タグ: 自然

『〈死に森〉の白いオオカミ』表紙

〈死に森〉の白いオオカミ

『〈死に森〉の白いオオカミ』(読み物)をおすすめします。

村には、川向こうの森を丸裸にしてはいけない、という言い伝えがあったのに、人口が増えて農地が足りなくなると、男たちは向こう岸にわたり森を焼き払ってしまう。そこは〈死に森〉と呼ばれるようになり、村人たちを襲うオオカミが次々に現れる。リーダーの巨大な白いオオカミは森を守っていた魔物なのか? 子どものエゴルカが一部始終を見届け、村を救う。ロシアの伝承を下敷きにし、不思議な人びとも登場する、土の香りがする物語。自然と人間の関係を描いた象徴的な寓話としても読める。

原作:ロシア/11歳から/オオカミ、伝説、自然

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2021」より)

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『しぜんのかたちせかいのかたち』表紙

しぜんのかたち せかいのかたち〜建築家フランク・ロイド・ライトのお話

『しぜんのかたち せかいのかたち』(NF絵本)をおすすめします。

ライトは、幼年時代に積み木で遊ぶことによって「形」の秘密に気づき、自然の中で過ごすことによって「形」の不思議に魅せられた。そして建築家となって、自然を切り離すのではなく自然に溶け込む建物をつくりだした。後年スキャンダルにも見舞われるが、この絵本では幼年時代・少年時代を描くことによってポジティブな面に光を当て、彼がどのような建築をめざしたかを、味わいの深い絵とともに提示している。作中に描かれた建築物が何かを説明するページもある。

原作:アメリカ/8歳から/建築 自然 形 伝記

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2019」より)

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『なずずこのっぺ?』表紙

なずずこのっぺ?

『なずずこのっぺ?』(絵本)をおすすめします。

春になって地面から顔を出した小さな緑の芽が、ずんずん伸びて、花を咲かせ、しおれ、枯れてなくなる、という四季の移り変わりにあわせて、さまざまな虫たちや自然のドラマが展開していく。絵を細かく見ていくと、季節の変化にしろ虫たちのやりとりにしろ、さまざまな発見があって楽しい。「昆虫語」の言葉は、声に出してみると、不思議なリズムがあってとても愉快。ひとつひとつの言葉の意味を考えてみるのもおもしろいし、絵も美しい。

原作:イギリス/3歳から/昆虫 四季 自然 ふしぎ

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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村中李衣『あららのはたけ』

あららのはたけ

『あららのはたけ』をおすすめします。

山口に引っ越した10 歳のえりと、横浜にとどまっている親友のエミが交換する手紙を通して物語が進行する。

えりは祖父に小さな畑をもらい、イチゴやハーブを育てることにする。そして、踏まれてもたくましく生きる雑草のことや、台風の前だといい加減にしか巣作りをしないクモのことや、桃の木についた毛虫が飛ばした毛に刺されて顔が腫れてしまったことなど、自然との触れ合いで感じたこと、考えたことをエミに書き送る。都会で育った子どもが田舎に行って新鮮な驚きをおぼえたり、感嘆したりしている様子が伝わってくる。

エミは、えりの手紙に触発されて調べたことや、今は自分の部屋に引きこもっている同級生のけんちゃんの消息を、えりに伝える。えりもエミも、幼なじみのけんちゃんのことを気にかけているからだ。

失敗の体験から学ぶことを大事にしているえりの祖父、まわりの空気を読まないで堂々としている転校生のまるも、けんちゃんをいじめたけれど内心は謝りたいと思っているカズキなど、脇役もしっかり描写されている。今の時代に、電話や電子メールではなく、手紙のやりとりによってふたりがつながりを深めていく様子は興味深いし、えりから届いた野菜の箱の中からカエルがぴょんと飛び出したことがきっかけで、けんちゃんに変化が訪れるという終わり方はすがすがしい。坪田譲治文学賞受賞作。

9歳から/畑 手紙 いじめ 自然

 

Garden of Wonder

This story unfolds through the letters exchanged between ten-year-old Eri, who has moved to Yamaguchi, and her friend Emi left behind in Yokohama. Through these letters we learn how Eri’s grandfather has given her a small patch of land where she grows strawberries and herbs. She writes all her thoughts to Emi, like how vigorously all the weeds grow even if you step on them; about a spider that only spins a temporary web when it senses a typhoon is about to hit; how her face swelled up when stung by hairs from caterpillars on the peach tree; and the feeling of being in contact with nature. The reader can appreciate the fresh amazement and wonder that a city-raised child feels upon moving to the countryside.

Emi tells Eri how she has studied about spiders and caterpillars thanks to her letters, and also about their classmate Kenji, who now won’t leave his bedroom. Kenji has been their friend since they were little, and they are both worried about him.

Other people in their lives include Eri’s grandfather, who emphasizes learning from experience and only tells her what to do after she has made a mistake; a new transfer pupil Marumo, who sticks to her own ways without realizing the pressures on her to change; and Kazuki, who bullied Kenji but deep down wants to apologize.

