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コーラ・テイラー『ジュリー:不思議な力をもつ少女』さくまゆみこ訳

ジュリー〜不思議な力をもつ少女

 カナダのフィクション。ジュリーには、ほかの人には見えないものが見えています。幼いころは作り話がじょうずだと言われましたが、物心ついてからは普通と違うことが不安で、どうしていいかわからなくなることもあります。でも、まわりに人には、この気持ちはなかなかわかってもらえません。ある日、ジュリーは空を船団がゆっくり進んでくるのを見ました。これはいったい何を意味しているのでしょう? ジュリーは心配でたまらなくなります。
(絵:佐竹美保さん 装丁:岡孝治さん 編集:喜入今日子さん)

*カナダ図書館協会最優秀児童図書賞受賞
*カナダ総督文学賞受賞


ジャクリーン・ウッドソン『ミラクルズボーイズ』さくまゆみこ訳

ミラクルズ ボーイズ

 アメリカのフィクション。ニューヨークのハーレムで、三人の兄弟が生き抜いていく物語です。兄弟の父はアフリカ系アメリカ人で、池で溺れそうになった白人女性を助けて低体温症になり、命を落としてしまいます。兄弟の母はプエルトリコ人で、病気で亡くなります。残された息子たちは、それぞれがトラウマを抱えながら、なんとか三人で生きていこうとします。
(絵:沢田としきさん 装丁:高橋雅之さん 編集:小宮山民人さん、奥田知子さん)

*コレッタ・スコット・キング賞受賞


ディック・キング=スミス『奇跡の子』さくまゆみこ訳

奇跡の子

 イギリスのフィクション。著者のキング=スミスが、自分でいちばん気に入っているという作品です。イングランドの田舎の牧場にある日捨てられていた男の子は、障害を背負っていたものの、馬や鳥やキツネやカワウソたちと心を通わせることができました。この少年が、まわりの人々や動物と交流をしながら生きた軌跡をたどります。宮澤賢治の『虔十公園林』を思わせるような、愉快な作品が多いキング=スミスとしては異色のしみじみとした作品です。
(絵:華鼓さん 装丁:野崎麻理さん 編集:中田雄一さん)


ジャクリーン・ウッドソン『メイゾンともう一度』さくまゆみこ訳

メイゾンともう一度

 アメリカのフィクション。「マディソン通りの少女たち」の第3巻。新しい学校に通い始めたメイゾンとマーガレットですが、メイゾンの前には蒸発した父親が現れます。マーガレットは、不自然なダイエットに苦しんだり、メイゾンとの仲がぎくしゃくするのに悩んだりします。キャロラインという白人の少女や、ボーという黒人の少年とも友だちになって、二人は成長していきます。
(絵:沢田としきさん 装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)


ジャクリーン・ウッドソン『青い丘のメイゾン』さくまゆみこ訳

青い丘のメイゾン

 アメリカのフィクション。「マディソン通りの少女たち」の第2巻。私立の寄宿学校に転校したメイゾンは、白人の少女たちの仲間にも、かといって数少ない黒人の少女たちの仲間にも入れず、孤独な日々を過ごします。作者のウッドソンは、今年コレッタ・スコット・キング賞を受賞しました。感受性の強い少女が生きていくのは、昔も今もそう簡単なことではないようです。
(絵:沢田としきさん 装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)


エリック・キャンベル『ゾウの王パパ・テンボ』さくまゆみこ訳

ゾウの王パパ・テンボ

 イギリスで出たフィクション。舞台は東アフリカのタンザニア。儲けと復讐のために象牙狩りをする男と、パパ・テンボとよばれる大きなゾウの戦い。キャンベルの前作『ライオンと歩いた少年』と同じように、この作品でも人間の子ども(この本では少女アリソン)と野性の獣(この本ではゾウ)が心を通わせあう瞬間が描かれています。スリルとサスペンスがいっぱいの迫力ある物語です。
(挿絵:有明睦五朗さん 編集:米田佳代子さん)


