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『いつかきっと』表紙

いつか きっと

アメリカの絵本。家の前には、みんながゴミをポイポイ捨てる場所がある。なんとかしたい。でも、みんなは「やってもむだだ」とか「かわりはしないさ」とか「そのうちなんとかなる」とか言う。でも、子どもたちは少しずつそこを花や野菜が育つ畑に変えていく。絵に描かれたストーリーはそう語っていますが、それだけではない広がりがあります。

アマンダ・ゴーマンは若き詩人。シングルマザーに育てられ、子どもの頃は発話障害に悩まされたがハーバード大学で社会学を専攻し、22歳の時にはバイデン大統領の就任式で自作の詩「わたしたちの登る丘」を朗唱し、世の中を声と言葉の力で変えていこうとしています。

クリスチャン・ロビンソンは、私が大好きな『おばあちゃんとバスにのって』でコールデコット賞銀賞にかがやいた画家です。

(編集:山浦真一さん 装丁:タカハシデザイン室)

 

<紹介記事>

・2023年11月19日 朝日新聞「折々のことば」(鷲田清一さん)

「あいてが大きすぎる」と、みんなはいう。でも、とっても小さいものが大きいものをうごかすことだって、あるんだよ。──アマンダ・ゴーマン

どうしようもないことだとか、やってもむだだとか、そのうちなんとかなるとか、醒めたようにつぶやく人が多いと、米国の詩人はいう。でも、悲しいし怖いし腹も立つけど「どうしていいかわからない」ことに囲まれたら、すぐにあきらめずに、みなで力を合わせ少しでも押し返そうと。絵本『いつか きっと』(さくまゆみこ訳)から

 

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『こうさぎとおちばおくりのうた』表紙

こうさぎとおちばおくりのうた

『こうさぎとおちばおくりのうた』をおすすめします。

4ひきの子うさぎきょうだいが、祭りの花火の音に誘われて、落ち葉行列に参加したり、森に入って歌ったりはねたりするうちに、道に迷ってしまう。一面落ち葉に覆われた森は、様子が変わっていたからだ。助けてくれたのは、ブナの大木「ぶなじい」。冬になる前の美しくかがやく自然の中に入り込んで、子うさぎたちと一緒にささやかな冒険を楽しめる絵本。
5歳から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年11月27日掲載)

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タッカー文 パーシコ絵『グレタとよくばりきょじん』(さくまゆみこ訳 フレーベル館)表紙

グレタとよくばりきょじん〜たったひとりで立ちあがった女の子

グレタ・トゥーンベリさんの本はたくさん出ていますが、これはノンフィクションではなく、グレタさんをモデルにした物語絵本です。

森に暮らす少女グレタのところに、困っている動物たちがやって来ました。欲ばり巨人が森の木を切ってしまい、すみかが荒らされているというのです。欲ばり巨人たちは、家を建てたり工場を建てたりと忙しく、森の動物たちが困っていることには気づきません。

そこでグレタは、たったひとりで「やめて!」と書いた札を持って、巨人に見えるように立っていました。でも、巨人たちは通り過ぎていってしまいます。やがてグレタに気づいた男の子が、グレタのとなりに立ってくれました。そのうちに子どもたちがたくさん集まってきて、死にかけた森を救うために、みんなで欲ばり巨人に抗議をします。

巻末には、子どもたちにもできる提案が書いてあります。

物語絵本になっているので、小さな子どもたちにもわかりやすいと思います。
売上げの3%は、環境保護団体のグリーンピース・ジャパンに寄付されることになっています。

(編集:渡辺舞さん)

 

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ジル・ルイス『白いイルカの浜辺』表紙(さくまゆみこ訳 評論社)

白いイルカの浜辺

イギリスのフィクション。主人公の少女カラは、難読症で学校でいじめにあっています。自然保護活動をしている母親は、野生のイルカを調査中に行方不明ですが、カラはいつか帰ってきてくれるものと信じています。やはり難読症の父親は、細々とエビ漁を続けながらひたすら途方に暮れています。ある日、カラの学校に転校生フィリクスがやってきました。フィリクスは、脳性麻痺で手足が不自由ですが、人一倍の自信家でもあり、ITオタクでもあります。
カラたちの暮らす漁村は、今のところ底引き網漁が禁止されていますが、もうすぐその禁止が解かれることになっていて、カラは、沿岸の海の自然が生物もろとも根こそぎ破壊されてしまうと心配しています。
そんなある日、カラは浜辺にのりあげている白い子イルカを見つけます。白いイルカはプラスチックの網にからまって大けがをしているのです。カラは、まわりの人たちの力を借りて、白いイルカのいのちを助けようと奮闘し、やがてクラスメートや地域の人も巻きこんで、底引き網漁に反対する活動を始めます。
ハラハラどきどきの冒険物語でもあり、親と子の物語でもあり、地域や政治とのかかわりの物語でもあり、大自然とITを対比する物語でもあり、そして何より動物について深く知ることのできる物語です。著者のジル・ルイスは獣医さんでもあるので、動物や自然についての描写は的確でウソがありません。おもしろいです。
(編集:岡本稚歩美さん 装画:平澤朋子さん 装丁:中嶋香織さん)