It is interesting to see how in this day and age Eri and Emi deepen their connection not by telephone or email, but by letters, and the story ends on a refreshing note when a frog jumps out of a box of vegetables that Eri sends Kenji, prompting him to step outside and begin to change. This book won the Joji Tsubota Prize. (Sakuma)

  • Muranaka, Rie | Illus. Ishikawa, Eriko
  • Kaiseisha
  • 2019
  • 216 pages
  • 21×16
  • ISBN 9784035309505
  • Age 9 +

Fields, Letters, Bullying, Nature

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2020」より)

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八百板洋子文 斎藤隆夫絵『猫魔ヶ岳の妖怪』

猫魔ヶ岳の妖怪〜福島の伝説

『猫魔ヶ岳の妖怪〜福島の伝説』(絵本)をおすすめします。

この絵本には、福島県各地に伝わる伝説「猫魔ケ岳の妖怪」「天にのぼった若者」「大杉とむすめ」「おいなりさまの田んぼ」の4話が入っている。原発事故前の福島は、自然豊かなとても美しい土地だった。この絵本に収められた伝説からもそうした地域の背景がうかがわれ、人間と動物や自然との結びつき、人間には計り知れない自然の力などが感じられる。再話は、ブルガリアと日本の民話の研究者・翻訳者。絵も、伝説の雰囲気をよく伝えている。

6歳から/伝説 福島

 

The Monster of Nekomagadake

ーLegends from Fukushima

This book contains four legends from Fukushima that have been passed down for generations: The Monster of Nekomagadake, The Youth Who Rose to the Heavens, The Great Cedar and the Young Maiden, and The Foxes’ Rice Paddy. Before the nuclear accident that occurred during the 2011 tsunami, Fukushima was a beautiful land, rich in nature and home to many organic farmers. From these legends, we can imagine that land, feel humankind’s relationship with living creatures and nature, and sense nature’s immeasurable power.

  • Retold: Yaoita, Yoko | Illus. Saito, Takao
  • Fukuinkan Shoten
  • 2017
  • 56 pages
  • ISBN 9784834083279
  • Age 6 +

Legends, Fukushima, Nature’s power

(JBBY「おすすめ!日本の子どもの本2018」より)

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田島征三『つかまえた』表紙

つかまえた

『つかまえた』をおすすめします。

川でやっと大きな魚をつかまえた少年が、しばらくしてその魚が死にかけているのに気づき、今度はその魚を生かそうと奮闘する姿を描いた絵本。少年の心の動きや、少年と魚の命が呼応する様が生き生きと表現されている。

「手の中で ぬるぬる/にぎると ぐりぐり/いのちが あばれる」といった実感を伴う言葉と、ぐいぐい勢いよく描かれた絵とがあいまって、この少年と魚の命の輝きが伝わってくる。昔の子どもが日常の暮らしの中で体験したことを、今の子どもはすぐれた絵本でまず体験してみることも必要なのかもしれない。

生と死や命といったテーマを、抽象的な概念ではなく、子どもにも共感できる具体的なものとして提示しているのがすばらしい。

(産経新聞「産経児童出版文化賞:美術賞講評」2021年5月5日掲載)

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『カモのきょうだいクリとゴマ』表紙

カモのきょうだい クリとゴマ

『カモのきょうだい クリとゴマ』をおすすめします。

わたしが犬の散歩に行く近くの公園には、カモがいます。夏にいるカモは1種類。カルガモです。冬は他のカモもいっぱいいますが、くちばしの先が黄色いのでカルガモは見分けがつきます。春にはポンポン玉くらいの大きさのひなが、母ガモの後について泳いだり、少し大きくなって池の周りの地面をつっついている姿も見ることができます。

この本の主人公は、そのカルガモ。ある日、著者のお子さんが、カルガモの卵を持ち帰りました。激しい雨で水浸しになった巣を母ガモが放棄し、残った卵をカラスがつついているのを見るに見かねて、拾ってきたのです。その6つの卵から無事に孵化したのが、クリとゴマです。著者の家族は、野鳥を育てていいものかと迷いながら、でも一人前のカルガモに育て上げることを目標にして、べたべたせずにクリとゴマに愛情を注いでいきます。

卵からひながかえる様子、2羽が初めてミミズを見た時の驚き、だんだん水になじんでいく様子、雷雨を経験した時の慌てぶり、2羽の性格の差など、細かい観察による描写にはユーモアがあり、読ませる力があります。絵も文も著者がかき、それに著者の家族の手になる写真がついているので、リアリティも半端ではありません。

クリとゴマは、写真を見ても本当にかわいいのですが、この本は、そのかわいさを「売り」にしてはいません。世話が大変なこと、糞がとてつもなく臭いことなどもきちんと描写されているので、読んでいるうちに命とつきあうことのおもしろさ、楽しさ、そして難しさがおのずとわかってくるのがすごいところ。そう、世の中、かわいいだけのものなんてつまらないですもの。

やがてクリとゴマが成長すると、著者は2羽を自然に帰します。しかも簡単には戻ってこられないようなところへ。でも、それで一件落着したわけではなく、まだまだ「親」の苦労は続くのですが。

楽しく読める、優れた科学読み物です。

(「子とともにゆう&ゆう」2013年2月号掲載)

キーワード:鳥(カモ)、ノンフィクション、自然

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『バッタロボットのぼうけん』表紙

バッタロボットのぼうけん

『バッタロボットのぼうけん』をおすすめします。

主人公は犬の子どもたちで、バッタ型のロボットに乗って冒険に出かけるという設定。このロボットが、子どもの持つ知識の範囲内でなるほどと思えるように工夫されているのが楽しい。

ボルネオ、オーストラリア、ニュージーランドの陸地と海と川にすむ虫や動物たちが、生き生きと描かれ、吹き出しの中に簡単な説明も付されている。

ファンタジーの要素も取り入れた知識絵本だが、その土地に生息する動物をリアルに、主人公の犬たちをイラスト風に描くことによって、子どもが混乱しないよう配慮がされている。さらに最後の場面がストーリーに奥行きをもたせ、そこからもう一つの想像がふくらむよう工夫されている。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・美術賞」選評 2019年5月5日掲載)

キーワード:ロボット、自然、絵本、動物

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『なっちゃんのなつ』表紙

なっちゃんのなつ

『なっちゃんのなつ』をおすすめします。

なっちゃんという女の子が、河原や野原を歩いて、クズのつる、ひまわり、アオサギ、セイタカアワダチソウ、サルビア、オシロイバナ、雷雨、ガマの穂、ハンミョウなどの自然の生きものや現象に触れあいながら、夏を感じていく絵本。

