タグ: 居場所

長倉洋海『さがす』表紙

さがす

『さがす』をおすすめします。

著者がこれまで撮りためてきた世界各地の子どもたちの写真に、自分自身の来し方を重ねた写真絵本。「自分の場所」はどこなのか? 「生きる意味」は何なのか? 今年68歳になる著者は、それをさがして、弾丸のとびかうアフガニスタンやコソボ、極寒のグリーンランド、灼熱(しゃくねつ)のアラビア半島など、さまざまな環境の中でさまざまな生き方をしている人々に出会ってきた。そして今、ようやくその答えを見つけ、「さがしていたものは、いま、自分の手の中にある」と語る。世界を駆けめぐってきた写真家ならではの、その答えとはどういうものなのか? 心にひびく写真の一枚一枚、言葉の一つ一つを味わいながら、読者も一緒に考えてみてほしい。(小学校中学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2020年8月29日掲載)

キーワード:写真、世界、さがしもの

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『天才ルーシーの計算ちがい』表紙

天才ルーシーの計算ちがい

『天才ルーシーの計算ちがい』をおすすめします。

12歳のルーシーは雷に打たれて以来、どんな難問でも解ける数学の天才になった。ある日ルーシーは、親代わりの祖母から、ホームスクールを卒業して学校に行くように言われるのだが、極端な潔癖症だし変な癖もあるのでいじめを受け、すぐに学校が嫌になってしまう。そんなルーシーが、数学以外の世界でも自分の居場所を見つける物語。(小学校高学年から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年7月27日掲載)

キーワード:学校、いじめ、数学(算数)、居場所

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『ひみつのビクビク』表紙

ひみつのビクビク

『ひみつのビクビク』をおすすめします。

異国で暮らすことになった子どもの気持ちを、わかりやすく描いた絵本。不安や恐怖をビクビクという存在で表現している。主人公の少女は、本当に危険なことを避けてくれるビクビクを友だちだと思ってきた。でも言葉もわからない異文化の中に放り込まれると、ビクビクがどんどんふくらみ、少女の気持ちは急速に縮こまってしまう。今後は日本にもこのような子どもが増えてくるだろうと思うと、テーマがタイムリーで、子どもの立ち直る力にも目が向けられている。(5歳から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年4月27日掲載)

キーワード:不安、居場所、絵本

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アラン・グラッツ『明日をさがす旅』(さくまゆみこ訳 福音館書店)表紙

明日をさがす旅〜故郷を追われた子どもたち

この本の主人公は3人。ヨーゼフと、イサベルと、マフムード。ドイツのベルリンに住んでいたユダヤ系のヨーゼフは、ナチの迫害を受けて、1939年にハンブルク港からキューバ行きのセントルイス号に乗り込む。キューバのハバナ郊外に住んでいたイサベルは、政権に反抗する父親が逮捕されそうになり、1994年にボートでアメリカを目指す。シリアのアレッポに住んでいたマフムードは、2015年に空爆で家が破壊され、難民を受け入れてくれるはずの

時代も場所も異なる3人の難民の子どもたちの物語ですが、やがて彼らの運命の糸が思いがけなくも結びついていきます。私たちの想像を超えた危険や迫害にさらされ、恐怖に脅えながらも、子どもたちは、明日への希望を失わず、居場所をさがし、成長していきます。歴史的事実を踏まえたフィクションです。

時間・空間が交錯するのですが、グラッツのストーリーテラーとしての腕がすばらしい。読ませます。

(編集:水越里香さん 装画:平澤朋子さん 装丁:森枝雄司さん)

キーワード:難民、ドイツ、キューバ、シリア、希望、危険、迫害

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<紹介記事>

・「朝日新聞」(子どもの本棚)2019年12月28日掲載

今、地球上にはふるさとを追われ命の危険も覚悟で国外へ移り住まなくてはならない人たちが大勢いる。この物語には、そういう状況にありながらも希望を失わずに生きていく子どもたちの姿が描かれている。ナチスの迫害からのがれるユダヤ人の少年。カストロ政権下のキューバからアメリカに向かう少女。内戦中のシリアからヨーロッパを目指す少年。同時進行でつづられる三つの物語が最後のほうでつながるところが圧巻である。難民問題を考えるきっかけにしたい1冊。(アラン・グラッツ作、さくまゆみこ訳、福音館書店、税抜き2200円、小学校高学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

