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円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦

『円周率の謎を追う』表紙
『円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』
鳴海風/作 伊野孝行/画
くもん出版
2016

『円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』(NF)をおすすめします。

関孝和の一生を、円周率を探る研究を核にして描いている。私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表す方法を編み出すところなどがスリルに富んだ推理小説のように描かれている。同時に、この数学者が何かを一途に追求し消えない炎を持ち続けていたひとりの人間として浮かび上がってくるので、読み物としてもおもしろい。さまざまな文献を研究して書いた労作。

11歳から/数学 歴史 江戸時代 円周率 関孝和

 

Solving the Mystery of Pi

ーThe Genius Mathematician of Edo, Seki Takakazu

Portrays the life of Seki Takakazu, the master of Japanese mathematics known as wasan, with particular focus on his research on pi. We learn at school that pi is about 3.14, but when Seki started his studies it was thought to be 3.16. The process of working through the doubts he felt about this until he was convinced, and the way he devised a method to express numerical formulae based on Chinese kanbun writing is as thrilling as a mystery novel. This mathematician emerges as one human being who single-mindedly pursued something with unextinguished passion. Based on thorough research. (Sakuma)

  • Text: Narumi, Fu | Illus. Ino, Takayuki
  • Kumon Shuppan
  • 2016
  • 208 pages
  • 19×14
  • ISBN 9784774325521
  • Age 11 +

Mathematics, Edo period (1603-1868), Pi

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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日小見不思議草紙

藤重ヒカル著 飯野和好絵『日小見不思議草紙』
『日小見不思議草紙』
藤重ヒカル/作 飯野和好/絵
偕成社
2016

『日小見不思議草紙』(読み物)をおすすめします。

江戸時代を舞台にした5篇のファンタジー短編集。不思議な刀のおかげで鼻にタンポポが咲き、相手が笑ってしまうので戦わずして勝てる侍の話、野原で出会った不思議な女の子にすばらしい絵の具をもらって出世する絵描きの話、クマの助けを借りて一夜にして堰堤を築く話など、どれも短いなりにまとまりがよく、おもしろく読める。それぞれの短編の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。ユーモラスな味わいを支えている挿絵もいい。日本児童文学者協会新人賞受賞作。

10歳から/ファンタジー 江戸時代 変身

 

Hiomi’s Tales of Mysteries

A collection of five fantasy stories set in the Edo period. A samurai wins without fighting thanks to his magical sword, which makes dandelions bloom from his own nose resulting in laughter; an artist becomes successful after being given some amazing paints by a mysterious girl he met in a meadow; a dam is built to prevent the river from flooding, with help from some bears…all the stories are short, but well-constructed and fun to read. Each also has something that connects the Edo period with the present, and the border between fact and fiction is deliberately blurred. The illustrations add a humorous touch. Newcomer Prize of Japanese Association of Writers for Children. (Sakuma)

  • Text: Fujishige, Hikaru | Illus. Iino, Kazuyoshi
  • Kaiseisha
  • 2016
  • 231 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784035404002
  • Age 10 +

Edo period (1603-1868), Humor, Fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦

鳴海風『円周率の謎を追う』
『円周率の謎を追う〜江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』
鳴海風/著 伊野孝行/挿絵 
くもん出版
2016.11

『円周率の謎を追う:江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』をおすすめします

関孝和という名前は知っていても、どんな人かを私は知らなかった。江戸時代の和算の達人ということを知っていただけである。本書はその関孝和を、血の通った人間として描き出そうとしている。数学が好きで儒学や剣術にはなかなか身が入らなかったこと、数学の師匠の娘である香奈と励まし合って学んだこと、数学好きのライバルたちと切磋琢磨したこと、けれども勤め(御用)をおろそかにできず数学だけを専門にするわけにはいかなかったことなどが、読みやすいストーリーとして語られているので、興味をもって読める。

後書きには、関孝和という人は、天才的な業績を残したにもかかわらず、いつどこで生まれたのかもわからず、その人生には謎が多いと書かれている。つまり、子どもの頃のことや折々に出会った人との会話などは、著者が想像して描いたフィクションとも言える。でも様々な文献に当たったうえでの想像であるからか、何かに一途になって心の中に消えない炎を持ち続けていた人だということが、無理なくしっかりと浮かび上がってくる。

私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて関が追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表現する方法を編み出すところなどが、スリルに富んだ推理小説のように描かれていて、おもしろい。出世やお金儲けには関係なくても、情熱を注げるものを持っていた人の楽しさが伝わってくる。

次は、「わたし、女数学者になります」と宣言して(ここもフィクションかもしれないが)、関を励ましつづけた香奈についても、もっと知りたくなった。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年6月12日号掲載)

 

関孝和の一生を、円周率を探る研究を核にして描いている。私たちが約3.14と学校で習う円周率も、関が学び始めた頃は3.16とされていた。それに疑問を感じて追求しようとする過程や、漢文から思いついて数式を表す方法を編み出すところなどがスリルに富んだ推理小説のように描かれている。同時に、この数学者が何かを一途に追求し、消えない炎を持ち続けていたひとりの人間として浮かび上がってくるので、読み物としてもおもしろい。さまざまな文献を研究して書いた労作。

(「おすすめ! 日本の子どもの本2018」<ノンフィクション>掲載)

キーワード:数学、歴史、江戸時代、円周率、関孝和