ジャクリーン・ウッドソン『マーガレットとメイゾン』さくまゆみこ訳

マーガレットとメイゾン

アメリカのフィクション。ニューヨークに住むアフリカン・アメリカンの少女の友情物語。『レーナ』の作者ジャクリーン・ウッドソンが自分の子ども時代を思い出して書いたシリーズ〈マディソン通りの少女たち〉の1巻目です。祖母に育てられたメイゾンと、父を亡くしたマーガレットが主役ですが、超能力をもつデルさん、北米先住民のおばあちゃんなど、脇役も魅力的です。
(装丁:鳥井和昌さん 編集:米村知子さん)

SLA夏休みの本(緑陰図書)選定
*JBBY賞・翻訳者賞(シリーズ対象)


グレアム・ソールズベリー『その時ぼくはパールハーバーにいた』さくまゆみこ訳

その時ぼくはパールハーバーにいた

 アメリカのフィクション。真珠湾奇襲のときハワイに暮らしていた日系ハワイ人の少年トミカズとその一家の物語。日米関係が緊迫してくると、移民してきた父親と、日本から呼び寄せた祖父は、収容所に入れられてしまいます。自分はアメリカ人だと思っていたトミカズも、それまで遊んでいた友だちと遊べなくなります。日常生活が一変して、悩みながらも成長していく少年を描いています。
 著者ソールズベリーの父親は、第二次大戦の日本軍との戦いで戦死しているのですが、それでもこういう物語が書けるのですね。表紙絵を描いているのが横山隆一さんのお嬢さんなので、トミカズ少年はどこかフクちゃんに似ています。
(表紙絵:横山ふさ子さん 装丁:森枝雄司さん 編集:米田佳代子さん)

*スコット・オデール賞受賞


コーラ・テイラー『ジュリーの秘密』さくまゆみこ訳

ジュリーの秘密

 カナダのフィクション。『ジュリー〜不思議な力をもつ少女』の続篇で、。凡人は、未来を予見したり、ちょっと不思議な雰囲気の作品です。主人公のジュリーは、だれにも見えないものが見えるという不思議な超能力をもっています。人の心を読めたりすると便利だろうなと思ってしまいますが、そんな超能力を実際に持ってしまうと、不安に駆られるのですね。本書のジュリーは、吹雪に閉じこめられたり、悪漢につかまった兄を助け出すために、超能力を使います。
(絵:佐竹美保さん 装丁:岡孝治さん 編集:喜入今日子さん)


デボラ・エリス『ヘブンショップ』さくまゆみこ訳

ヘブンショップ

 カナダのフィクション。アフガンの子どもたちを描いてきたエリスが、今回はアフリカに出かけて子どもたちを取材し、エイズやエイズ孤児の問題に焦点を当てました。主人公は13歳のマラウイの少女ビンティ。親をエイズで亡くし、親戚に引き取られますが、そこでこき使われたうえに盗みの疑いをかけられて逃げだし、田舎のおばあさんを訪ねていきます。そのうちおばあさんも亡くなり、子どもたちだけで生きていく方法を考えます。あすなろ書房から出した『沈黙のはてに』と同じテーマですが、こちらは小学生高学年から。
(絵:斎藤木綿子さん 編集:今西大さん 装丁:こやまたかこさん)

*ジェーン・アダムズ児童図書賞銀賞


アラン・ストラットン『沈黙のはてに』さくまゆみこ訳

沈黙のはてに

 カナダのYA小説。HIV/エイズがテーマです。舞台は南部アフリカ、主人公は16歳のチャンダ。母親と義父、妹二人、弟と暮らしています。義父がエイズになり、母親は自分もエイズにかかっていることを知り、子どもたちに迷惑をかけまいと一人で田舎に戻ります。「エイズ」という語はタブーで、口にすれば地域で仲間外れになるからです。同じようにエイズで両親を亡くした親友エスターと支え合いながら、チャンダが沈黙のタブーを破り、運命を切りひらいていこうとする物語。
 『ヘブンショップ』(デボラ・エリス著 さくま訳)も、カナダの作品でした。日本の作家だと、わざわざ外国に出かけて取材したうえで作品を書いたりはしないと思いますが、カナダは、多文化理解という点では児童文学も一歩先を行っているように思います。
(イラストレーション:沢田としき 装丁:タカハシデザイン室 編集:山浦真一さん)