・「ふくふく本棚」

安田菜津紀さんエッセイ「難民』

 

 

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リード&フェラン『たったひとりのあなたへ』(さくまゆみこ訳 光村教育図書)表紙

たったひとりのあなたへ〜フレッド・ロジャーズからこどもたちへのメッセージ

フレッド・ロジャーズというのは、アメリカで半世紀以上親しまれた子ども番組の制作者でありメインキャストでもあった人。子どもの言うことに耳を傾け、子どもをどこまでも尊重しようとし、ゆっくりとしたペースで番組を進めていきました。自分が小さいときにいじめられたり、孤独だったりした時のことを忘れず、子どもたちには「あなたはあなたのままでいい。あなたらしく生きればいい」と語りかけていました。また社会の偏見を打ち破ろうとした人でもありました。

彼の番組はYoutubeでもいくつか見られるようですので、のぞいてみてください。

たしかに古い感じはしますし、のんびりとした趣ですが、今アメリカでは、フレッド・ロジャーズが見直されているようです。トム・ハンクスが主演する映画もできています。それは今の刺激の多すぎる社会や、トランプ的な存在にノーと言いたい人も増えているからかもしれません。

(編集:吉崎麻有子さん 装丁:森枝雄司さん)

キーワード:多様性、居場所、絵本

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『ソロモンの白いキツネ』表紙

ソロモンの白いキツネ

アンヌ:きれいな、いい表紙絵だとは思うのですが、なんとなく手に取った時からこの絵で先入観を持ってしまって、アニメの『あらいぐまラスカル』のように野生の白狐を飼う話だと思いこんでしまいました。p29~p30の見開きの絵からも、この父親は白人だと思って、なかなかイヌイットの人々の話だと気づけませんでした。10年以上も、学校でも父親とも会話を交わしていない少年が、不意にソロモンのように知恵者のような発言ができるところは腑に落ちません。読んでいくと、最後のほうは「信太の狐」の伝説のようで、前半の野生のキツネの話がイヌイットのおとぎ話に移行していくのかなと思いましたが、リアリティのある感じからそれも違うように思えて、うまく物語の中に入りこめませんでした。

コアラ:絵本のようなつくりだと思いました。読み終わって改めて見ると、絵は最初と真ん中と最後の3枚しかなかったのですが、情景が思い浮かぶような物語で、本の形と内容が合っていると思いました。白いキツネとソルは深いつながりがあるということが、読むにつれてだんだんわかってくるし、父親の悲しみも描かれていて、しみじみと深みのある物語だと思います。じいちゃんとばあちゃんが先住民族だったことや、読み書きができないことが出てくるけれど、それがあまりたくさんは書かれていないので、逆に読み終わってからあれこれと考えをめぐらせることになりました。余韻と深みのあるいい本だと思います。大人にもおすすめですね。

イバラ:最初読んだときは、私もソルが先住民の子どもだということがわかりませんでした。読み直してみて、よくわかりました。p53に「民族」という言葉がありますが、これを「先住民族」としてくれると、最初からもっとくっきりわかったように思います。都会で居心地悪く暮らしていた先住民の父と息子が、ホッキョクギツネの導きで故郷に帰る話なんですよね。祖父母の自然に近い暮らしの中で子どもが癒やされるという話はたくさんありますが、これは、それだけでなく、ソルが文字の読み書きのできない祖父母に文字を教えるという場面もあり、お互いに補いあっていくのがいいですね。父と息子も、故郷に帰ることによって理解しあうようになるんですね。それに、文章がもつイメージが、すばらしく美しいですね。私はタイトルだけ違和感が少しありました。ソルが、キツネは自分のものではない、自由な存在だと言っている場面があるので、「ソロモンの」じゃなくて「ソロモンと」のほうがいいかと思ったんです。