夏独特の旺盛なエネルギーを感じさせる要素も多いが、セミの死骸、お盆のお墓参り、お供え流しなど、死や、あの世とのつながりを思わせる要素も入っている。

写実的ではないが、動植物の特徴をよく観察して活かしている絵がいい。会えなかった友だちと最後に会って一緒に遊ぶという流れも納得できる。

おもて表紙と裏表紙のつながりにも読者の想像力がふくらむ。

(産経新聞「産経児童出版文化賞・美術賞選評」2020年5月5日掲載)

キーワード:夏、自然、生と死

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『月の光を飲んだ少女』表紙

月の光を飲んだ少女

『月の光を飲んだ少女』をおすすめします。

魔法を扱いながら、現代にコミットする物語。舞台は中世的な異世界で、そこではシスター長イグナチアが恐怖と悲しみをもって、従順で信じやすい民を支配している。イグナチア配下の長老会は、魔女への生贄として毎年赤ん坊を1人ずつ森の中に捨てさせるのだが、ある年捨てられたルナは、善き魔女ザンに拾われて育ち、やがて恐怖の世界をひっくり返して新たな世界を作り出そうとする。協力するのは、自然の象徴とも思える沼坊主グラーク、竜のフィリアン、ついに出会えた生母、正直でやさしい若者アンテイン、自分の頭で考える勇敢なエサイン。おもしろく読めて、生と死、支配と被支配、魔法と自然の力などについて思いをめぐらせることができる。(中学生から)

(朝日新聞「子どもの本棚」2019年8月31日掲載)

キーワード:魔法、竜、家族、生と死、自然

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『ふゆめがっしょうだん』表紙

ふゆめがっしょうだん

『ふゆめがっしょうだん』をおすすめします。

冬の木の芽を、よく見てごらん。だれかの顔に似ているよ。笑っているみたいな顔もあるし、ちょっと怖い顔もあるけど、みんなで歌いながら春を待っているのかな? 自然ってゆかいで不思議。冬の散歩が楽しくなる写真絵本=幼児から

(朝日新聞「子どもの本棚」2018年11月24日掲載)

キーワード:冬、植物(樹木)、自然、ノンフィクション、絵本

 

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タッカー文 パーシコ絵『グレタとよくばりきょじん』(さくまゆみこ訳 フレーベル館)表紙

グレタとよくばりきょじん〜たったひとりで立ちあがった女の子

グレタ・トゥーンベリさんの本はたくさん出ていますが、これはノンフィクションではなく、グレタさんをモデルにした物語絵本です。

森に暮らす少女グレタのところに、困っている動物たちがやって来ました。欲ばり巨人が森の木を切ってしまい、すみかが荒らされているというのです。欲ばり巨人たちは、家を建てたり工場を建てたりと忙しく、森の動物たちが困っていることには気づきません。

そこでグレタは、たったひとりで「やめて!」と書いた札を持って、巨人に見えるように立っていました。でも、巨人たちは通り過ぎていってしまいます。やがてグレタに気づいた男の子が、グレタのとなりに立ってくれました。そのうちに子どもたちがたくさん集まってきて、死にかけた森を救うために、みんなで欲ばり巨人に抗議をします。

巻末には、子どもたちにもできる提案が書いてあります。

物語絵本になっているので、小さな子どもたちにもわかりやすいと思います。
売上げの3%は、環境保護団体のグリーンピース・ジャパンに寄付されることになっています。

(編集:渡辺舞さん)

 

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『野生のロボット』表紙

野生のロボット

しじみ71個分:とてもおもしろく読みました。AI、ロボットの物語ということですが、お母さんの心を持って、ガンの子どもを育てる話を主軸として、最後は島の動物が一致団結してロボットを回収に来た戦闘用ロボットと対決する。ロボットの話というよりは、血のつながらない親子の物語や、文化の異なる移民がコミュニティに受け入れられていく物語など、いろんな読み方ができると思いました。ロボットがふわふわした梱包につつまれて箱の中にいたものがパカンと出てくる描写など、赤ちゃんが生まれた様子の表現の暗喩とも見え、赤ちゃんみたいな状態から、学習を経て賢く愛にあふれた大人の存在になっていくのも、人間の成長過程をトレースしたようにも読めます。物語の中で、ロボットは当初、インプットされた情報から声色を選んで、自然なしゃべり方になるように努めたことがきちんと書かれていますが、異質なもの同士が共生し、ガンの親として機能する中で、ロボットがあえて生き物らしく行動するという記述は減って、どんどん普通に感情を持った生き物のように自然に行動するように語られます。読んでおもしろいのですが、物語として、だんだん何を言いたいのか、わからなくなってしまいました。

西山:それは例えば、p85の1行目、親鳥を死なせてしまったことをテレビショッピングみたいなしゃべり方で「なあんと、この子だけが生き残りましたあ!」なんて言っているところでしょうか。あそこは、笑いました。ハリネズミの針が刺さってしまったキツネのカットとか、絵も好きでした。先が気になってどんどん読み進めたわけですが、最終的には釈然としない思いが残っています。これは、野生化したロボットの話なのかな? 文明化された野生動物たちの話なのでは? と思うんです。動物たちが火を操るということがどうしてもすとんと来ない。レコたちは、暴力をふるうことがプログラミングされているらしいし、作中唯一の完全な悪役ですが、なんの躊躇もなく破壊する=殺すことに抵抗を感じました。初めのほう(p43)で、「ロズは、プログラムのせいで暴力をふるうことはできない。でも、相手をいらいらさせることならできる」と松ぼっくりをしつこくクマに落とすところが好きだったんですが、そのくらいのゆるい闘いならよかったのに、と思います。ロズがキラリの母親となると、言葉づかいが「わ」「よ」で女言葉を強調しますが、原文でいかにも女性の台詞であるように表現されているのかどうか気になります。