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<紹介記事>

・「子どもの本棚」(日本子どもの本研究会)2016年2月号

 

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ちきゅうのえほん『空気』さくまゆみこ訳

空気

イギリスの環境について考えるノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。空気とは何か、大気汚染はいるから始まったのか、排気ガスによる汚染、地球温暖化について、破壊されるオゾン層、酸性雨、原発の危険性、大気汚染をはかる方法などについて伝えています。


ちきゅうのえほん『森林』さくまゆみこ訳

森林

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。森林の構造、木のいのち、木はどんなふうに役立っているのか、破壊される熱帯林、森林を破壊するとどうなるのか、森林を守るためにはどうすればいいのか、私たちにできること、などを伝えています。


ちきゅうのえほん『水』さくまゆみこ訳

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。水道の水はどんなふうにできているのか、水はどんなふうに循環しているのか、なぜ水が汚染されてしまうのか、海が汚染されてしまうのか、魚の乱獲の問題、水をじょうずに使うためにはどうすればいいのか、私たちには何ができるのか、などを伝えています。


ちきゅうのえほん『土』さくまゆみこ訳

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。土はどんなふうにつくられているのか、ダムの害、農薬や化学肥料の害、土地の砂漠化を防ぐ方法などについて述べられています。巻末に用語解説がついています。


野生生物

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。環境破壊、環境汚染などで絶滅してしまう生物やについて述べたあと、それを食い止めようとする試みも紹介しています。


人間

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。世界のあちこちで生きている人間が、環境破壊や環境汚染のせいで、危機に瀕していることを伝えています。私たちに今何ができるか、という情報も入っています。


ジーニー・ベイカー『ひみつのもり』さくまゆみこ訳

ひみつのもり

海の中に存在する神秘的な森を、美しいコラージュで表現しました。最初は小さな魚の死など気にしなかった少年が、その森の神秘にふれることによって、変わっていきます。海辺や海の中の表現がとてもすてきです。

ジーニー・ベイカーは、イギリスに生まれますが、オーストラリアに移住してから自然や環境問題をテーマに、精巧なコラージュを使った絵本をたくさん出しています。どれも、私は大好きです。最近の作品は、環境だけでなく社会全体に目を向けて作品をつくっているように思います。
(装丁:則武 弥さん 編集:相馬 徹さん)

オーストラリア原生自然保護協会賞受賞


ローレンス・アンホルト『わすれられたもり』さくまゆみこ訳

わすれられたもり

昔は国じゅうに広がっていた森は、だんだんに小さくなり、まわりは都会になっていきます。忘れられた森で遊ぶのは子どもだけ。ある日、そこで工事が始まることになって、子どもたちはびっくり。このままでは森がなくなってしまう、と思ったとき、自然を大事にする心を取り戻した人たちが・・・。
(装丁:森枝雄司さん 編集:筒井彩子さん)


モリー・バング&ペニー・チザム『いきているひかり』さくまゆみこ訳

いきているひかり

太陽の光や植物の役割と、私たちが生きていることの関係を、ときあかしてくれる絵本です。『わたしのひかり』の姉妹編ですが、こちらもすてきな楽しい絵がついています。ほんとにいい絵なので、ながめているだけでも楽しい。普通の科学絵本や知識絵本とは、そこが違います。ペニー・チザムさんは、長年エコロジーについて教えてきたマサチューセッツ工科大学の教授です。
(編集:岡本稚歩美さん)


やくそく

イギリスの絵本。すさんだ大都会に暮らし、人の財布を盗んで生きていた少女は、ある日、おばあさんから中身のつまったカバンを引ったくろうとします。おばあさんは言います。「おまえさんにやるよ。これを植えるってやくそくするんならね」。

家に戻ってあけてみると、カバンの中身はたくさんのドングリ! でも、それを見た瞬間に少女はなぜか豊かな気持ちになるのです。ねずみ色の街にやがて緑の芽が顔をだし、街の風景も人の気持ちも変わっていくのですが、そのようすを伝える画家の絵がみごとです。最後に約束がつながっていくのもいいな。
(装丁:タカハシデザイン室 編集:江口和子さん)