タグ: 昔話

『クリスマスの小屋』表紙

クリスマスの小屋〜アイルランドの妖精のおはなし

『クリスマスの小屋』(読み物)をおすすめします。

捨て子だったオーナは長じて働き者になったが、自分の家はなく家族はいない。飢饉に襲われたあるクリスマスイブのこと、年老いたオーナは、食べものは子どもたちに譲ろうと自分は死を覚悟し、丘に登る。すると小さな妖精たちがやってきて、小屋を建ててくれる。それからは、ホワイトクリスマスになるたび、その小屋が孤独な者、悲しみを抱えた者を受け入れてくれるようになったという。すぐれたストーリーテラーが、幼い頃に乳母から聞いた昔話を再話している。挿し絵も幻想的な雰囲気を伝えている。

原作:アメリカ/9歳から/クリスマス、妖精、昔話

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『チンチラカと大男』表紙

チンチラカと大男〜ジョージアのむかしばなし

『チンチラカと大男』(絵本)をおすすめします。

知恵が回るので有名なチンチラカは、気まぐれな王様に、魔の山にすむ大男から黄金のつぼや、人間の言葉を話す黄金のパンドゥリ(楽器)を取ってくるように次々命じられる。チンチラカがそれに成功すると、今度は大男をつかまえてこいとの命令が。チンチラカは大男をなんとかだまして箱に入れて連れてくるのだが、王様が箱を開けてしまい、大男は王様や家来を飲み込んでしまう。怖いところもあるがハッピーエンドなのでご安心を。コーカサス地方にある国ジョージアの昔話に、ダイナミックで魅力的な絵がついている。

3歳から/知恵 大男 王様 ジョージア

 

Chinchiraka and the Giant

A folktale from Georgia in the Caucasus unfolds
in this dynamically illustrated picture book.
Chinchiraka, the youngest of three brothers known for his wisdom, is commanded by a moody king to snatch a golden vase from a giant who lives inside a magic mountain. When Chinchiraka succeeds, he is told to go take a golden panduri instrument that speaks human language. After that, he must go and catch the giant himself. Chinchiraka somehow tricks the giant into a box and catches him, but when the giant comes out of the box, he gobbles up the king and his servants! Scary parts are balanced by a happy ending, in which Chinchiraka becomes the king. (Sakuma)

  • text: Katayama, Fue | illus. Suzuki Koji
  • BL Shuppan
  • 2019
  • 32 pages
  • 29×22
  • ISBN 9784776409274
  • Age 3 +

Wisdom, Giant, King, Georgia

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

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『まめつぶこぞうパトゥフェ』表紙

まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャの むかしばなし

『まめつぶこぞうパトゥフェ』(絵本)をおすすめします。

パトゥフェは、体は豆粒ぐらい小さいのに、なんでもやろうとする元気な男の子。お母さんにたのまれたおつかいも、踏みつぶされないように「パタン パティン パトン」と歌いながら歩いていき、ちゃんとなしとげる。ところが、お父さんにお弁当を届けに行こうとしてキャベツの葉の下で雨宿りしているとき、牛に飲み込まれてしまう。さあ、どうしよう。パトゥフェは牛のお腹の中でも歌って、お父さんとお母さんに居場所を知らせ、牛のおならとともに外に飛び出す。絵も文もゆかいで楽しい。

3歳から/昔話 牛 おなら おつかい

 

The Pea-sized Boy Patufet

ーA Folktale from Catalonia, Spain

Patufet is an active little boy who tries to do everything even though he is pea-sized. When his mother asks him to go and buy some saffron, he successfully fulfills his mission. To make sure no one steps on him, he sings “Patan, patine, paton” the whole way there. When he goes to take lunch to his father, however, it begins to rain. Patufet shelters under a cabbage leaf, but is swallowed by a cow that eats the cabbage. What does he do? The resourceful boy sings loudly inside the cow’s stomach so that his parents can find him and leaps out when the cow farts. The illustrations and text are fun and entertaining. (Sakuma)

  • Text: Uno, Kazumi | Illus. Sasameya, Yuki
  • BL Shuppan
  • 2018
  • 32 pages
  • 29×22
  • ISBN 9784776408628
  • Age 3 +

Folktale, Cow, Fart, Errand

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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ノウサギの家にいるのはだれだ?〜ケニア マサイにつたわるおはなし

ノウサギが外から戻ってくると家の中にはだれかがいる。だれだと問うと、そいつが「おれは強くて勇敢な戦士だぞ。サイを張り倒すことだって、ゾウを踏みつぶすことだって、ちょいのちょいだ」というので、ノウサギは怖くなって、ほかの動物に助けを求める。ジャッカル、ヒョウ、サイ、ゾウが助けにくるものの、みんな怖くなって逃げていく。最後にカエルがやってきて、とうとう中にいたものが最後にわかって、みんなで大笑い。

斎藤さんの絵がとてもいいので、見てください。
(編集:檀上聖子さん 装丁:中浜小織さん)

 

〈マサイの人たちに伝わる昔話〉(あとがき)