マリンゴ: 非常に興味深い物語で、読めてよかったと思っています。変化が多くて、次はどうなるのかと、ストーリーに引きこまれました。一般的に、ロボットと人間を描くと、人工知能が人間の知能を超えるか、敵対してきたらどうするのか、といったあたりが焦点になりがちですよね。でも、このロボットのように、人間に害をおよぼさない範囲で、自由を求める、ということがあるかもしれません。こういう素朴なロボットに対しても、人間は、「人の命令に背いて自分の意志を持つ危険なやつ」と判断するのでしょうか。そんなことを考えさせてくれる作品でした。それからp141「うちは変わった家族だね。でも、ぼくはけっこう気に入ってる」というフレーズ、アメリカのYAなんかでよくありそうなセリフですけれど、この小説のなかだと新鮮でした。ほんとに変わった家族ですものね。また、ガンのクビナガが目の前で倒れて死んじゃったり、冬の寒さで凍死した森の動物たちも多かったり、と死をためらいなく書いているのがいいな、と思いました。児童書だと、そのあたりを匙加減して、みんななんとか冬を乗り切りましたぁ! とハッピーエンドになりがちなので。ただ、1つだけ気になるのは、ロボットのスペックがどの程度なのかよくわからないということ。たとえばp132 では、見たものを脳で検索して「あれは船」と言っています。でも、p76では見たものを検索できず、「あなたはオポッサム・・・・・・」と名前を知ってから情報を検索しています。何ができて何ができないのか、わかりづらいなと思いました。

リック:AIなのに、母親らしくなっていくのがおもしろいですね。子育てするママが成長していくお話でもあります。ロボットゆえに、いかなる困難も乗り越えるスーパーウーマンなのが痛快だけど、なんでも解決できちゃうのはおもしろみにかけます。ロボットでは対応できない問題点に突き当たるような展開があったら、もっとおもしろかったのではと思いました。

カピバラ:1章1章が短く、次の章を読みたくなるような書き方がしてあり、絵もたくさんあって、この厚さでも読みやすくする工夫がみられます。小学5~6年生から読める本になっているのが、うれしいです。今の子にとってAIは身近な存在になっていますが、人間社会でどう共存していくか、といったよくある設定ではなく、逆にロボットが野生に入っていくというところがユニークですね。作者は、プログラミングされたロボットと、本能によって動く野生動物は似ているといっていますが、おもしろい着眼点です。たくさんの動物たちが登場しますが、名前のつけ方がその動物に合っていておもしろいし、イタチのチョロリとか、アナホリーとか、翻訳も工夫していますね。セリフもうまく訳し分けていると思います。子どもたちにすすめたい物語です。

イバラ:とてもおもしろく読みました。この本の動物たちはお互いに会話したりして擬人化されていますが、ロズも単純に擬人化されたロボットという位置づけでしょうか? それともSF的に未来のロボットとしてここまで人間化が進んだということなのでしょうか? 物語世界の設定としてそのどっちなのかが、よくわかりませんでした。今のところロボットには感情がなくてプログラミングされたことしかできないはずなのですが、このロボットは人間世界に触れていないので人間らしい会話はできないはず。でも、人間世界の人間らしい口調で話します。さっき原書を見せてもらったのですが、原書はフラットな言い方ですね。訳者が、子どもに読みやすいようにということで、こうなさったのでしょうか? いったいどこまでが科学で、どこからがファンタジーなのか、知りたいです。ロズは、『オズの魔法使い』に出て来るブリキの木こりと同じようなファンタジーの産物なのか、それともサイエンスフィクションの住民なのか、興味があります。著者はどのような物語世界を作っているのか、続刊があるとのことなので、期待して待ちたいと思います。

コアラ:ロボットものは好きでよく読んでいましたが、ロボットが野生化するという物語は初めてで、おもしろかったです。絵がいいですね。p176~p177の見開きの絵とか、飛んでいくキラリを見送るp190~p191の絵とか。あと、シカのキャラメルとか、名前がいいですよね。ロズとキラリの親子関係もいい。キラリが、母親がロボットだということを受け入れていくのがいいし、お互いに支えあっているのがいいですね。最後、ロズが島に戻れる見込みは、私はほとんどないと思っていて、ロボットだから初期化されれば終わりですよね。でも、続編があると聞いて、希望が持てました。続編も読んでみたいと思います。

アンヌ:動物たちの描かれ方が、夜明け前の協定とかなんとなく宮沢賢治的な世界を感じたので、SFというよりファンタジーなんだと思いながら読みました。けれども、動物が火を使うのにはびっくりしました。あげくにライフル銃を使って戦ってしまうし、なんだか受け入れがたい設定です。ロボットのほうは自己保存の法則を生かして言葉を習得し、動物社会の中で生き残っていくというストーリーには納得しましたが、なぜ女性で母親という設定なのか疑問を持ちました。でも、あとがきを読むと作者は最初から女性のロボットを書くつもりだったのですね。ガンの渡りの中で島の外の社会を見せ、他のロボットの働く様子を見せるところなど実にうまいと思いましたが、最後にレコが死にかけながらいろいろ忠告するところは、急に仲間意識を持つロボットに変身したようで、矛盾を感じました。すべてのロボットはロズも含めて実に人間的な存在なんだという落ちを予感させます。続巻があるようなので、そこで解き明かされるのかもしれません。

すあま:読みやすかったです。設定については疑問に思わず、楽しく読みました。ロボット版『ロビンソン・クルーソー』かな。知らない島に漂流した人間の話はあるけれど、ロボットだとこうなるのか、とおもしろく読みました。本をあまり読まない子にもすすめられるのではないかと思います。

