柏葉幸子/作 岡本順/絵
あかね書房
1999.06
*課題図書 <版元語録>「オラ、ざしきわらしだ。」その子は、まじめな顔でうなずきます。「ほんとかよ?」。家出をしてきた資と、修学旅行に出されたざしきわらしの一郎太に、ふしぎな友情が生まれます…。空想のつばさで、たのしい読み物の世界へ。
ねねこ:これは、柏葉さんの作品としては、できがあんまりよくない。この作品が、今年の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書になってしまうっていうのは残念。憂えるべき、日本児童文学の現状。
オカリナ:ざしきわらしを現代にいかそうとしているのはいいと思うけど、いかんせん作品としての完成度が高くない。
ねねこ:柏葉さんって、読者対象が高い方が文章が上手だと思う。
オカリナ:これはリアリティがなさすぎ。お母さんがすぐにあたふたするとか、ざしきわらしを誘拐するところとか・・・。
ねねこ:自分の世界に、自分ひとりだけワーッて入っていっちゃって、説明不足になってるんじゃないかな。それじゃ読者はついていけなくなるから、筆を足したり、少し客観的に描写しないといけないんだけどね。男性像、女性像も、ちょっと古いとこあるのよねえ。それに、単身赴任中のお父さんの住んでるとこへ行くのは「家出」じゃなくて、「家移り」。だって、どっちも自分の家じゃん。
ウンポコ:ぼくも滅入っちゃったな。ざしきわらしに、ちっとも魅力がないんだもん。柏葉さんって、いい作品がいっぱいあると思ってたけどな。今、忘れられかけてるざしきわらしを、現代にいかそうというのは、とてもいいことだと思うんだけど・・・。
ねねこ:柏葉さんの永遠のテーマなんだよね、ざしきわらしって。ざしきわらしの話、たくさん書いているもの。柏葉さん、最近ちょっとマンネリぎみかもしれない。日本の作家って、ともすると起承転結にこだわりすぎるように思うんだけど、それが物語をつまらなくさせてるんじゃない? 『霧のむこうのふしぎな町』(講談社 青い鳥文庫にも)には、日本ばなれしたのびやかなおもしろさがあったのに、残念。
オカリナ:なんていっても、これが課題図書っていうのは、どうなの?「いじめに立ち向かう」っていう点で評価されたのかもしれないけど、それは、この作品の中ではただの図式でしかないのに。
ウンポコ:登場するざしきわらしが、ざしきわらしとしての魅力をちゃんと備えていれば、ちょっとくらいストーリーが破綻してたって、問題ないんだよ。この作品は、ざしきわらしがもってるはずのミステリアスな魅力が失われちゃってる! なんだか今日は、さえない終わり方になっちゃったなあ。
(2000年05月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)