本書は、東アフリカに暮らすマサイの人たちに伝わる昔話で、勇敢な戦士であることが重んじられていたマサイの人たちの価値観が色濃く反映されているように思います。力の弱い者が家をのっとられて、ほかの動物に加勢を頼みます。加勢してくれる動物たちは、しだいに大きく強くなっていきますが、中から聞こえてくる大言壮語にみんな怖気づいてしまいます。偉そうに声を張り上げていた者の正体が最後にわかると、みんながびっくりする、という展開がとてもゆかいですね。

マサイの人たちは、ケニアとタンザニア北部に暮らしています。もともとは遊牧民ですが、今はあちこちに動物保護区や国立公園ができてしまい、自由に動き回ることができなくなっています。伝統的な文化や風習を重んじる人も多いのですが、なかには『ぼくはマサイ〜ライオンの大地で育つ』(さくま訳 さ・え・ら書房)の著者ジョゼフ・レマソライ・レクトンさんのように外国に留学して政治家になった人もいます。

マサイの昔話は、以前『ウサギのいえにいるのはだれだ?』(ヴェルナ・アールデマ文、レオ・ディロン&ダイアン・ディロン絵 やぎたよしこ訳 ほるぷ出版)という絵本が日本でも翻訳出版されていました。登場する動物たちはほぼ同じですが、マサイの人たちが上演する劇という形をとっていて、話そのものももう少し複雑なので、本書とは趣がずいぶん違います。本書のようなシンプルな昔話をもとにして、いろいろなバージョンが生まれてきたのだと思います。

同じような昔話は、ロシアにもあります。『きつねとうさぎ』(ユーリー・ノルシュテイン絵 フランチェスカ・ヤールブソワ絵 こじまひろこ訳 福音館書店)という絵本では、家をのっとられたのはウサギで、のっとったキツネを追い出そうとします。東アフリカとロシアではずいぶん離れているし、文化も違うのに、同じようなお話が伝わっているのは、おもしろいですね。

本書では斎藤隆夫さんが、東アフリカの風土や動物たちの特徴と魅力をじゅうぶんに生かした、とてもおもしろい絵を描いてくださいました。マサイの人たちが暮らすサバンナに行ったつもりで、お話を楽しんでいただければ幸いです。

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『巨人の花よめ』表紙

巨人の花よめ〜スウェーデン・サーメのむかしばなし

『巨人の花よめ』をおすすめします。

スウェーデンの少数民族に伝わる昔話の絵本。サーメ人の美しい娘チャルミが、山の恐ろしい巨人に結婚を迫られる。チャルミは知恵を働かせて巨人の手から逃れようとするが、なかなかうまくいかない。とうとう婚礼の宴が開かれ、巨人もお客も浮かれているすきに、テントの中に身代わりの丸太を置いて、チャルミは逃げ出す。そして川の氷に大きな穴を掘り、村人を困らせていた巨人を退治する。現地に取材した画家の絵がダイナミック。

5歳から/サーメ 巨人退治 知恵

 

The Bride of the Giant

A Swedish to Japanese translator retells the legends of the Saami people of Lapland in Sweden, and an artist provides wonderful illustrations researched on location. When a giant who lives in the mountains falls in love at first sight with a beautiful Saami girl, Charmie, she wracks her brains to find a way to escape from him but things don’t go well. Finally their wedding banquet is held, and she takes advantage of the giant and his guests making merry to dress a log in her bridal clothes and make her getaway. She digs a large hole in the ice on the river to exterminate the giant that had caused so many problems for the villagers. (Sakuma)

  • Text: Hishiki, Akirako | Illus. Hirasawa, Tomoko
  • BL Shuppan
  • 2018
  • 32 pages
  • 30×22
  • ISBN 978-4-7764-0836-9
  • Age 5 +

Saami, Giants, Wisdom

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2019」より)

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『ヴォドニークの水の館』表紙

ヴォドニークの水の館 〜チェコのむかしばなし

『ヴォドニークの水の館』をおすすめします。

チェコ語の翻訳者が再話し、スロバキア在住の画家が絵をつけた昔話絵本。貧しさに希望を失って川に身を投げようとした娘が水の魔物ヴォドニークにさらわれ、水中の館を掃除することになる。娘はやがて、館にたくさんあるつぼの中に溺れた人たちの魂がとらわれていることに気づき、その魂をすべて解放し、自分も逃げて地上にもどる。女の子の冒険物語としても楽しめるし、緑色でカッパにも似たヴォドニークが不思議で、いろいろ工夫のある幻想的な絵もすばらしい。
小学校低学年から

(朝日新聞「子どもの本棚」2021年4月24日掲載)

チェコ語の翻訳者が再話し、スロバキア在住の画家が絵をつけた昔話絵本。貧しさのあまり身投げしようとした娘が、ヴォドニークという水の魔物にさらわれて水中の館で働かされる。娘はやがて館を脱出し、囚われていた他の魂も解放して生の世界に帰っていく。生と死と再生の物語ともとれるこの絵本では、窓からのぞく娘の目の前を魚が泳いでいる表紙がまず読者の目を引くが、絵は場面展開の仕方も周到に考えられ、娘の姿も、水中の館にいるときは静、行動を起こして陸に上がるときは動と、描き分けられている。
視点や色彩の変化の付け方、チェコらしい刺繍の服やつぼの模様といった細部にも十分に目配りがされ、昔話の世界を見事に伝えている。