ハル:読んでいてとっても癒されました。動物たちの様子が生き生きとしていて楽しかったです。お話も書けて、絵も描けて、多才な著者ですね。でも、これは動物たちにとっては無害なロボットだから、この世界に入っていけたんですよね。捕食・被食の関係にある動物たちが、この時間だけは交流できるという「夜明け前の協定」はおもしろかったのですが、後半、魚たちがクマを助けたところで、クマが「ありがとう! もう魚は食べないことにするわ!」って言うんですよ。これはいただけません。野生の動物同士、食う、食われるというのは、胸が痛むことではありますが、生きていくための手段で、憎しみとか、和解とか、仲直りとか、そういう話じゃないんだから、そこは一緒にしちゃいけないんじゃないかと思います。せめて「魚は今日から3日は食べないわ!」とか、そのくらいじゃだめですかね(笑)。ラストで急に殺伐とした戦いが始まってしまったのも、ちょっと残念でした。私は、ロボットが女性という発想がなかったので、他の方もおっしゃっていましたが、ロズがキラリのお母さんになったとたんに、急に女性的な話し方に変わったように思い、母親役だからって女性にならなくてもいいのに、と違和感を覚えたのですが、あとがきによると、著者は最初からロボットに女性的なものを感じていたのですね。母親になったからと話し言葉を変えたわけではなさそうですが、私は気になりました。

鏡文字:厚い本だったので、時間がかかると思ったら、絵もとても多く、以外と文字数もなかったので、すぐに読むことができました。絵がいいですね。

イバラ:著者は絵と文の両方で表現したかったんでしょうね。日本語版のレイアウトがきっと大変だったと思います。

鏡文字:野生と対極にあるロボットという取り合わせがおもしろかったです。「~んだ」という語尾がちょっと気になって、それで、よけいにだれかに語っているという印象を与えます。だれが、だれに向かって語っているのかと、ちょっと思ってしまいました。それから、無人島でインターネットに接続できるのかな、とかエネルギーは? なんて言うのは野暮というものでしょうか。

イバラ:きっとソーラー・エネルギーを使ってるんじゃないですか。

鏡文字:ソーラーかな、とは思いましたが・・・・・・。動物が火を使うことへの抵抗、という話が出ましたが、そもそもここの動物って、どういう存在なんでしょうか。

イバラ:野生の環境、野生のロボットと言ってるのに、擬人化されている。

鏡文字:それぞれの動物同士は、会話が可能。でもロボットは学習が必要で・・・・・・と考えだすとちょっとわからなくなってくるのですが、まあ、あんまりこだわらずに、物語を楽しめばいいのかもしれません。イワヤマが、突如、温暖化の影響について言及するところが、やや唐突で、「語ってる」感があったのですが、これは作者の文明批評なのでしょう。ラストは思いがけない展開で、ちょっとびっくりしました。

しじみ71個分:そもそもの設定で気になってしまうのが、工場で似たようなロボットがたくさん製造されているのであれば、そんな量産型のロボットを回収する必要はないんじゃないか、と思います。そこに矛盾を感じてしまう。

さららん:字の組み方、改行が読みやすく、文字の見せ方も工夫していますね。たとえばp279「どさっと/ロズのわきに/たおれた」と、ワンフレーズずつ改行してあって、レコ(敵のロボット)がガクリと倒れていく時間を感じました。全体に絵と文のレイアウトのバランスが見事です。小さな事件が次々に起こり、お話の展開が早い。絵も多く、子どもは早い展開が大好きなので、小学生の読者もどんどん読める作品になっていると思います。ただ、ロズと動物たちが暮らす島が、一種のパラダイスなのかと思ったら、終わりのほうで雲行きが変わり、ディストピアのようにも思えてきました。オープンエンディングであるものの、レコたちの追跡が執拗だったので、人間から絶対に逃れられないロボットの宿命をロズが変えることができるようには思えず、疑問が残りました。人間の世界で必要な修理をしてもらい、ロズが島に帰る方法を見つけたとしても、待っているのは、「正義」のために敵を葬り去ることのできる動物たちです。作者にとって「野生」とはなんなのか? 論理の矛盾をどう解決するのか、続編に期待しています。

まめじか:『トラさん、あばれる』(青山南/訳 光村教育図書)の絵本で有名なピーター・ブラウンが児童書を書いたというので、アメリカでたいへん注目を集めていた本で、私は出版後、わりとすぐに読みました。移民も、血のつながらない家族も、いまアメリカの児童書界が手渡そうとしているテーマなので、広く受け入れられたのも納得です。絵と文がよく合っていて、物語の運びに勢いがありますね。ビーバーが義足を作ってくれる場面ではじんとなりました。少し気になったのは、ロズが小屋を作り、動物たちを迎えるところです。異常気象で例年になく寒い冬だったとしても、厳しい自然の中で生きる動物の生き死にを、人工的なもので変えてしまっていいのか。ファンタジーだからそれでいいのかもしれませんが、だとしても、その世界の中でのルールは必要ですよね。あるいは、そういうことは気にせずに楽しいお話として読めばいいのか。どうなのでしょう。

アンヌ:自分の足を直せないところとか、変ですよね。木で直してもらうなんて。ある程度の修理能力を持っていないなんて、おかしい。

鏡文字:木で足を直すのは、私はおもしろかったです。絵的にもいいな、と。ただ、ほかのロボットの部品を使えないのかな、とちょっと思いました。

しじみ71個分:ロボットが動物の言葉を理解するまでは設定として認め得るとしても、動物同士は異なる言語を話すはずなので、意思疎通できないはずじゃないかと思うのですが、その辺はさらりと流してある感じがします。

カピバラ:楽しい動物物語として読めばいいんじゃないかな。

イバラ:それだったら、なにもロボットにする必要はないと思うんだけど。

しじみ71個分:そうなんです。まさに思ったところはそれで、タフな血のつながらないお母さんの話でもまったくよくて、あえてロボットである必要性がなくなっていると思うんです。ロボットでなければならない必然性が物語にない。なので、ロボットがただ素材にしかなってないように感じられました。

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エーデルワイス(メール参加):同じ作者なので、絵と文がよく合っていた。主人公のロボットは、ジブリ映画「天空のラピュタ」に出てくる巨人ロボットのイメージかなと思いました。ばりばりのAIの話かと思って読み始めたら、ばりばりの生身の物語でした。自然素材の足をつけるなんて、ね。

