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ふたりママの家で

『ふたりママの家で』表紙
『ふたりママの家で』
パトリシア・ポラッコ/作 中川亜紀子/訳
サウザンブックス社
2018

『ふたりママの家で』(絵本)をおすすめします。

「わたし」の家は、ふつうとはちょっと違う。医者のミーマと救急救命士のマーミーというふたりの母親に、それぞれ肌の色が違う子どもが3 人。だれも血はつながっていないけれど楽しい家族だ。近所の人に家族の悪口を言われて子どもが脅えると、母親たちは「あの人は(中略)わからないものが怖いの」と話す。養女として迎えられ愛情たっぷりに育ててもらった「わたし」が、ふたりの母親と弟、妹と過ごしたすばらしい日々を語る。多様な家族の形を知るきっかけとなる作品。

原作:アメリカ/8歳から/家族 母親 養子

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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かあちゃんのジャガイモばたけ

『かあちゃんのジャガイモばたけ』表紙
『かあちゃんのジャガイモばたけ』
アニタ・ローベル/作 まつかわまゆみ/訳
評論社
2018

『かあちゃんのジャガイモばたけ』(絵本)をおすすめします。

戦争するふたつの国の境に住む母親は、ふたりの息子とジャガイモ畑を守るために高い塀を築き、日常の暮らしを続ける。ところが大きくなった息子たちは塀の外を知りたくなって出ていき、やがて兄は東の国の将軍に、弟は西の国の司令官になってしまう。そしてついに両国の軍隊は母親の畑にも攻め入るのだが、賢い母親はジャガイモを使って戦争をやめさせる。戦争と平和について考える種をくれる作品。1982 年に出た『じゃがいもかあさん』の、版元と訳者をかえたカラー版。

原作:アメリカ/8歳から/母親 戦争 平和

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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3人のママと3つのおべんとう

『3人のママと3つのおべんとう』表紙
『3人のママと3つのおべんとう』
クク・チスン/作 斎藤真理子/訳
ブロンズ新社
2020.01

『3人のママと3つのおべんとう』をおすすめします。

理想のお母さん像を勝手に作って、うちのお母さんはちっともそれらしくないな、と思ってる人はいませんか? でもね、お母さんだっていろいろなんです。韓国からやってきたこの絵本に描かれている3人のママは、仕事も性格も家庭環境もまったく違います。子どものお弁当の支度だってそれぞれ。あわてて買いに走るママだっています。それでも、3人とも忙しい毎日のなかで子どものことを気にかけています。だから、お弁当をもって野原に遠足に出かけた子どもたちは、それぞれのママに、それぞれの方法で春の息吹をとどけてあげるのですね。読者の心の中にも春の色が広がります。それにしても、パパの存在が見えないのは、日本と同じということでしょうか? (5歳から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年3月28日掲載)

キーワード:母、弁当、多様性、遠足、春、絵本

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わたしがいどんだ戦い 1939年

キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー『わたしがいどんだ戦い1939年』表紙
『わたしがいどんだ戦い 1939年』
キンバリー・ブルベイカー・ブラッドリー/著 大作道子/訳
評論社
2017

『わたしがいどんだ戦い 1939年』をおすすめします。

舞台は第二次世界大戦下のイギリス。内反足のエイダは、「奇形の子は恥だから隠さなくては」と考える無知な母親によって、ロンドンにある家の中に閉じ込められ、学校へも行くことができず、母親の暴力にさらされながら家事奴隷にされている。そのうち、近隣の子どもたちが疎開することになり、エイダも弟のジェイミーと一緒に家を離れたいと強く思い、ひそかに歩く練習を始める。

母親の留守中にうまく疎開児童の群れに紛れ込めたところまではよかったのだが、疎開先では最後まで引き取り手がなく、エイダとジェイミーの世話は、疎開児童を受け入れるつもりがなかったスーザンに押しつけられてしまう。

これまで世間のことは何も知らないエイダが、この環境の中でどう成長していくかが、本書のテーマだ。第二次大戦も影を落としてはいるが、そればかりではなくエイダは、母親の無理解と愛の不在、子どもが苦手なスーザン、なじみのない疎開先の環境、すぐパニックに陥ってしまう自分や自分の中の人間不信とも懸命に戦わなくてはならない。子どもにとっては、こっちのほうが戦争より大きな戦いと言えるだろう。

同じ時代の疎開児童を取り上げた『おやすみなさい、トムさん』(ミシェル・マゴリアン著 中村妙子訳 評論社)も、母親に虐待される子どもと、偏屈でつき合いの悪い引き取り手の出会いを描いていた。この二冊には共通するところがたくさんあるが、本書の著者は自分も虐待の経験者であることから、ちょっとしたことが引き金になってエイダがパニックに陥ってしまうところなど、本書ならではのリアルな描写も登場する。

長い作品だが、最後は明るいので、安心してどきどきはらはらしてみてほしい。

(「トーハン週報」Monthly YA 2017年12月11日号掲載)


フィーフィーのすてきな夏休み

エミリー・ロッダ『フィーフィーのすてきな夏休み』さくまゆみこ訳
『フィーフィーのすてきな夏休み』 チュウチュウ通り3番地

エミリー・ロッダ作 さくまゆみこ訳 たしろちさと絵
あすなろ書房
2010.01

オーストラリアの絵物語。大好評の「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズの第3作。今度は子だくさんのお母さんネズミが主人公。なにしろ子どもが14匹もいて、フィーフィーは毎日大忙し。え、お父さんはって? お父さんは船乗りでたいてい海に出ているのです。そんなお母さんのために、子どもたちは夏休みをプレゼントしようと考えるのですが・・・たしろさんの絵もかわいいし、ロッダさんはほんとにお話を作るのがじょうずですね。
(装丁:タカハシデザイン室 編集:吉田亮子さん、山浦真一さん)