タグ: 冒険ファンタジー

『父さんと、母さんと、ぼく』表紙

父さんと、母さんと、ぼく〜ラビントットと空の魚 第五話

『父さんと、母さんと、ぼく〜ラビントットと空の魚』(読み物)をおすすめします。

「ラビントットと空の魚」シリーズの第5話で最終巻。舞台は異世界のトンカーナで、ここでは魚が空を飛び、鳥は地中を泳いでいる。主人公は、耳長族の少年ラビントットという漁師の息子で、自分も漁師になるつもりで修業するのだが、高いところが苦手なラビントットは親方のもとを逃げ出し、明け方だけ低空飛行するイワシをとって生計を立てることにする。

シリーズの第1話から第4話までは『鰹のたんぽぽ釣り』『そなえあればうれしいな』『くれない月のなぞ』『森ぬすっとの村』となっており、ラビントットは、さまざまな事件や、思いがけない出会いを経ながら否応なく冒険の旅を続けることになる。

この第5話では、ラビントットは故郷に帰る途中、イトマキエイに大勢が襲われたと聞き、急いで現場の月見山へ向かう。ラビントットは、騒動の原因となったイトマキエイの子どもを救い出した後、みんなの話を聞くうちに、月見山では昔、耳長族同士が戦った歴史があったことや、自分も生まれつき高所が嫌いだったわけではないこと、母さんの家族と父さんの間には深い溝があったことなど、いろいろなことを知る。自分のルーツや民族の歴史を知ったラビントットは、ちゃんとした漁師になるために自分の道を歩き始める。楽しく読めるファンタジー。

11歳から/異世界 漁師 ファンタジー

 

Dad, Mom, and Me

This is the fif th and final book in the series Rabintotto, the Fisherboy of the Sky. The setting is a parallel world called Tonkana, where fish fly through the sky, birds swim in the earth, and the inhabitants of the surface are not humans, but mysterious people. The main character is a fisherman’s son named Rabintotto, who hails from a long-eared clan and is apprenticing to become a fisherman himself one day. He is afraid of heights, however, and he runs away from his master. He decides to support himself by catching sardines, which move low in the sky only at dawn.

The first four volumes of this series are The Tuna’s Dandelion Fishing, Happy are the Prepared, Riddle of the Red Moon, and A Village of Forest Thieves. Throughout the series, Rabintotto goes through mishaps and surprise encounters on an unending, unchosen journey of adventures.

In this fifth volume, as Rabintotto is journeying toward his home, he hears that many have been threatened by spinetail devil rays, and he hurries to the scene: Tsukimi (Moon Viewing) Mountain. Rabintotto saves the spinetail devil ray child that caused the disturbance, and then he hears that long ago on this mountain, there was a history of long-eared tribes fighting. He also learns that his fear of heights was not innate, and that there has been a great gulf between his mother’s family and his father. Upon visiting his parents’ relatives, he is told that he can stay, but having learned his roots and history, Rabintotto vows to become a proper fisherman after all and sets out on a new journey.

This fantasy is fun to read, with illustrations that aptly convey Rabintotto’s world. (Sakuma)

  • text: Ochi, Noriko | illus. Nishizaka, Hiromi
  • Fukuinkan Shoten
  • 2020
  • 252 pages
  • 20×14
  • ISBN 9784834085600
  • Age 11 +

Parallel world, Fisherman, Fantasy

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2021」より)

Comment

『月の光を飲んだ少女』表紙

月の光を飲んだ少女

『月の光を飲んだ少女』をおすすめします。

魔法を扱いながら、現代にコミットする物語。舞台は中世的な異世界で、そこではシスター長イグナチアが恐怖と悲しみをもって、従順で信じやすい民を支配している。イグナチア配下の長老会は、魔女への生贄として毎年赤ん坊を1人ずつ森の中に捨てさせるのだが、ある年捨てられたルナは、善き魔女ザンに拾われて育ち、やがて恐怖の世界をひっくり返して新たな世界を作り出そうとする。協力するのは、自然の象徴とも思える沼坊主グラーク、竜のフィリアン、ついに出会えた生母、正直でやさしい若者アンテイン、自分の頭で考える勇敢なエサイン。おもしろく読めて、生と死、支配と被支配、魔法と自然の力などについて思いをめぐらせることができる。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年8月31日掲載)