(2019年11月の「子どもの本で言いたい放題」)

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村中李衣『あららのはたけ』

あららのはたけ

アンヌ:手紙形式の物語というのが、懐かしい感じがしました。のどかな田舎生活の話があって、そこに謎のけんちゃんが姿を現わしてくる。その一種緊張する展開があって、そこはとてもうまいと思うのですが、いじめと引きこもりの話だと分かってからは、加害者のカズキにも寄り添う感じになっていくのが釈然としませんでした。最後もはっきり解決するわけはないままで置いておかれた気がします。挿絵は独特の味があって、最近毛虫にやられた家族がいるので、p28の絵などはむずむずするほどリアリティがあって楽しい絵でした。

すあま:手紙の形式で書かれていて、話が進んでいくのはおもしろかったです。でも、けんちゃんについての話が隠れていて、想像しながら読み進めなければならないので、本を読みなれている子じゃないと難しいのではないかと思いました。今の話と回想で過去の話がまざっているのも難しいかも。ラストは、解決に向かう明るい感じかもしれないけど、これで終わり?という感じでした。どうしてもけんちゃんのことが気になって、楽しく読めなかったところがあります。

彬夜:私はこの終わり方は良いと思いました。物語全体に流れるゆったり感が魅力でした。ただ、ある種の約束されたいいお話に誘導されているような思えて、そういうところは読んでいてちょっとつらかったです。畑ものというと最上一平さんの『七海と大地のちいさなはたけ』シリーズ(ポプラ社)が浮かびます。細部は忘れましたが、あちらは都市の市民農園での畑作りで、土とのふれあいが丁寧に描かれていたような記憶があります。この作品は、手紙形式で書かれているせいか、薄い紙を1枚挟んだ状態で見せられているような感なきにしもあらずで、感覚的な思いが今一つストレートに伝わらなかった気がします。知識としては、雑草のこととか台風のこととか、クモの巣のこととか、とてもおもしろいことがたくさん書いてあるのですが、何となく、教えてもらってるような感じというのか。それから、お母さんの描き方が少し気の毒で。ある種の敵役を担わされているような役割感を抱いてしまったのです。2人の少女のうち、エミの、あんた、という呼びかけがちょっと乱暴な気がしました。意図的に使っているのかもしれませんが、この子の物言いが、少し偉そうというのか、えりに対しても、プールでのトラブル(p37)とか、大風で泣き出したこととか(p83)、あまりいい思い出とは思えないことをなぜ語るかなあ、と。まあ、2人の信頼関係の上でのことといえばそれまでですが。エミとけんちゃんのシーンはおもしろかったし、けんちゃんが少しずつ変化していくのもよかったです。まるもさんは、いいキャラだなと思いました。

まめじか:植物は、手をかければうまく育つかというと、そうじゃない。やってみると、自分の力ではどうしようもないことがあるのがわかってくる。だから、若いときに何かを育てる体験をするのって、大切なんじゃないかな。そんなことを思いながら読みました。石川さんの絵がいいですねぇ。のびやかで、あたたかみがあって、出てくるとほっとする。

西山:おもしろく読みました。植物や小動物がいろいろ教えてくれるというのは、ともすれば教訓的な、べたっとした話になりかねないと思います。人間とは関係ない生きものたちの営みを人事のあれこれに引きつけて、生き方を学んでしまったり・・・・・・。でも、そっちに行かないように、ぱっと相対化したり、別のエピソードを出してきたりして、絶妙だと思いました。例えば、クモが風が強く吹きそうな日には大ざっぱな巣をはるという発見はそれ自体ものすごくおもしろくて、「なにがあっても、まじめにせっせせっせとはたらくんじゃないんだと思ったら、なんかホッとしちゃった」(p79)というえりの感想にも共感するのですが、次の手紙でエミが「クモは風のとおり道をつくったんじゃないか」と書いてよこす。絶妙な、それこそ風通しの良さだと感心します。えりがじいちゃんに「ザッソウダマシイっていうやつ。ふまれてもふまれてもたちあがるっていいたいんでしょ?」と言うと、じいちゃんは「もういっぺんふまれたら、しばらくはじいっと様子見をして、ここはどうもだめじゃと思うたら、それからじわあっとじわあっと根をのばして、別の場所に生えかわるんじゃ」という。こういう、ひっくり返し方が本当におもしろい。教訓話になりそうなところがひょいひょいとかわされていると思ったけれど、暑苦しく感じる人もいるいるということでしょうか? ところで、中身の問題ではありませんが、登場人物の名前が紛らわいのは、なんとかしてほしいと思いました。けんちゃんとカズキも、どっちもカ行だし。えりとエミだなんて・・・・・・。

彬夜:おもしろい情報を提供するのは、おじいちゃんとエミなんですよね。先ほど、お母さん像についてもふれましたが、そこはかとない序列を感じてしまいました。手紙形式なのでどうしても情報が限定的になります。この形式でなければ、もっと人物も多角的に語れるから、今のキャラでもそれなり腑に落ちるのかもしれません。むろん、こうした手法の物語があっていいとは思います。

マリンゴ:植物の蘊蓄をこんなに魅力的語る方法があったか、と、この物語を読んで感銘を受けました。さあ畑を作ります!という物語だと、読者を選ぶだろうけれど、手紙のやり取りの中に少しずつ出てくると、興味深く思えます。たとえば、p50に出てくる小松菜のエピソード。葉っぱの話を自分自身のことに、ナチュラルに結び付けているのが印象的でした。2年前のフキノトウみそを古くなったから捨ててしまったお母さんが怒られる、というエピソードがp108にありましたけど、私も捨ててしまいそう(笑)。親近感を覚えながらも、フキノトウみそをいつか作ってみたいかも、と思わせてくれる作品でした。自然を、今までより1歩近寄って見る、そのきっかけをくれる作品とも言えるかなと。あと、まるもさんの存在がいいですね。2人の少女は近いところでわかりあっているけれど、まるもさんというわかりあえないキャラクターが入ってきて、去っていく、そのバランスがいいなと思いました。