(産経児童出版文化賞/美術賞選評 産経新聞2022年05月05日掲載)

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『オノモロンボンガ〜アフリカ南部のむかしばなし』(さくま訳)の表紙

オノモロンボンガ〜アフリカ南部のむかしばなし

まだこの世界が若かった頃、動物たちは川のほとりでみんな仲良く暮らしていましたが、やがて飢饉に襲われて食べるものがなくなってしまいます。そんなときカメがおいしい実がたくさんなる木の夢を見て、人間のおばあさんをたずね、その木が本当にあって、木の名前を当てると実をもらえると知り、その名が「オノモロンボンガ」だと聞いて、そこまで歩いて行く決心をします。途中で出会ったさまざまな動物がカメより自分のほうが足が速いし賢いと主張して自分こそ一番乗りしようと走って行きますが、みんな何かの拍子に木の名前を忘れてしまい、うまくいきません。

みんなが飢えている時にあらわれる魔法の木の名前をあてる、というモチーフの昔話はアフリカの各地にあり、これもその1つで、原著はフランスで出版されました。私はこれまでに類話の絵本を『ごちそうの木〜タンザニアのむかしばなし』(ジョン・キラカ再話 西村書店)、『ふしぎなボジャビの木』(ダイアン・ホフマイアー再話 ピート・フロブラー絵 光村教育図書)と、2冊訳していて、これが3冊目です。比べてみるのもおもしろいです。

ジョン・キラカさんが来日したときに『ごちそうの木』について話をうかがったのですが、キラカさんはほかの地域にも同じような昔話があることは知らず、自分が直接村で聞き取ったタンザニアの昔話を絵本にしたのだとおっしゃっていました。

(編集:鈴木真紀さん 装丁:城所潤さん+館林三恵さん)

◆◆◆

〈紹介記事〉

・「朝日小学生新聞」2021年12月2日

『オノモロンボンガ』朝小書評

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『まめつぶこぞうパトゥフェ』表紙

まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャのむかしばなし

『まめつぶこぞうパトゥフェ〜スペイン・カタルーニャのむかしばなし』をおすすめします。

パトゥフェは、豆粒くらい小さいけれど、なんでもやろうとする男の子。踏みつぶされないように「パタン パティン パトン」と歌ってみんなの注意を引きながら歩いていく。ところが、お父さんにお弁当を届けにいく途中、牛に食べられてしまったから、さあ大変。ゆかいで楽しい絵本。(幼児から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年12月29日掲載)

キーワード:絵本、スペイン、牛、昔話

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ビヴァリー・ナイドゥー『ノウサギのムトゥラ〜南部アフリカのむかしばなし』さくまゆみこ訳 岩波書店

ノウサギのムトゥラ〜南部アフリカのむかしばなし

南部アフリカに暮らすツワナ人に伝わるノウサギの昔話集。南アで生まれ育ったナイドゥーさんが、再話しています。

どのお話でも、体の小さなノウサギが、知恵を使って体の大きな動物たちを出し抜きます。

ナイドゥーさんによる「日本の読者へ」という序文もついています。またフロブラーさんの挿絵は、ノウサギのムトゥラのキャラクターをとてもよく表現していて、ユーモラスです。

入っている昔話は、以下の8つです。

1.ゾウとカバのつなひき
2.ノウサギのしっぽ
3.にごった水たまり
4.ノウサギとカメの競走
5.恋するライオン王
6.夕ごはんはどこへ?
7.角を生やしたノウサギ
8.親切のお返し

この本、当初は昨年秋に出るはずだったのですが、翻訳権の取得に時間がかかり、ようやく出ました。

(編集:松原あやかさん)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

<訳者あとがき>

この本は、アフリカ南部のツワナの人たちに伝わる昔話を、ビヴァリー・ナイドゥーさんが再話したものです。ツワナの人たちは、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ共和国にまたがって暮らしています。アフリカ大陸は、かつてヨーロッパの国々が地図上で線引きをして国を分け、植民地にしていたので、一つの国の中に多様な民族が暮らし、一つの民族がいくつもの国に分かれて住んでいるのです。ちなみにボツワナというのは、「ツワナ人の国」という意味で、国民の九割がツワナ人ですが、南アフリカ共和国には、それより多い数のツワナ人が住んでいます。

アフリカの昔話には、いたずら者の動物がよく登場してきます。たとえば、日本でも知る人が多いクモのアナンシは、神さまから指示されたものを、ほかの動物をだまして集めたりしています。アナンシはもともとはガーナのアシャンティ地方の昔話に登場するキャラクターでしたが、それが近隣の国の人々にも伝わったり、奴隷貿易の影響でアメリカや西インド諸島にも伝わりました。