キーワード:魔法、竜、家族、生と死、自然

Comment

エミリー・ロッダ『ローワンと白い魔物』さくまゆみこ訳

ローワンと白い魔物

オーストラリアのファンタジー。ローワン・シリーズの5作目です。リンの谷はいつまでも白い雪にとざされ、おまけに山の上からは白い魔物が這い出てきます。食料がなくなり、村人たちは山をおりて避難する羽目になってしまいました。なんとかして冬を終わらせて春をもたらそうと、またローワンが活躍します。今度はノリス、シャーラン、ジールと一緒の冒険です。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん+佐近忠弘さん)


エミリー・ロッダ『ローワンと伝説の水晶』さくまゆみこ訳

ローワンと伝説の水晶

オーストラリアのファンタジー。『ローワンと魔法の地図』『ローワンと黄金の谷の謎』に続く<リンの谷のローワン>シリーズの第3作目です。不思議な呼び出しを受けたジラーとローワンは、海辺にあるマリスの町まで出かけていきます。ところが、マリスでは〈水晶の司〉の地位をめぐって3種族が争っており、ローワンは思わぬ冒険にひきずりこまれてしまいます。最後のどんでん返しには、うなってしまいました。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)


エミリー・ロッダ『ローワンとゼバックの黒い影』さくまゆみこ訳

ローワンとゼバックの黒い影

オーストラリアのファンタジー。ローワン・シリーズの第4作目。妹のアナドが怪物に誘拐されたため、ローワンはゼバックの地に乗り込んでいきます。そこで出会ったのが、絹に絵を描いてきた家族。そして、300年ものあいだ隠されていたリンの歴史の秘密が明らかになります。異世界ファンタジーですが、著者のロッダさんは、やっぱりこの異世界の成り立ちまでしっかり考えてシリーズを作られていたのですね。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)


エミリー・ロッダ『ローワンと黄金の谷の謎』さくまゆみこ訳

ローワンと黄金の谷の謎

オーストラリアのファンタジー。『ローワンと魔法の地図』に続くローワン・シリーズの第2巻。リンの村が闇に潜む敵の魔手におびやかされ(といってもこの辺が普通の物語とはひと味ちがいます)、弱虫のローワンが、こんどは〈旅の人〉の少女ジールと一緒に空を飛び、またまた思いがけない冒険をすることになります。どきどきワクワクのエンタテイメントですが、ある意味では自然の力の恐ろしさと素晴らしさを描いた作品ともいえると思います。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)


エミリー・ロッダ『ローワンと魔法の地図』さくまゆみこ訳

ローワンと魔法の地図

オーストラリアのバイロンベイに行ったときに何軒かの本屋さんを回って、今子どもが夢中で読んでいる本を教えてもらいました。その中から探し出した本です。本嫌いな子どもでも読書の楽しみを味わえるのではないかと思いました。
ローワンはバクシャーという家畜の世話をする少年。あるとき、村に水が流れてこなくなり、勇者をつのって水源である山に登って原因を確かめることになります。ローワンは勇者とはほど遠い臆病な少年なのですが、魔法の地図が読めるのがなぜかローワン一人だったため一緒に行くことになってしまいます。最後には竜も出て来て冒険とスリルに満ちています。
小学校高学年なら読めるように訳したつもりでしたが、課題図書の対象は中学生でした。全5巻のシリーズもので、どの巻でも弱虫のローワン君は、いつのまにか冒険にまきこまれてしまいます。個人的には、ハリー・ポッターよりこっちのシリーズの方がおもしろいのではないかと思っています。子どもたちから手紙がくるのが何よりうれしい。
(装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん)

*オーストラリア児童図書賞・最優秀賞受賞
*毎日新聞青少年読書感想文全国コンクール課題図書


ミシェル・ペイヴァー『復讐の誓い』さくまゆみこ訳 

復讐の誓い

イギリスのファンタジー。舞台は6000年前の北部ヨーロッパ。は、復讐がテーマです。大切な友人の命を奪ったのが〈魂食らい〉だという事実をつきとめたトラクは、復讐を誓って旅立ちます。そして復讐と、友情(愛)との間で揺れ動き・・・トラクも、レンも、ウルフも成長し(当然のことながら、オオカミのウルフの成長がいちばん早いのですが)、新たな事実が次々に明かされていきます。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川 潤さん)