ハリネズミ:とても楽しく、おもしろく読みました。畑をめぐる生きものの生命力みたいなことを、言葉で出すのではなく、実際にものが育っていくとか、クモが巣をつくるとかいうようなことを出して来て語っているのが、説教臭くなくてすごくいいな、と思ったんです。いじめの問題ですが、けんちゃんの名前は早くから出て来ますが、どういう状態なのかはだんだんにわかってくる。そういう出し方もうまいと思いました。引きこもりで長いこと外に出ないという子は周りにもいましたが、けんちゃんは、カエルを介在にして外に出て来る。だから、大きな一歩をすでに踏み出しているんだと思います。まるもさんは、私もいいなと思ったのですが、けんちゃんとのバランスで出て来ているのかもしれないと思いました。空気を読んでしまうと苦しくなるけど、全然空気を読まないまるもさんみたいな有り様もいいんじゃないか、と。絵はとてもいいですね。p48のヒヨドリとかp68のカエルとか、すごくないですか? えりとエミは両方とも作者の分身かもしれませんね。だから似たような名前なのかも。今は子どもでもメールでやりとりすることが多いと思いますが、あえてタイムラグがある手紙でやりとりしているのも、いいな、と思いました。

マリンゴ:手紙を書く楽しさを、前面に押し出すのではなく、最後にふっと感じさせてくれますね。

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エーデルワイス(メール参加):畑のあれこれは、村中李衣さんの体験でしょうか? さりげなくリアリティが伝わってきます。文章と絵がとても合っていて、好感がもてました。p181~p182の「友だちって近くにいていっしょに遊ぶだけじゃないよ。いつまでも心の中にいてくれてだからひとりでもだいじょうぶなんだよ」というところに、作者の言いたいことがあるように思いました。私はふと数年前に亡くなった親友を思いました。

オオバコ(メール参加):とても好きな本でした。街と田舎で離れて暮らすことになった仲良しの手紙のやりとりで物語がつづられていきますが、自分の手で畑仕事をしながら発見していくえりと、本で学んでいくエミの違いもおもしろいし、イチゴや小松菜や毛虫の話をしながら、幼なじみのけんちゃんのことを語っていくところも自然で、本当によく書けていると思います。イラストや章扉(でいいの?)に入っている緑色のページもいい。植物を育てるのや虫が大好きだった小学生のころ読みたかったな。(あまりにも虫に夢中だったので、誕生日にクラスの友だちがマッチ箱にいれたオケラをくれました)

(2019年10月の「子どもの本で言いたい放題」)

 

 

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ガルブレイス文 ハルバリン絵『わたしたちのたねまき』

わたしたちのたねまき〜たねをめぐるいのちたちのおはなし

『わたしたちのたねまき〜たねをめぐるいのちたちのおはなし』をおすすめします。

春になったら芽を出す種。その種をまくのが人間だけじゃないって、知ってた? 風も小鳥も太陽も雨も川もウサギもキツネもリスも種まきをしてるんだって。どうやって? この絵本を見ると、わかってくるよ。見返しに様々な種の絵が描いてあるのも、おもしろいね。[小学校中学年から]

(朝日新聞「子どもの本棚」2017年12月23日掲載 *テーマ「冬休みの本」)


人間は植物を育てようとして畑や庭に種をまくが、人間以外にも種をまいているものがいる。それは、風、小鳥、太陽、雨、川。そしてウサギやキツネやリスなどの動物たちも。でも、いったいどうやって? それがわかってくるのがこの絵本。見ているうちに、自然の中に存在するものは、みんなお互いに利用し合い、助け合いながら、命をつないでいることもわかってくる。絵が親しみやすく、訳もリズミカル。見返しに描いてあるさまざまな種子の絵もおもしろい。

原作:アメリカ/6歳から/種、自然、動物、命のつながり

(JBBY「おすすめ!世界の子どもの本 2018」より)

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ちきゅうのえほん『森林』さくまゆみこ訳

森林

環境について考えるイギリスのノンフィクション絵本。著者は動物園や大英博物館に勤務したあと、BBCで科学番組の制作をしていた人です。森林の構造、木のいのち、木はどんなふうに役立っているのか、破壊される熱帯林、森林を破壊するとどうなるのか、森林を守るためにはどうすればいいのか、私たちにできること、などを伝えています。


ローレンス・アンホルト『わすれられたもり』さくまゆみこ訳

わすれられたもり

昔は国じゅうに広がっていた森は、だんだんに小さくなり、まわりは都会になっていきます。忘れられた森で遊ぶのは子どもだけ。ある日、そこで工事が始まることになって、子どもたちはびっくり。このままでは森がなくなってしまう、と思ったとき、自然を大事にする心を取り戻した人たちが・・・。
(装丁:森枝雄司さん 編集:筒井彩子さん)


バオバブの木と星の歌〜アフリカの少女の物語

アフリカ南部のナミビアに暮らす先住民サン人(昔はブッシュマンと呼ばれていた)の少女ビーが主人公です。サンの人たちはいつも自然と調和して暮らし、空の星の歌も、木のささやきも、小鳥の歌も聴き取ってきました。
著者のレスリー・ビークは、私も南アフリカのケープタウンでお目にかかり、親しくお話をさせていただきましたが、サンの人たちの文化を伝えるためのサポートをしていて、そのような物語もたくさん書いています。この作品は、カラハリ砂漠を舞台にした、死と愛と再生の物語です。主人公のビーは、一度は苦しい体験にうちのめされて自殺しようとしますが、やがてそれを乗り越えて生きていきます。ほかにも故郷を失った祖父、深い悲しみを抱える母、新しい未来を夢見るクー、貧しい白人の農場主や精神を病むその妻など、さまざまな人間模様を浮かび上がらせています。
サンの人たちの言葉の発音については、京都大学アフリカ地域研究センターの当時の所長田中二郎先生にご教示いただきました。
(編集:松木近司さん)