世界各地の昔話や神話に登場する、こうしたいたずら者を、文化人類学などではトリックスターとよんでいます。トリックスターは、いたずらや思いがけない行動をして、社会のきまりや力の関係を混乱させます。でも、それだけではなく、トリックスターは新たな価値をつくりだす役割も担っています。まわりの者たちをしょっちゅうこまらせているけれど、どこか憎めない——トリックスターは、そんな存在なのです。

私は、アフリカ各地に伝わる昔話の本をたくさん収集していますが、そうした本にトリックスターとして登場する機会がいちばん多いのが、ノウサギだと思います。カメ、クモなどがトリックスターになるお話もあります。

本書に主人公として登場するノウサギのムトゥラも、そんなトリックスターだと言えるでしょう。身体は小さいし力も弱いのに、知恵(ときには悪知恵)を使って、ゾウやライオンやカバなど力の強い大きな動物たちを出し抜いたり、だましたりしています。力の強い動物にとっては、ノウサギはやっかいないたずら者でしょうが、いつもいじめられている、力の弱い小さな動物たちにとっては、胸がすっとするヒーローかもしれません。でも、時には、ノウサギがもっと弱い動物(たとえばカメ)にへこまされたりするのも、おもしろいところです。日本でもよく知られている「ウサギとカメ」に似たようなお話も、この本の中には入っています。

ムトゥラというのは、ツワナ語でノウサギという意味ですが、すべてのノウサギをさすのではなく、固有名詞として使われています。原書では、ほかの動物たちもツワナ語で登場していた(たとえばカバはクブ、ジャッカルはポコジェー、カメはクードゥというように)のですが、日本の読者にはなじみがないので、ムトゥラ以外は、日本語にしました。

動物が登場するこうした昔話は、じつは人間のことを語っているといいます。お話の中に人間のだれかを登場させると、「ばかにされた」と思ったり、「嫌みを言われた」と思ったりする人も出てきて、村のなかの人間関係がうまくいかなくなる場合があるので、動物の姿を借りて間接的に語るのだそうです。

アフリカ大陸の多くの地域では、「読む・書く」の文字の文化よりも「語る・聞く」の声の文化のほうが尊重されてきました。民族や村の歴史や、叙事詩なども、語り部の人たちが語り、みんなでそれを聞くことによって、伝えられてきたのです。地域によっては「語り」を職業とする人たちがいましたし、夜になると人々が集まって語り合ったり、年配者が子どもたちに昔話を聞かせたりすることも、よく行われていました。けれども、今はアフリカにもテレビやスクリーンメディアが入りこみ、そうした伝統は失われかけています。

昔は、欧米の学者の人たちが、伝承の物語や昔話を集めて出版していましたが、通訳を介しての記録だったり、欧米の昔話風に再話されることも多かったようです。今は、自分たちの文化の源が消えていくことを心配したアフリカの人たちが、あちこちを回って伝承の物語を自分たちで集めるようになりました。たとえば大学の先生が学生たちに、長い休みの期間に祖父母や長老から昔話を聞いて書きとめるようにという宿題を出し、集まったものをまとめて本にするなどということも行われています。またタンザニアの絵本作家ジョン・キラカさんのように、あちこちの村をまわってお話じょうずの人たちから昔話を聞き、それに基づいて絵本をつくっている人もいます。現地のようすをよく知る人たちが集めたり再話したりした本のほうが、語られるときの雰囲気なども伝わってくるので、より楽しく読めるのではないかと私は思っています。

本書も、子どものころ聞いた昔話が楽しかったことを思い出したナイドゥーさんが、今の子どもたちに向けてその楽しさを伝えようと、再話して本にまとめたものです。ナイドゥーさんの作品は、人種差別がはげしかったアパルトヘイト時代の南アフリカの子どもたちを主人公にした『ヨハネスブルクへの旅』(もりうちすみこ訳 さ・え・ら書房)や『炎の鎖をつないで〜南アフリカの子どもたち』(さくまゆみこ訳 偕成社)、父親を殺されてナイジェリアからロンドンへ脱出する子どもたちを描いた『真実の裏側』(もりうちすみこ訳 めるくまーる)が、これまでに日本でも翻訳されていますが、昔話の再話の本が日本で紹介されるのは本書がはじめてです。

ナイドゥーさんは、黒人差別のはげしい時代に南アフリカのヨハネスブルクで生まれました。子どものころは白人だけの学校に通っていたのですが、そのころは目隠しをつけて走る馬みたいに周囲のことが見えていなかったそうです。大学生のときに目隠しをはずすことができたナイドゥーさんは、人種差別はおかしいと思い始め、政府に反対する運動に加わって逮捕され、牢屋に入れられた経験をもっています。その後イギリスに亡命して作家となりましたが、最初の作品『ヨハネスブルクへの旅』は、ネルソン・マンデラが牢獄から釈放されて自由になった一年後の一九九一年まで、南アフリカの子どもたちが読むことはできませんでした。ナイドゥーさんはほかにも、アフリカの子どもが抱える困難や、アフリカの文化や暮らしを伝える本を書いています。私は二〇〇八年にケープタウンで開かれたIBBYの世界大会でお目にかかり、親しくお話をさせていただきました。今回も、お願いすると快く「日本の読者のみなさんへ」というメッセージを寄せてくださいました。