エミリー・ロッダ『テレビのむこうの謎の国』さくまゆみこ訳

テレビのむこうの謎の国

オーストラリアのファンタジー。私はよくなくし物をするのですが、この本を読むと、そのなくし物がどこへ行ってしまったのかが、よくわかります。バリアの向こうの謎の国にまぎれこんでしまったのです。どこにでもいそうなパトリックという少年のキャラづくりもいいし、ストーリーテラーとしてのロッダさんのうまさも全開!
続編に『謎の国からのSOS』があります。
(絵:杉田比呂美さん 編集:山浦真一さん 装丁:タカハシデザイン室)

*オーストラリア児童図書賞・最優秀賞受賞


ミシェル・ペイヴァー『追放されしもの』さくまゆみこ訳

追放されしもの

イギリスのファンタジー。トラクは〈魂食らい〉に付けられたしるしのせいで、氏族たちから誤解されて追放の身に。寄り添ってくれるのは最初はオオカミのウルフだけ。やがてレンとベイルも駆けつけてきます。トラクは14歳、レンは13歳。そろそろ性別も意識するようになり、恋も芽生えそうです。これまでの謎のいくつかが明らかとなり、物語はますますおもしろくなってきています。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『魂食らい』さくまゆみこ訳

魂食らい

イギリスのファンタジー。季節は冬。雪と氷の世界が広がります。この巻では、ウルフが魂食らいにさらわれてしまいます。自分の危険もかえりみず、とにかくウルフを捜して救い出そうとするトラクと、それを向こう見ずだと思いながらも助けてしまうレン。またまた手に汗握るストーリー展開です。6000年前という時代や人物の心理がきちんと書けているので、子どもばかりでなく大人も物語世界に入り込めます。酒井さん描く裏表紙のシロクマは必見!
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『生霊わたり』さくまゆみこ訳

生霊わたり

イギリスのファンタジー。トラクが暮らす森を得体の知れない病が襲い、トラクはその治療法を捜しに旅立ちます。しかし海辺に出たトラクはアザラシ族の少年たちに捕らえられ、島に連行されてしまいます。魂食らいの意外な正体が暴かれていくこの巻は、海が舞台。レンとウルフも再び活躍します。1巻よりさらにおもしろさを増しています。
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『オオカミ族の少年』さくまゆみこ訳

オオカミ族の少年

イギリスのファンタジー。舞台は今から6000年も前の北の国。主人公の少年トラクは悪霊にとりつかれたクマに父親を殺され、孤児になってしまいます。しかも、そのクマを退治するために精霊の山に行くという使命を負わされます。旅の仲間は、オオカミの子ウルフと、ワタリガラス族の少女レン。ハラハラ、ドキドキの連続です。 あの「ハリー・ポッター」より契約金が高かったという噂の本! 6巻続くシリーズの1作目。
(絵:酒井駒子さん 編集:竹下純子さん、岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)

◆◆◆

<著者からのコメント>

私は文字が読めるようになる以前から、先史時代に惹きつけられていました。10歳になる頃には、弓矢を手にし、一匹のオオカミを友に森で一人で生きていくことを夢見るようになりました。ロンドンに住んでいたので、両親が私に飼わせてくれたのは、オオカミではなく、スパニエル犬でしたが、私は先史時代の人々がしていたことを、できる限り真似してみました。
・・・・・・大人になって、子ども時代の夢は忘れなければと思いました。大学在学中に、少年と子オオカミの話を書いたことがありましたが、あまり良い出来ではなく、放ってありました。
その15年後、南カリフォルニアの山間部を単独で徒歩旅行していたとき、突然、子グマをつれた大きな黒クマに遭遇しました。子グマを連れていることでとても気が立っており、私に出ていけと警告しました。幸いにも私は母グマをなだめることができました。(歌を歌うことで!)その間じゅう、私はおびえきっていましたが、あとになって興奮してきました。自分が時代をさかのぼったような不思議な感覚を体験したからです。
それから何年かして、昔書いたオオカミと少年の話を書きなおすことを考え始めました。クマに出会ったときの感覚を思いおこしたとたん、先史時代への熱い思いがあふれるようによみがえってきたのです。こうして生まれたのが『オオカミ族の少年』です。