*産経児童出版文化賞推薦


カマキリと月〜南アフリカの八つのお話(単行本)

南部アフリカの先住民のサンやコーサの人たちの昔話や神話をもとにした動物物語。「小さなカワウソの冒険」「ブアブンの花が散る」「絵かきになったノウサギ」「ジャッカルの春」「ずんぐりイモムシの夢」「サボテンどろぼうはだれだ?」「雨の牡牛」が入っています。訳すとき難しかったのは、動物や植物の和名です。南部アフリカ固有の英語から割り出すのに、文章を翻訳してから丸一年くらいかかりました。最後は著者に特徴やわかるものはラテン名も教えていただきました。当時は電子メールがなかったので、お手紙でやりとりしていました。画像検索も当時はできなかったので、著者に写真を送っていただきました。後書きでポーランドさんは、こう述べています。「この本にのっているお話は、楽しんでもらうことを第一の目的として書きました。けれどもこの本は、サンやコーサなど〈古い人たち〉への賛辞でもあります。かれらの知恵や世界観は、はかりしれないほどわたしをゆたかにしてくれました。かれらのつたえてきたものの中にある、よろこびや魔法のいくつかを、読んでくださるかたたちと分かちあうことができれば幸いです」。2004年には福音館文庫の1冊としてよみがえりました。
(編集:松本徹さん 装丁:加藤光太郎さん 巻末の動物の絵:木村しゅうじさん)

*産経児童出版文化賞


ディック・キング=スミス『奇跡の子』さくまゆみこ訳

奇跡の子

イギリスのフィクション。著者のキング=スミスが、自分でいちばん気に入っているという作品です。イングランドの田舎の牧場にある日捨てられていた男の子は、障碍を背負っていたものの、馬や鳥やキツネやカワウソたちと心を通わせることができました。この少年が、まわりの人々や動物と交流をしながら生きた軌跡をたどります。宮澤賢治の『虔十公園林』を思わせるような、愉快な作品が多いキング=スミスとしては異色のしみじみとした作品です。
(絵:華鼓さん 装丁:野崎麻理さん 編集:中田雄一さん)


エミリー・ロッダ『ローワンと黄金の谷の謎』さくまゆみこ訳

ローワンと黄金の谷の謎

オーストラリアのファンタジー。『ローワンと魔法の地図』に続くローワン・シリーズの第2巻。リンの村が闇に潜む敵の魔手におびやかされ(といってもこの辺が普通の物語とはひと味ちがいます)、弱虫のローワンが、こんどは〈旅の人〉の少女ジールと一緒に空を飛び、またまた思いがけない冒険をすることになります。どきどきワクワクのエンタテイメントですが、ある意味では自然の力の恐ろしさと素晴らしさを描いた作品ともいえると思います。
(絵:佐竹美保さん 装丁:丸尾靖子さん 編集:山浦真一さん、佐近忠弘さん)


ミシェル・ペイヴァー『魂食らい』さくまゆみこ訳

魂食らい

イギリスのファンタジー。季節は冬。雪と氷の世界が広がります。この巻では、ウルフが魂食らいにさらわれてしまいます。自分の危険もかえりみず、とにかくウルフを捜して救い出そうとするトラクと、それを向こう見ずだと思いながらも助けてしまうレン。またまた手に汗握るストーリー展開です。6000年前という時代や人物の心理がきちんと書けているので、子どもばかりでなく大人も物語世界に入り込めます。酒井さん描く裏表紙のシロクマは必見!
(絵:酒井駒子さん 編集:岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)


ミシェル・ペイヴァー『オオカミ族の少年』さくまゆみこ訳

オオカミ族の少年

イギリスのファンタジー。舞台は今から6000年も前の北の国。主人公の少年トラクは悪霊にとりつかれたクマに父親を殺され、孤児になってしまいます。しかも、そのクマを退治するために精霊の山に行くという使命を負わされます。旅の仲間は、オオカミの子ウルフと、ワタリガラス族の少女レン。ハラハラ、ドキドキの連続です。 あの「ハリー・ポッター」より契約金が高かったという噂の本! 6巻続くシリーズの1作目。
(絵:酒井駒子さん 編集:竹下純子さん、岡本稚歩美さん 装丁:桂川潤さん)

◆◆◆

<著者からのコメント>

私は文字が読めるようになる以前から、先史時代に惹きつけられていました。10歳になる頃には、弓矢を手にし、一匹のオオカミを友に森で一人で生きていくことを夢見るようになりました。ロンドンに住んでいたので、両親が私に飼わせてくれたのは、オオカミではなく、スパニエル犬でしたが、私は先史時代の人々がしていたことを、できる限り真似してみました。
・・・・・・大人になって、子ども時代の夢は忘れなければと思いました。大学在学中に、少年と子オオカミの話を書いたことがありましたが、あまり良い出来ではなく、放ってありました。
その15年後、南カリフォルニアの山間部を単独で徒歩旅行していたとき、突然、子グマをつれた大きな黒クマに遭遇しました。子グマを連れていることでとても気が立っており、私に出ていけと警告しました。幸いにも私は母グマをなだめることができました。(歌を歌うことで!)その間じゅう、私はおびえきっていましたが、あとになって興奮してきました。自分が時代をさかのぼったような不思議な感覚を体験したからです。
それから何年かして、昔書いたオオカミと少年の話を書きなおすことを考え始めました。クマに出会ったときの感覚を思いおこしたとたん、先史時代への熱い思いがあふれるようによみがえってきたのです。こうして生まれたのが『オオカミ族の少年』です。