カピバラ:とても静かな印象の物語。言葉少ないけれど、その裏にいろいろなことが隠されていて、あとから物語の背景がわかってくるようなところがあります。小さな作品ではあるけれど、大きなことを伝えようとしていると思いました。黒い髪に黒い目でいじめられるのですが、主人公が先住民族だということは、日本の読者にはわかりにくいと思いました。心に残る作品でした。

リック:とても美しい物語。絵も素晴らしい。読後、じんわりと心に残り続ける、出会えてよかった作品です。ただ、主人公の男の子もお父さんも、ちょっと語りすぎなのが気になります。いじめと戦う必要はない、という主人公の言葉はとてもいいと思いました。これはいじめがメインテーマの話ではないけれど、いじめられている当事者が読んだら、勇気づけられる言葉だと思います。ずっと本棚においておきたい1冊です。

マリンゴ: 絵がとにかく素敵でした。作者がイラストレーターというプロフィールを見て、この人の絵かと思いこんでいたら、違うんですね。途中でそれを知って、実はショックでした(笑)。本の装丁などが、モーパーゴの『だれにも話さなかった祖父のこと』(あすなろ書房)を想起させました。版元も一緒ですものね。旅をするうちに、距離が近くなっていく父と息子、いいなと思います。あと、子どもが、いじめのある学校に行かない、と主張できるようになるところも印象的でした。p49 「あいつらとたたかう必要なんてない。ぼくがいじめてくれってたのんだわけじゃないんだから」という言葉が頭に残っています。1つだけ気になるのは、ホッキョクギツネがすべてのキーワードであることを、ストーリー上の随所で強調されている点。ああ、すべてがつながっているんだなぁ、と読者が気づいて余韻を感じるスペースがないように思えて、わずかに残念でした。

しじみ71個分:今回読んだのは2回目で、1回目はいい話だと思ったけれども、あっさり読んでしまいました。今回、さらりとおさらいしたくらいですが、ページをめくっている間にもじんと心にしみてくる静かな感動がありました。その魅力はなんだろうかと考えました。白いキツネも主人公のソロモンも都会に似合わないものとしてやってきて、一緒に故郷へ帰る旅をする中で、母親を失った後、おかしくなった父親との関係も修復されていくというのもよかったし、また、故郷の祖父母の背景まで理解が深まっていきました。白いキツネは象徴的な存在で、自然と共生するイヌイットの、ソロモンのオリジンの文化や民族の血脈の高貴さが美しく表されていると思いました。学校で黒い目や髪を理由にいじめられたりする日常を脱し、故郷に帰るにつれて、自分の中の民族のルーツに気づいてだんだんと強くなり、彫刻家になりたいという気持ちに気づき、前向きに考えられるようになるという流れが表現されています。気持ちよく感動して読みました。絵も著者が描いたと思っていたのですが、違いましたね。で、絵を見て、車に乗っているお父さんは白人っぽいなと思い、ソロモンはハーフなのかなと思って読んでいました。

さららん:読んでいて、うれしくなった作品です。引き締まった訳がいいですね。ソルの視点ではじまりながら、短い文章の中ですっと第三者の視点に移行し、父親の感情に入っていく。たとえばp9など、その移行が自然で見事です。p13「ソルは息を長く吐きだした。ほんとうにいたんだ。シアトルの波止場のどまんなかに、まいごになった場ちがいなホッキョクギツネが、ぽつんと一匹。まるで、ソルとおなじように」。この最後の文章で、「まるで自分と同じように」とは訳さず、「ソル」と名前を出すことで、読者は主人公の気持ちにうまく近づけるように思います。ほかにも、そのキツネを、波止場の男たちがピーナッツバターのサンドイッチでつかまえるところなどに、さりげないユーモアを感じました。ソルは学校での疎外感、父親は妻を失った悲しみを抱え、二人とも都会の暮らしになじめずにいるのに、それを内側に抱えこんでしまうタイプです。鍵となるホッキョクギツネ(母親の愛の象徴?)の登場により、物語が動きはじめ、自分らしい生き方をとりもどしていくまでが、センスよく描かれています。読後感もさわやか。こんな作品もあるんだよと、本をあまり読んでいないYA世代にすすめてみたいです。個人的には、イヌイットのテーマを掘り下げた、もっと書きこんだ作品も読みたくなりました。