エミリー・ロッダ『謎の国からのSOS』さくまゆみこ訳

謎の国からのSOS

オーストラリア児童図書賞・最優秀賞を受賞した『テレビのむこうの謎の国』の続編です。前作では主人公パトリックが、〈謎の国〉(もう一つの世界)の テレビ番組に出演して、みごと「さがしものチャンピオン」になっていました。その賞品として〈謎の国〉とやりとりができるコンピューターをもらったまではよかったのですが、それから1週間すると、二つの世界を隔てるバリアに異常が起き、通信不能になってしまいます。SOSをキャッチしたパトリックは、再び〈謎の国〉へと旅立つのですが、今回は、ひょんなことからパトリックの姉クレアと、弟ダニーも、〈謎の国〉に迷いこんでしまいます。というわけで、パトリックは、バリアの異常の原因を解明するだけではなく、姉と弟を無事に連れ帰ることもやらなくてはいけなくなってしまいます。

相変わらずロッダさんのストーリーテリングにひきこまれ、切羽詰まった展開に、はらはら、どきどきさせられます。

(編集:山浦真一さん 装丁:タカハシデザイン室)

◆◆◆

<紹介記事>

・「産経新聞」2014年2月2日

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

この世界とよく似たもう一つの世界、すなわちパラレルワールド〈謎の国〉のテレビ番組に出演して「さがしものチャンピオン」になったパトリックは、賞品として〈謎の国〉とやりとりができるコンピューターをもらってから1週間がたった。ある日、2つの世界を隔てるバリアに異常が発生して、通信ができなくなった。前作『テレビのむこうの謎の国』(あすなろ書房)の続編となる物語。

 

・「子どもと読書」2014年3・4月号で高橋峰子さんが紹介してくださいました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

たった一人で世界を救わねばならないとしたら、どうする? 前作『テレビのむこうの謎の国』では、〈見つけ人〉として、パラレルワールドであるバリアの向こうの人たちのなくしものを探し出して、念願のコンピュータをゲットし、ハッピーエンドを迎えた主人公パトリック。だが、本作では、「バリアの向こうの世界」の崩壊を止める役割を与えられてしまう。しかもタイムリミットがどんどん迫ってくる。ハラハラする場面の連続だ。

パトリックは頭をフル回転させ、勇気を出し、あきらめることをしない少年へと成長する。そして何より、うっとおしいと思っていた姉弟と力を合わせ、〈見つけ人〉として、心を満たす「すばらしいもの」を見つける。


ミシェル・ペイヴァー『決戦のとき』さくまゆみこ訳

決戦のとき

イギリスのフィクション。とうとうこのシリーズも最終刊になりました。最後まで残っていた最強の「魂食らい」イオストラとの対決はどうなるのか? トラクとレンの恋は? ウルフの子どもたちは? 相変わらず読者をはらはらどきどきさせながら、いろいろなことを考えさせてくれます。読ませる力がある本ですね、やっぱり。この終わり方、私は好きです。
(絵:酒井駒子さん 装丁:桂川 潤さん 編集:岡本稚歩美さん)

*ガーディアン賞受賞


エミリー・ロッダ『ローワンと魔法の地図』さくまゆみこ訳

ローワンと魔法の地図

愁童:これはすごい。発売たちまち4刷! 売れてるんだねー。シンプル・イズ・ベストって感じ。安心して読めた。古典的ファンタジーの定石なんだけど、ゲーム的な要素も入ってる。あとがきを読むと、ジェンダーのこととか、ちょっと難しいことが書いてあるから混乱してしまうけど、強いといわれていた者たちがつぎつぎに脱落して、最後には弱者が使命をやりとげるというのは、おもしろかった。「ハリ・ポタ」やプルマンの理屈っぽい世界に比べると、この作品は、読みながら心の中で遊べる楽しさがある。ファンタジーのよさを再認識したね。