私は「アフリカ子どもの本プロジェクト」というNGOにかかわって、仲間といっしょにアフリカの子どもたちに本を送ったり、ケニアに設立した子ども図書館を支えたり、日本で出ているアフリカ関係の子どもの本を残らず読んで、おすすめ本を紹介したり、おすすめ本をみなさんに見てもらう「アフリカを読む、知る、楽しむ子どもの本」展を開いたりしています。この本を読んで、アフリカの昔話っておもしろいな、と思った方は、「アフリカ子どもの本プロジェクト」のウェブサイト(http://africa-kodomo.com)を開いて、「おすすめ本」の中の「昔話」のところをクリックしてみてください。そこにも、おすすめの昔話絵本や、昔話集がのっていますよ。

二〇一八年冬           さくまゆみこ

 

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さくまゆみこ編訳『キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし』岩波書店

キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし(岩波少年文庫版)

あまたあるアフリカの昔話の中から、私が「ふしぎ」をキーワードにおもしろい話を選び出し、翻訳したもので、以下の13の昔話が入っています。

・恩を忘れたおばあさん(ガーナ)
・山と川はどうしてできたか(ケニア)
・魔法のぼうしとさいふと杖(チャド)
・カムワチと小さなしゃれこうべ(ケニア)
・動物をこわがらせた赤ん坊(セネガル)
・力もちイコロ(ナイジェリア)
・キバラカと魔法の馬(スワヒリ)
・ヘビのお嫁さん(タンザニア)
・悪魔をだましたふたご(リベリア)
・ニシキヘビと猟師(コートジボワール)
・ワニおばさんとの約束(ナイジェリア)
・村をそっくり飲みこんだディキシ(ボツワナ)
・あかつきの王女の物語(スワヒリ)

*スワヒリというのは、スワヒリ語で語り伝えられてきた物語という意味です。ロンドンでお目にかかったこともあるヤン・クナッパートさんが編集したMYTHS & LEGENDS OF THE SWAHILIという本から選んだ昔話なので、こうなっています。

*この本は、もともと冨山房で出版されていました。原稿を冨山房に持ち込んだ時の私はフリーの翻訳者でしたが、なかなか本にならないので、何度も問い合わせをしているうちに、なぜか編集者として冨山房に入社することになりました。そして編集者の私が最初に手掛けた本が、この作品だったのです。

(編集:須藤建さん)

ちなみに、冨山房版はこちら

 

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<あとがき>

アフリカというと、どこかとても遠いところで、人びとの生活や考え方も、日本人とは全然違うと思っている方もあるかもしれません。たしかにアフリカは地理的にも近くはないし、私たちとは違った文化や風習ももっています。けれどもそれ以上に、同じ地球の上に暮らしている人間として、共通していることもたくさんあります。

たとえば、日本でも昔は、子どもたちが、いろりばたで、おじいさんやおばあさんの話す物語に耳を傾けました。アフリカでも、夜になると、子どもたちは火のまわりに集まって、お年寄りやおとなが話してくれる物語を聞きます。そんな時、物語に引きこまれて夢中になった子どもたちの目が、きらきら輝いているのは、世界のどこでも同じだと思います。

この本には、アフリカ大陸のあちこちで語られてきた物語の中から、魔法の話や、ふしぎな精霊や魔神の出てくるものを集めて、まとめてあります。

どの物語が、どの国に住んでいる人たちのものか、ということについては、八頁に載っているアフリカの地図を見てください。

ただし、スワヒリの物語と書いてあるものについては、ちょっと説明がいるでしょう。地図を見てもおわかりのように、スワヒリという国はありません。スワヒリの物語というのは、スワヒリ語という言語で語り伝えられてきた物語、という意味です。スワヒリ語は、アフリカのバンツー語に、アラビア語の影響が入ってできた言葉です。もともとは、東アフリカのインド洋沿岸で話されていましたが、今ではもっと広い地域に普及しています。

スワヒリの物語を読んで、『千夜一夜物語』などのアラビアの物語を連想した方もあるでしょう。それも、もっともです。スワヒリ人と呼ばれる人びとは、アラビア文化の影響を強く受けています。昔、アラビアの人たちは、紅海やインド洋を越えて海からアフリカへ入り、また砂漠を越えて、北アフリカや西アフリカまでも入って行きました。ですから、チャドの物語『魔法のぼうしとさいふと杖』にスルタンが出てくるのですね。

テレビやラジオや映画など、受身の娯楽が少ない地域には、自分たちで積極的に娯楽をつくり出していく良さがあります。そこでは、踊りや歌や楽器の演奏などと並んで、物語(ストーリーテリング)が人びとの生活になくてはならない楽しみになっています。

アフリカでは物語といっても、本を棒読みするように抑揚なく話すわけではありません。歌を混じえたり、物まねや踊りを入れたり、身ぶり手ぶりを加えたりしながら話すのです。