鏡文字:とても美しい物語だと思いました。絵がきれいというだけでなく、文章から惹起されるイメージが視覚的にきれいです。白いキツネ、森、オーロラ・・・・・・。冒頭、ソルがソロモンの愛称だとわからなかったんです。これは、英語圏ではあたりまえのことなんでしょうか。

イバラ:p33に出てきます。ソロモンの愛称がソルだって。訳者の千葉さんがここで入れたんでしょうね。

鏡文字:p33というと、ほぼ中間なので・・・・・・。まあ、見返しをちゃんと見ればすむ話でしょうが。12歳というのも、見返しには説明がありますが、そこを読まずに本文を読み始めてしまい、人物設定を理解するのに戸惑ったこともあって、冒頭部分がちょっと入りづらかったです。後半はテーマが盛りだくさんです。先住民のこと、いじめのこと、文字のこと・・・・・・。いじめのことは前半でも触れられますが、先住民=いじめられる対象、ということでいいのかな、というのが少し疑問でした。だれ一人、味方してくれなかったのでしょうか。ある種、象徴的作品ということだからなのかもしれませんが、どことなく二項対立的に描かれているようにも思えて。美しい作品ですが、物語として読むと少し舌足らずで、詩的で象徴的な作品とすると、やや饒舌かな、という印象です。

ハル:コアラさんもおっしゃっていましたが、私も今改めて見直して、あれ? こんなに絵が少なかったんだっけ、と思いました。全ページに絵が入っていたような感覚で、文章もイラストも、心に視覚的な余韻が残るような、味わい深い本だなぁと思います。今回の3冊の中では、このお話は、異なる世界、文化が受け入れられなかった話ですね。今いる場所が自分に合わない場合、逃げるのでも、戦うのでもなく、自分に合う場所を選択していくこともできるんだというメッセージは、とても大事なことだと思います。それでも、異なる文化との断絶ではなく、少しずつ変わっていくのではないか、これから始まってくのではないかと思わせる、優しいラストでした。

すあま:スターリング・ノースの『あらいぐまラスカル』のように野生のキツネを飼って最後に野生に戻す、という話かと思って読み進めていったら、キツネには名前もつけずにあっさりと山に帰したのが意外な展開でした。でも、ふるさとがアラスカであるということが、なかなかわからなかったので、日本の子にはどこの話なのかぴんとこないのではないかと思いました。アラスカとシアトルの位置関係もわかりにくいのでは? 登場人物が少なく、文章も少ないので、長編がまだ読めないような中学生にもすすめられると思いました。読後感もよかったです。

西山:いま、うかがって、ああそういう読者層が想定できるのかと思いました。展開が早いのに驚きつつ読んで、絵本ではないけれど、たっぷりのドラマがあるはずだけれど、文章は少ないし・・・・・・と、だれがどのように楽しむのかイメージできなかったんです。半ば、散文詩を味わうような感じでさらさらぁっと読んでしまった感じです。

まめじか:「まいごになった場ちがいなキツネ」と、都会になじめなかった母親、学校で居場所のないソルの姿が重なります。「子どもの人生だって、そんなに気楽で楽しくなんかない」(p34)というセリフには、深くうなずかされました。「オーロラのなかにはかげもあって、そこには死者の魂が宿っているとも信じられている」(p58)という文章をはじめ、全体をとおして人生の美しさと苦さを見据えています。作者のまなざしの深さを感じました。母親とキツネは特別な絆で結ばれていたと、イヌイットの祖母は語りますが、ジャッキー・モリスの『こおりのなみだ』(小林晶子/訳 岩崎書店)も、人と動物の魂の結びつきを描いています。これは、クマの赤ん坊が人の子として育てられる話です。

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エーデルワイス(メール参加):12歳のソロモンの心の動きがていねいに描かれていますね。ソルがおばあちゃんに「はじめるのに遅すぎることはないよ」というところが、とてもいい。今年読んだ本のマイベストになりそうです。

(2019年11月の「子どもの本で言いたい放題」)

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