ウンポコ:ぼくも、おもしろかった。すらすら読めて、うれしかったよ。難をあげるなら、登場人物の姿がくっきり浮かんでこないってことくらいかな。ローワン、ストロング・ジョン、アランはOKだけど、その他の人は、男か女かもわかりにくい。ちょっとぼやっとしたところがあった。最初に登場人物の紹介でもついていたら、読書力のないぼくでも、わかったかもしれないけどさ。ちょっと難しいよ。と思っていたら、訳者あとがきに「男女差のない世界を描いている」とあった。ぼくは、そこまでは気づかなかったな。

ねむりねずみ:この本、装丁がいいわよねー。でも、私は基本的に理屈っぽいほうが好きなのかな。ローワンは臆病なんだけど、いい子でしょ。ちゃんと最後までやりとげるし。どこか、悪い子の部分もほしかったと思っちゃうのよね。憎らしくったって、私にはライラのほうが魅力的に見える。ローワンも、もうちょっと悪い子すればいいのに。2巻3巻では、やってくれるのかな? ジェンダーに関しては、ふたごのヴァルとエリスの性別がわからなかったから、気になった。

モモンガ:同感! 私も男か女かわかりにくいと思った。名前も、日本人の名前だったら、性別も、なんとなくわかるけど、ここに出てくるのは、ちょっとわからないものね。日本語は、英語みたいにheとかsheとか出てくるわけじゃないし。実際、双子はヴァルが女でエリスが男なんだけど、エリスのほうが、女の子の名前のような感じもするでしょ。

ねむりねずみ:最後のところ、p211の「ローワンの胸の中にあった古いしこり」って、ちょっとピンとこなかったんだけど……。

オカリナ:父が死んだのは自分のせいだっていう負い目と、母に臆病でひよわだと思われてるってということを言ってるんじゃない?

ねむりねずみ:そっか。あと、p188のローワンがジョンを気づかう場面。ローワンは、旅のはじめのほうでジョンが声をかけてくれたときのことを思い出してるんだけど、私はそこの場面とうまくジョイントしなかった。

モモンガ:謎ときに夢中になっちゃうわよね。ドラクエの世界。謎の詞にあてはめながら、最後まで読める。あの詞のページを、何度もぱらぱらめくったりして。この物語のおもしろさは、弱い子が主人公ってことだと思う。ローワンは弱虫だし、腕じまんの厳選メンバーの中に、ひとりだけ紛れこんだ子どもだけど、子どもならではの動物との交流とか、子どもにしか見つけられないこととか、ローワンだからこそできるっていうことが、ストーリーにうまくいかされてる。この子が最後に残るってことは、はじめからわかっちゃうのはいいんだけど、そこにもうひとつ、インパクトがほしかったな。ローワンは、妙に大人っぽくなっちゃうでしょ。みんなが眠っているところを見て、いとおしく思うところとか、やるのは自分しかいない! って決意したりするところなんか。そうじゃなくて、子どもっぽいままで、大人だったらできないけど、子どもだからこそできたってなったら、子ども読者はもっと喜ぶと思うのよ。

愁童:竜ののどにささったとげをとるところなんて、うまいと思ったけどな。

モモンガ:うーん。でも、いくらバクシャーのとげをとったことがあるにしても、おんなじようにはいかないんじゃない? だって、この絵(p196〜197)見て! すごい迫力! こんな、ものすごい竜のとげを、よくとったわね。

ひるね:けんかの弱い子とか、いじめられっ子って、犬とかウサギとかを愛でたりするでしょ。だからローワンも、痛がっている竜をかわいそうと思ったんじゃない?

ウォンバット:私は、それよりも使命感だと思ったな。ローワンはバクシャーを大切に思っていて、その心の交流には胸が熱くなるものがあるんだけど、その愛するバクシャーや村の人を救えるのは、今や自分しかいないんだ、やらねばっ!! ていう使命感。

ひるね:無意識でも、読者には期待があるのよね。登場する子どもに対して。あんまり優等生なのはイヤとか、やんちゃであってほしいとか、よくある子ども像からはずれると、物語に添っていけないようなところってあると思う。前に手がけた本で、風邪をひいた動物の子が悪夢をみるっていう本があってね。それに対して「子どもは、風邪をひいたくらいで悪夢なんてみません。子どもはもっと強いものです」って書いた書評があってびっくりしたことがあったわ。私は、弱者が主人公というのは、おもしろいと思ったけど。