またアフリカには、職業的な語り部(西アフリカではグリオ、ジェリ、ジャリなどと呼ばれています)もいます。この人たちは、物語を聞かせることを専門の仕事にしていて、民族の歴史や、王の系譜や、伝統的な行事歌や褒め歌、叙事詩などを語り聞かせています。自分で楽器を弾きながら、それにあわせて歌い語りをすることも多いようです。また聞き手のほうも、合いの手を入れたり、かけ声をかけたり、熱が入ってくれば踊り出したりします。

アフリカの日常生活の中では、たいてい一日の仕事が終わって日も暮れたころに、語りが始まります。「昼間話すと、語り手の母親に死が訪れる」という言い伝えがあって、物語は夜のものと決まっている地方もあります。

時が夜というのは、大事なことかもしれません。夜の闇は、人間の想像力をとき放ち、昼間の太陽の下では見ることのできない世界へと、私たちを導いてくれます。昼間はふつうの木が、夜見るとふしぎな力をもった魔物のように思えたことはありませんか? 人間がものを思い描いたり、想像したりする力は、夜の闇の中で無限に広がってゆくものです。この本の中に出てくる、ふしぎな力をもった魔性の者たちも、きっとそうした闇の中から生まれてきたのでしょう。

特に、テレビとかラジオもなく、電灯さえないようなところでは、人間がむき出しの自然に接することも多くなり、夜のもつ魔力も、都会とくらべるとずっと強いといえそうです。

一九七五年、私はナイジェリアで、たまたま夜行の貨物列車で旅をしなければならなくなったことがありました。その時の風景は、今でも忘れられません。ナイジェリアは、当時アフリカではいちばん人口の多い国だったのですが、夜の風に吹かれながら屋根なしの貨車に乗っていると、まるで無人の荒野を走っているような気がしたものです。日本なら、へんぴなところでも、必ずどこかに人家のあかりが見えたり、走ってゆく車のヘッドライトが見えたりして、ああ、あそこに人がいるんだな、とわかりますが、そのころのナイジェリアは、まだ大都市以外には電灯がなく、もちろん、照明看板やネオンが見えるわけではありません。夜行貨物列車は、闇の海の中を、ゴトンゴトンとどこまでも走っていきました。あの時は、だれにもじゃまされずに、夜そのものと向かいあっているような気がしましたし、この本に出てくるようなふしぎなものたちが、あそこにもここにも、身をひそめているように感じたものです。

その後、私は東京であわただしい毎日を送っています。あの時のように、夜のもつふしぎな力を感じることも少なくなってしまいました。都会というのは、たしかに便利ですが、その反面、私は大事な忘れ物をしてしまっているようです。

読者のみなさんには、なるべくなら夜、窓をあけ放って、そして、アフリカのおじいさんやおばあさんに話してもらっているような気持ちになって、この本を読んでいただければ、と思っているのですが……。

本書は最初、冨山房から出版されて版を重ねましたが、その後長いこと入手できなくなっていました。思えば、この本の出版がきっかけになって、様々な出会いがありました。「アフリカ子どもの本プロジェクト」というNGOも、そんな出会いが重なって生まれたものです。このNGOでは、アフリカの子どもたちが必要としていれば本を送ったり、ケニアに二つある図書館を支えたり、日本の子どもたちに本を通してアフリカの文化や子どもの状況を伝えたりする活動を、仲間といっしょに行っています。私はその後も、さまざまなアフリカについての本を翻訳してきましたが、この本はそんな活動の源にあるような、自分にとってはとても大事な本です。今回、岩波書店さんが再刊してくださることになり、とてもうれしく思っています。気に入ってくださって、しっかり見てくださった須藤さん、ありがとうございました。

二〇一八年十一月     さくまゆみこ

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ジョン・キラカ『ごちそうの木』さくまゆみこ訳

ごちそうの木〜タンザニアのむかしばなし

最初はスイスで出た絵本です。ドイツ語で出たのですが、キラカさんはもともと英語でテキストを作られていたので、英語版を中心にして訳しました。

キラカさんがご自分で村人から聞き取った昔話を絵本にしています。キラカさんの最初の絵本『チンパンジーとさかなどろぼう』(若林ひとみ訳 岩波書店)には、伝統的な衣装を着た動物たちが登場しますが、この絵本に登場する動物たちは、現代風の衣装を着ています。「なぜ?」とたずねてみると、今はタンザニアの田舎でも伝統的な衣装を着る人が少なくなり、子どもたちに絵本を見せると、「どうしてこんな変わった服を着ているの?」と言われるからだと、おっしゃっていました。

キラカさんは来日の際、この絵本のストーリーテリングをあちこちでしてくださいました。ご覧になったみなさんは、アフリカのストーリーテリングが パフォーマンスだということを目の当たりにして、その楽しさを充分味わうことができたのではないかと思います。

この昔話の基本形はアフリカ各地にあり、たとえば光村教育図書から出た『ふしぎなボジャビのき』(ダイアン・ホフマイアー文 ピート・フローブラー絵 さくま訳)も、とても似た昔話を絵本にしたものです。ほそえさちよさんのご尽力で、西村書店が2017年夏のキラカさんの来日に間に合うように出してくださいました。
(書き文字デザイン:ほんまちひろさん 編集:植村志保理さん)

