ミリアム・モス文 エイドリアン・ケナウェイ絵『アフリカの大きな木バオバブ』さくまゆみこ訳
『アフリカの大きな木 バオバブ』
ミリアム・モス文 エイドリアン・ケナウェイ絵 さくまゆみこ訳
アートン
2006.08

ノンフィクション絵本。アフリカの大地にどっしりと根をおろし、空に向かって枝をひろげ、何千年も生きつづけるバオバブ。バオバブという木のふしぎと、サバンナに生きる動物たちの生き生きとした表情が楽しめる科学絵本です。アートンのアフリカの絵本第2弾!
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+船渡川由夏さん)

◆◆◆

<訳者あとがき>

私が最初にバオバブという木があることを知ったのは、サン=テグジュペリの『星の王子さま』を読んだときでした。バオバブという言葉のひびきがとてもおもしろくて記憶に残ったのですが、同時にこの物語には、バオバブはとても悪い木だと書かれていました。毒気を発してはびこり、しまいには星を破裂させるというのです。だから芽が出ているのを見つけしだいひっこ抜かなければいけないのだ、と。

その後私は、ナイジェリアの北部でバオバブの木を実際に見る機会にめぐまれました。そのときは乾季だったので、バオバブはすっかり葉を落としていました。ちょっと見ただけでは枯れているように見えるのですが、近づいて見ると太い幹からはしっかりとした生命力が感じられ、ふしぎな思いに打たれたものです。

東アフリカに行ったときには、バオバブの繊維でつくったバッグを手に入れ、もっといろいろ知りたくなって調べてみると、バオバブは悪い木であるどころか、とても役に立つすばらあしい木だということがわかってきました。バオバブには年輪がないので樹齢を調べるのはむずかしいのですが、2000年以上生きていると信じられている木もあるようです。この絵本を見ていただけばわかりますが、どっしりと立って、まわりの人間や動物に憩いの場や、子育ての場や、住まいを提供し、食べ物や生活の道具をもたらしてくれる木、それがバオバブだったのです。とくにバオバブの巨樹は、神聖な木とみなされたり、村人たちの集会の場となったりしています。西アフリカのセネガルのように、バオバブを国の木と制定して大事にしている国もあります。

バオバブは世界に10種類以上あって、アフリカ大陸のほかにマダガスカル島やオーストラリアにも自生していますが、この絵本に描かれているのはアフリカ大陸に育つバオバブ(学名でいうとアダンソニア・ディギタータ)です。

さくまゆみこ


おとうとは青がすき〜アフリカの色のお話

イフェオマ・オニェフル『おとうとは青がすき:アフリカの色のお話』さくまゆみこ訳
『おとうとは青がすき〜アフリカの色のお話』
イフェオマ・オニェフル作・写真 さくまゆみこ訳
偕成社
2006.06

写真絵本。赤は大おじさんの帽子の色、緑はヤシの葉っぱの色、金色はお母さんのネックレスの色…..。お姉さんのンネカが、「青がすき」という小さな弟のチディに、ほかにもすてきな色があるんだよ、と教えてあげます。ページをめくるたびに鮮やかな色が目に飛びこんできて、楽しみながらアフリカの文化に親しむことができます。ナイジェリア出身の著者がアフリカの暮らしや文化を楽しく伝える写真絵本シリーズの1冊。
(編集:和田知子さん)

 

 


AはアフリカのA〜アルファベットでたどるアフリカのくらし

イフェオマ・オニェフル『AはアフリカのA:アルファベットでたどるアフリカのくらし』さくまゆみこ訳
『AはアフリカのA〜アルファベットでたどるアフリカのくらし』
イフェオマ・オニェフル作・写真 さくまゆみこ訳
偕成社
2001.09

「AはアフリカのA アフリカ大陸には、たくさんの国があって、おおぜいの人がくらしています。着ているものや、話すことばはちがっても、アフリカ大陸は、みんなのふるさとです」「BはビーズのB 女の子は、頭や耳や首をビーズでかざります。・・・」「CはカヌーのC カヌーは、魚をとったり、売るものを市場にはこんだりするのに、つかわれます・・・」AからZまでの文字の一つ一つと共に、アフリカの文化のさまざまな側面が紹介されていきます。作者は、西アフリカのナイジェリア生まれの女性フォトグラファーです。
(編集:西野谷敬子さん)

*産経児童出版文化賞推薦