*プリンツ賞銀賞受賞


バーナード・アシュリー『リトル・ソルジャー』さくまゆみこ訳

リトル・ソルジャー

 イギリスのフィクション。家族を皆殺しにされて少年兵になったカニンダは、ある日慈善団体に保護されて、いやいやながらアフリカからロンドンへやってきます。でも、カニンダが考えているのは故郷に帰って敵の氏族を殺すことだけです。一方ロンドンでも同じくらいの年齢の子どもたちが「戦争」と称するギャング同士の喧嘩をしていて、カニンダはそれに巻き込まれたり、同じ学校にやってきた敵の氏族の子どもを殺そうとしたりします。アフリカの少年兵を扱ったリアリスティックな物語。
(表紙絵:影山徹さん 装丁:鳥井和昌さん 編集:浦野由美子さん)


マーグリート・ポーランド『カマキリと月:南アフリカの八つのお話』さくまゆみこ訳

カマキリと月〜南アフリカの八つのお話

 南アフリカのフィクション。南アフリカに古くから住んでいる人々の世界観や宇宙観をよりどころにして書かれた、八つの動物ものがたり。主人公の動物たちが、自然の中でいとなむ暮らしや冒険の物語には、私たちを深いところから元気にしてくれる優しい力があふれています。以前単行本で出ていた作品の、文庫での再刊です。
(絵:リー・ヴォイトさん 装丁:辻村益朗+大野隆介さん 編集:松本徹さん)

*パーシー・フィッツパトリック青少年文学賞(南アフリカ)受賞
*産経児童出版文化賞受賞


ジャッキー・フレンチ『ヒットラーのむすめ』さくまゆみこ訳

ヒットラーのむすめ

オーストラリアのフィクション。ある雨の日スクールバスを待っているときに、アンナは「ヒットラーには娘がいて……」というお話を始めます。マークは、アンナの作り話だと思いながらも、だんだんその話に引き込まれ、「もし自分のお父さんがヒットラーみたいに悪い人だったら……」「みんなが正しいと思っていることなのに、自分は間違っていると思ったら……」などと、いろいろと考え始めます。物語としてとてもうまくできています。現代の子どもが、戦争について考えるきっかけになるのではないかと思います。
(装丁:鈴木みのりさん 編集:今西大さん)

オーストラリア児童図書賞・最優秀賞
産経児童出版文化賞JR賞(準大賞)


エミリー・ロッダ『ふしぎの国のレイチェル』さくまゆみこ訳

ふしぎの国のレイチェル

 オーストラリアのファンタジー。「リンの谷のローワン」シリーズでおなじみのロッダさんが書いた、おかしなおかしな物語。風邪をひいて退屈していたレイチェルは、いつのまにかユニコーンに乗って、空にブタが浮かぶふしぎな次元に入り込んでしまいます。おまけに出会ったおばあさんも、おじいさんも、どこかおかしい! ロッダさんのユーモアのセンスが全開になり、謎解きもあって、たのしく読める一冊です。
(絵:杉田比呂美さん 装丁:高橋雅之さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)

*オーストラリア児童図書賞・最優秀賞
*SLA夏休みの本(緑陰図書)選定


ジル・ルイス『ミサゴのくる谷』さくまゆみこ訳

ミサゴのくる谷

イギリスのフィクション。ミサゴというのは猛禽類の仲間で、日本では留鳥のようですが、この本の舞台のスコットランドでは夏に子どもを育て、冬になると西アフリカに飛んでいってしまいます。アメリカの緑の地球図書賞を受賞したこの作品では、そのミサゴが、スコットランドの農場で暮らす少年カラムと、ガンビアの病院で治療を受けていた少女ジェネバを結びます。ほかにも個性的なキャラクターが登場して、読み応えのある作品になっています。作者は、獣医さんから作家になった英国女性です。
(装画:平澤朋子さん 装丁:中嶋香織さん 編集:岡本稚歩美さん)

*緑の地球図書賞(アメリカ)
*厚生労働省:社会保障審議会推薦 児童福祉文化財(子どもたちに読んでほしい本)特別推薦

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<紹介記事>

・「子どもと読書」2013年11・12月号

 

・「朝日新聞」2013年9月28日(子どもの本棚)

 

・「子どもの本棚」2014年3月号