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『魔導師の娘』表紙

魔導師の娘

イギリスのファンタジー。「クロニクル千古の闇」シリーズは完結したかと思っていたら、10年以上たって続巻が出ました。この7巻目では、表紙の絵は酒井駒子さんですが、中のイラストは原書の絵をそのまま使っています。また6巻目までとは体裁も少し変わりました。

今から6000年くらい前の、まだすべてを人の手で作り出さなければ暮らしていけなかった時代。ひとりでこっそり出ていったレンを追ってトラクは極北へと向かいます。いつの間にか、先を行くレンのそばにはナイギンいう若者が。レンはなぜ出ていったのか? ナイギンとは何者なのか? 愛するレンとトラクを引き裂いたのは誰なのか? 謎が次から次へと生まれ、それがどう解きほぐされていくのか、ハラハラします。ウルフの活躍にも胸がおどります。

舞台となる地に著者が足を運び、綿密に文献も調査して書いているので、大自然の描写や、その中で生き延びていく当時の人々の暮らしや考え方など、物語世界がリアルで入り込めます。(冬に読むと寒くなりますので、ストーブのそばか、こたつに入って読むことをお勧めします)

(編集:岡本稚歩美さん 装丁:水野哲也さん)

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藤重ヒカル著 飯野和好絵『日小見不思議草紙』

日小見不思議草紙

『日小見不思議草紙』(読み物)をおすすめします。

江戸時代を舞台にした5篇のファンタジー短編集。不思議な刀のおかげで鼻にタンポポが咲き、相手が笑ってしまうので戦わずして勝てる侍の話、野原で出会った不思議な女の子にすばらしい絵の具をもらって出世する絵描きの話、クマの助けを借りて一夜にして堰堤を築く話など、どれも短いなりにまとまりがよく、おもしろく読める。それぞれの短編の前後に江戸時代と現代を結びつける仕掛けもあり、虚実の境がわざとあいまいになっている。ユーモラスな味わいを支えている挿絵もいい。日本児童文学者協会新人賞受賞作。

10歳から/ファンタジー 江戸時代 変身

 

Hiomi’s Tales of Mysteries

A collection of five fantasy stories set in the Edo period. A samurai wins without fighting thanks to his magical sword, which makes dandelions bloom from his own nose resulting in laughter; an artist becomes successful after being given some amazing paints by a mysterious girl he met in a meadow; a dam is built to prevent the river from flooding, with help from some bears…all the stories are short, but well-constructed and fun to read. Each also has something that connects the Edo period with the present, and the border between fact and fiction is deliberately blurred. The illustrations add a humorous touch. Newcomer Prize of Japanese Association of Writers for Children. (Sakuma)

  • Text: Fujishige, Hikaru | Illus. Iino, Kazuyoshi
  • Kaiseisha
  • 2016
  • 231 pages
  • 22×16
  • ISBN 9784035404002
  • Age 10 +

Edo period (1603-1868), Humor, Fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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イースト・オブ・ザ・ムーン〜テリー・ジョーンズ童話集その1

イギリスのコメディ・グループ「モンティ・パイソン」で有名なテリー・ジョーンズが、娘のサリーのために書いた物語集。「麦わら人形」「ぼけた王さま」「ふしぎなケーキの馬」「夜の飛行士」「3つの水玉」「ジャックのひと足」「骸骨船」「海のとら」「大きな鼻」「魔女とにじ色のねこ」「なぜ鳥は朝うたうか」「むらさき色のくだものがなる島」「遠いお城」「どこにもない国にいった船」の、ファンタジーと寓話がまじりあったような14のお話が入っています。

フォアマンの挿絵がすてきなんです。

(編集:檀上聖子さん)


風のゆうれい〜テリー・ジョーンズ童話集その2

イギリスのモンティ・パイソンのメンバーで、作家・脚本家としても活躍したテリー・ジョーンズが、娘のサリーのために書いた童話集。二巻目のこの本には、「のどじまんのちょうちょう」「ガラスの戸だな」「心配しょうのケイティー」「木切れの都」「ピーターのかがみ」「ゆうかんなモリー」「風のゆうれい」「世界の海を泳いだ魚」「ティム・オレーリー」「おばけの木」「たばこ入れの悪魔」「世界一の金持ちになった男」「金のかぎ」「リー・ポーのワイン」「1000本の歯をもつ怪獣」「悪魔にたましいを売った博士」の16のお話が入っています。ジョーンズはオックスフォード大学で中世文学に親しんでいたので、そんな雰囲気も持った、そしてちょっとスパイスがきいた物語になっています。

この中の「風のゆうれい」は大阪書籍の国語の教科書にも掲載されていました。
(編集:檀上聖子さん)


ジェフ・ブラウン文 トミー・ウンゲラー絵『ぺちゃんこスタンレー』さくまゆみこ訳

ぺちゃんこスタンレー

ユーモアたっぷりの物語。ある日、目が覚めるとスタンレーは厚さ1.3センチのぺちゃんこになってしまっていました。さあ、どうする? でも、スタンレーはその薄さでなければできないことを次々にやっていくのです。そのあたりが、とても楽しい。昔イギリスにいたとき、下宿先の子どもたち3人に読んであげると、年齢もちがう3人が3人ともげらげら笑いながら大喜びした絵物語。ウンゲラーの絵もとっても味があっておもしろいんです。いくつか出版社に持ち込んだけど断られて、やっとあすなろで出してくれました。でも、もう何度も刷を重ねています。
(編集:山浦真一さん)