*厚生労働省:社会保障審議会推薦 児童福祉文化財(子どもたちに読んでほしい本)選定

◆◆◆

<訳者あとがき>
アフリカには、まだ農業が天気に左右されているせいで、日照りがつづくと飢える人が出てしまう地域があります。それを考えると、この絵本にあるような「ごちそうの木」の存在は夢であり、あこがれをもってくり返し語られてきたのもうなずけます。これはタンザニアの昔話ですが、類話はアフリカ各地にあって、南アフリカの作家と画家による絵本『ふしぎなボジャビの木』(光村教育図書)も、同じテーマをあつかっています。
アフリカの多くの地域は文字をもたず、歴史や叙事詩や物語は口伝えで語りつがれてきました。そういう社会では、きちんと記憶することが生死にかかわるくらい重要だったのかもしれません。
またここにも、アフリカ各地の昔話に姿を見せるノウサギが登場しています。英語の原書では「ウサギ」となっていましたが、作者に確認したうえで「ノウサギ」と訳しました。ノウサギは、体は小さいのに知恵のある存在で、大きな動物をぎゃふんといわせるトリックスターでもあります。
おとなたち(とくに祖父母)が1日の仕事が終わった夜、子どもたちに昔話を語って聞かせ、そのなかで社会の決まりや価値観や歴史を伝えていくという文化が、アフリカにはあります。こうしたお話の時間は、歌や踊りが入ることもある楽しいひとときです。しかし、近代化の波におされて、今はその文化も消えていこうとしています。そのため、学者だけでなくキラカさんのような方も、故郷の昔話や伝説を集め、語りの楽しさもふくめて子どもたちに伝えていこうと努力しているのです。
ところで、「ン」で始まる言葉や人名が、アフリカにはあります。「ントゥングル・メンゲニェ」は、「びっくりするほどすばらしいもの」という意味で、こうした語りのなかでだけ使われる言葉だそうです。

さくまゆみこ

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さくまゆみこ文 斎藤隆夫画『クモのつな』(こどものとも)

クモのつな〜西アフリカ・シエラレオネの昔話

シエラレオネの昔話を絵本にしました。日照りになってみんなが困っているのに、クモだけは元気です。不思議に思ったノウサギがクモにきいてみると、クモはどこに食べ物があるかを内緒で教えてくれます。ところがノウサギがほかのみんなにも教えてしまったので、さあ大変。ユーモラスなお話です。


ウォン・ディ・ペイ他『ほーら・これでいい!:リベリア民話』さくまゆみこ訳

ほーら、これでいい〜リベリア民話

アフリカの昔話絵本。西アフリカのリベリア北部にくらすダンの人々に昔から伝わる物語。ばらばらに存在していた頭、腕、足、胴体が出会い、合体していく愉快なストーリーを通して、社会の中でもひとりひとりが大事なのだということを子どもたちに教えていたそうです。アートンのアフリカ絵本シリーズ4作目。
(装丁:長友啓典さん+徐仁珠さん 編集:細江幸世さん+佐川祥子さん+米倉ミチルさん)

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<訳者あとがき>

西アフリカにあるリベリアは、解放された奴隷の人たちがつくった国です。つまり、アメリカに連れていかれて奴隷として働かされていた人たちが解放後アフリカにもどって19世紀にリベリアという国をつくったのです。リベリアという名前も「自由の国」という意味です。しかし、1980年代からリベリアでは政治が不安定になり、内戦が始まり、多くの人が亡くなったり、難民になったりしました。またこの内戦は、子どもの兵士が大勢使われたことでも知られています。

今は、民主的選挙で選ばれたアフリカ初の女性大統領エレン・ジョンソン=サーリーフさんが国の立て直しや学校教育に力を注いだ結果、外国に逃げていた難民たちも戻り、平和な日々がふたたび訪れようとしています。ただし内戦で荒れ果てた国土や経済をもとにもどすには、まだまだ時間がかかるようです。

この絵本の文章を書いたウォン=ディ・ペイさんは、リベリア北東部のタビタに暮らす語り部の一家に生まれました。ダンの人々に伝わる物語は、おばあさんから教わったそうですが、それだけでなく太鼓をたたいたり、楽器をつくったり、踊ったり、仮面をつくったり、木彫りをしたり、布を染めたり、壁に絵を描いたりすることなども家族から学びました。

今ペイさんはアメリカに住んで、絵本をつくるだけでなく、主に子どもたちのために楽器を演奏しながらリベリアの昔話を語ったり、リベリアのダンスを教えたり、仮面ダンスの公演を行ったりしています。

物語の中にサクラが出て来ます。サクラというと日本の木というイメージが強いかもしれませんが、リベリアの熱帯雨林には野生のサクラの木がたくさん生えていると、ペイさんが教えてくださいました。野生のサクラだと、サクランボも日本のお店で売っているのよりは小さくてかわいい実なのでしょうね(後で調べてみると、アフリカのチェリーは、日本のとまた少しちがうようです)。

この絵本の絵は、ガーナのファンティの人々の間に伝わる「アサフォの旗」からインスピレーションを得て描かれたといいます。アサフォというのは民兵という意味で、地域を守る組織ですが、それぞれの組織が独特の絵柄をアップリケや刺繍で表現した旗を持っているのです。そのデザインや色がおもしろいので、「アサフォの旗」は、今は美術工芸品としても評価されています。