モモンガ:私も、弱者が主人公というのは、おもしろいと思ったわ。

オカリナ:これは、ファンタジーとしての価値を論じるような作品ではなくて、エンタテイメントの楽しさがウリの本だと思うのよね。物語世界の厚みとかプロットの独自性を期待するんじゃなくて・・・。どこかで見たり聞いたりするようなプロットが使ってあるんだけど、それを組み合わせて、これだけ短くてこれだけおもしろい物語をつくりあげたっていうのが、すごいことじゃない? ファンタジーの名作とは比べられないけど、日本では「ハリー・ポッター」がああいう残念な形で世に出てしまったこともあるし、こういう本にがんばってもらいたい。本が嫌いな子でも楽しく読める要素があると思うの。

ねむりねずみ:ロールプレイニングっぽいよね。これだったら、ゲーム感覚で楽しめて、ふだんあんまり本を読まない人でも、親近感をもてるんじゃないかな。

ウンポコ:逆に、つぎつぎ襲いかかる苦難もクリアするだろうって、わかっちゃうから、大人は、物足りなさを感じたりもするんだがね。でも、子どもはわくわくするだろうね。爽快な感じで。文学へのとっかかりとしてはイイと思うな。

オカリナ:ジェンダーの問題だけど、まず私は、ランが男だと思っちゃったのね。「昔は偉大な戦士だった」というからには、男かな? と。でも、リンの村では「戦士=男」ではないの。ランも、実は老女。職業にしても、男だから女だからということに関係なく、それぞれの適性にあったことを仕事にしている。ふつうのエンターテイメントって、既成の男性像、女性像によりかかってるのが多いでしょ。その点、この作品は新しいと思うのよ。ひと味ちがう。

ひるね:私は、M駅前の児童書に力を入れてる書店でこの本を見て、涙が出るほど感激したのね。この、本づくりのすばらしさに。表紙、別丁の扉、紙の色、書体の選び方……すべてに神経がいきとどいてる。「ハリー・ポッター」とは、なんたる違い!

ウンポコ&モモンガ:感じのいい本だよねー!

愁童:ファンタジーって感じだよな。

モモンガ:表4なんかも、とってもいい雰囲気。佐竹さんの絵がいいのよ。

ウンポコ:このごろ、佐竹さん、大活躍だな。『魔女の宅急便3 キキともうひとりの魔女』(角野栄子著 福音館書店)の絵も、そうだよね。

オカリナ:えっ、3って、もう出たの?

ウンポコ:出たばかりだよ、今月(10月)かな。「魔女の宅急便」は、3作すべて絵描きさんが違うから、(『魔女の宅急便』林明子絵、1985、『魔女の宅急便2 キキと新しい魔法』広野多珂子絵、1993、すべて文は角野栄子、福音館書店)本としては不幸だけど、それぞれイメージは変わってないし、なかなかいいよね。

ひるね:今、大人の本の会社が子どもの本も手がけるようになってきてるでしょ。「ハリー・ポッター」にしても、プルマンにしても。あと、9月に、東京創元社から出版された『肩胛骨は翼のなごり』(デイヴィッド・アーモンド著 山田順子訳)も、原書は児童書でしょ。それはそれで、よいものができあがれば何も問題ないけれど、残念なことに粗悪品も出回ってる。日本の翻訳児童書の装丁って、世界を見回してもとてもレベルが高いと思うの。外国の原作者に日本語版をみせると、いろんな国で翻訳出版されているけど、日本語版がいちばんいいって、みんな言うのよ。本の作り方が、日本ほどすばらしいところはないって。それは、児童書の編集者たちが、長い時間かけてつくりあげてきた文化だと思う。センダックも子ども時代をふりかえって、「本をもらったら、なでて、においをかいで、少しかじってみた」って言ってるけど、やっぱり子どもにとって、本って、特別なものだと思うのね。大人向けの本のノウハウしかない会社が児童書をつくるのは、ちょっと難しいんじゃないかしら。『神秘の短剣』と『ローワン』を比べてみても、違いは明らか。「ライラの冒険シリーズ」も『ローワン』と同じように、大人向けのコーナーと子ども向けコーナーと、両方に並ぶようになるといいのにね。

(2000年10月の「子どもの本で言いたい放題」の記録)