さくまゆみこ


デミ『1つぶのおこめ:さんすうのむかしばなし』さくまゆみこ訳

1つぶのおこめ〜さんすうのむかしばなし

昔話と数の絵本。王様にお米を取り上げられて困っていた村を、知恵のある女の子ラーニが救います。数の絵本にもなっていて、牛やラクダやゾウが、お米を運んでくる場面がすばらしい! 絵を見ただけで、お米が次々に倍になっていくようすや、大きな数を実感することができます。金色を使ってインドの細密画風に描かれた、デミの絵がユニークです。
(装丁:辻村益朗さん 編集:鈴木真紀さん)

*厚生労働省:社会保障審議会推薦 児童福祉文化財(子どもたちに読んでほしい本)選定


ホフマイア再話 フロブラー絵『ふしぎなボジャビのき』さくまゆみこ訳

ふしぎなボジャビのき〜アフリカのむかしばなし

南アフリカの絵本。アフリカの平原に飢饉が来て、動物たちはみんなおなかをすかせています。おいしそうな実のなる木を見つけたのですが、なんとそこには大きなヘビが巻き付いていて、木の名前をあてないと実を食べさせてくれません。その名前を知っているのは、サバンナの王さまのライオンだけ。そこで動物の代表がライオンのところに出かけ、木の名前を聞いてくるのですが、いつも帰る途中でほかのことを考えたり、転んだりして、名前を忘れてしまいます。そこに登場するのは、小さくても賢いカメです。再話も絵も、南アフリカで生まれ育った人たちです。
(編集:吉崎麻有子さん 装丁・書き文字:森枝雄司さん)

*厚生労働省:社会保障審議会推薦 児童福祉文化財(子どもたちに読んでほしい本)選定

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<紹介記事>

・「女性のひろば」2013年11月号

 

・「朝日小学生新聞」2013年10月5日


スホーの馬〜アジア・アフリカの民話

私がこの本のために選んで再話したのは、つぎの5話です。オムニバスなのでごちゃまぜ感もありますが、まじめに選んでまじめに訳しました。巻末の「アジア・アフリカ民話の舞台」と「さまざまな動物物語」も書いています。

◆「スホーの馬」・・・モンゴル
絵は、梶山俊夫さん。赤羽さんの絵本で有名な、馬頭琴の由来を語るお話です。私は東京外語大のモンゴル語の教授・蓮見治雄先生に原話を見せていただいて再話しました。「スホー」という名前は、蓮見先生は「スヘ」に近い発音だとおっしゃったのですが、それは何となく変だし、かといって赤羽さんの「スーホ」も使えないかなと思って、こうしました。

◆「アナンシのへびたいじ」・・・ガーナ
絵は本信公久さん。アシャンティの人たちの間に伝わるクモのアナンシを主人公にした昔話です。

◆「ジャッカルとらくだ」・・・東アフリカ
絵は、タンザニアのティンガティンガ派の画家デービッド・ムズグノさんです。タンザニアにいる友人経由で特別にたのんで描いてもらいました。

◆「のうさぎのちえ」・・・中央アフリカ
絵は、長野博一さん。アフリカ民話にたくさん登場するトリックスターのノウサギが活躍しています。

◆「どうぶつのおんがえし」・・・インド
絵は、井上洋介さん。古代インドの説話集「パンチャタントラ」に出てくるお話です。

(編集:桑原勝明さん)


モロッコのむかし話〜愛のカフタン

ロンドン大学で教えていたヤン・クナッパートさんをお訪ねしたとき、まだ本になっていないブックレット状態のこの本を見せていただき、翻訳させてもらうことにしました。クナッパートさんは、アフリカ各地の神話・伝説をご自分で収集して、本や事典を出しておられる学者です。

モロッコはイスラム教の国なので、イスラム文化にも触れたおもしろいお話が集めてあります。「丘の上のおばけやしき」「ふしぎなさかな」「愛のカフタン」「ひみつのとびら」「妖精にそだてられたむすめ」「ファディルとハットゥーシャ」「かしこいむすめと砂漠の王さま」「すなおなおよめさん」「アッラーのなさること」が入っています。

(編集:家井雪子さん)

 


さくま編訳『キバラカと魔法の馬』表紙

キバラカと魔法の馬〜アフリカのふしぎばなし

アフリカ各地に伝わる昔話から、不思議なおはなしを自分で選んで訳しました。「恩を忘れたおばあさん」「魔法のぼうしとさいふと杖」「山と川はどうしてできたか」「ヘビのお嫁さん」「力もちイコロ」「動物をこわがらせた赤ん坊」「カワムチと小さなしゃれこうべ」「ワニおばさんの約束」「あかつきの王女の物語」「村をそっくりのみこんだディキシ」「ニシキヘビと猟師」「悪魔をだましたふたご」が入っています。

この本がきっかけで、私は冨山房に入社し編集部で働くようになりました。つまり入って最初に編集したのがこの本だったのです。